2010年12月10日金曜日

2011年度ISS日本市場向け議決権行使推奨ポリシーの変更に関する意見

先月11月11日を締め切りとして、議決権行使助言会社世界最大手のISS(Institutional Shareholders Services:インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ)が、日本市場向け議決権行使ポリシーの意見を募集していました。以下に私のパブリック・コメントを掲載しておきます。

私の基本的な考え方としては、ISSの議決権行使基準は確かに企業統治の考え方を浸透させるのに一定の成果をあげているものの、日本市場の資本市場としての長期的な低迷傾向という現実の特性を考えると不十分極まりないものであり、今後は批判の対象にもしていかなければいけないと考えていますが、現実問題として特に米国の機関投資家はERISA法による受託者責任の対象となっているので、ISSのサービスを購入しながら議決権行使をしていることを考慮し、今後の運動はISSの日本型ポリシーの問題点を関係者に広く周知させていくことも重要化と考えています。これについては、ぜひともご意見をお待ちしています。

(7)ポリシー改定に関する意見
(a)取締役選任議案についての意見

(あ)委員会設置会社で独立社外取締役が過半数の場合
「ISSは委員会設置会社の取締役選任で、候補者各々の独立性に基づきこれまで賛否の推奨を行ってきましたが、取締役会全体の独立性を個別候補者の推奨に考慮してきませんでした。今回のポリシー改定では、取締役の過半数がISSの独立性基準を満たす場合は、独立していない社外取締役に賛成を推奨することを検討しています」(ISS資料)とある点について、

以上のポリシー変更には、反対する。
委員会設置会社においては、指名、報酬、監査の3委員会の独立性が特に問題になる。基本的に、独立取締役が取締役会で過半数だけでは経営監視機能において十分だとは言えず、3委員会の独立性は極めて重要だと考える。例えば取締役会で独立取締役が過半数だったとしても、指名委員会の過半数が非独立取締役が過半を占めていたらどうだろうか?指名委員会が実質的に取締役の選任の行う権限を有するという実態からすれば、本来であれば3委員会を構成する委員のすべてあるいは少なくとも75%以上でなければ、監視機能が十分に働くとは言えないのである。
取締役の過半数が独立では不十分であり、仮に非独立の社外取締役(特にこの人物が独立役員と会社が指定している場合)がいる場合は、取締役会の75%以上が独立でなければ、取締役会の監視機能を大いに減退させると考える。
また情報開示が不十分であるために、実際は過去に当該会社に対してコンサルティング契約を行っているなどISSの独立性基準に反しているのに、参考書類に開示されていないから、ISSが独立としている事例が存在する。例えばHOYA株式会社の指名委員長である椎名武雄氏(社外取締役)がその一例である。日本企業の情報開示が他の市場と比較して極めて不十分である以上、非独立の社外取締役に対して、委員会設置会社の取締役が参考書類の情報のみで独立とされる役員が過半数だったとしても、賛成とする方針には、問題が大きい。
なお委員会設置会社への移行が、必ずしも株主価値の増加にはつながっていないとする実証研究が存在すること(例えば、神戸大学忽那憲治ゼミ「取締役会の構造が企業のパフォーマンスに影響を与える影響」www.isfj.net/ronbun_backup/2009/e05.pdf
、日本経済新聞2005年8月16日記事、「委員会等設置会社の導入効果」http://eri.netty.ne.jp/honmanote/comp_eco/2005/0830.htm)も考慮に入れるべきである。

(い)親会社や支配株主が存在する会社で独立社外取締役が2名以上いない場合
「ISSは親子上場の子会社に限り、独立社外取締役が2名以上いない場合に経営トップに反対を推奨してきました。今回のポリシー改定では、上場・非上場に関わらず、親会社や支配株主が存在する場合にも、独立社外取締役が2名以上いない場合に経営トップに反対を推奨することを検討しています」(ISS資料)との点について

以上のポリシー変更には、賛成する。
親会社や支配株主が存在する場合には、親会社が上場企業でない場合も、当然ながら少数株主の権利侵害が日本の資本市場ではありふれている。創業者一族が支配株主などのケースはありふれており、情報開示が不十分であるため、参考書類からは、実質的に支配株主がいることがよくわからないこともありふれているのである。日本の資本市場においては、少数株主の権利侵害が最大の問題の一つであり、独立社外取締役が2名以上いない場合は、経営トップに反対を推奨することには、合理性がある。

(b)報酬関連議案に関する意見
(う)「退職慰労金議案の金額開示について、現在ISSは退職慰労金の金額が非開示でも、それだけを理由に反対を推奨しません。今回のポリシー改定では、金額が開示されない場合は原則として反対を推奨することを検討しています」(ISS資料)について

以上のポリシー変更には、賛成する。
諸外国の資本市場では、原則として役員報酬は全額個別開示するべきであり、退職慰労金は後払い的な給与の支払いとしての性格が強いので、本来は株主総会招集通知の参考書類で全額個別に開示するべきであり、金額が開示されていない場合は報酬議案に原則として反対するべきである。また本来は、個別開示が望まれることは言うまでもない。

(え)報酬型ストックオプションの行使条件
現在ISSは報酬型ストックオプションの行使開始時期が退職後であることを求めています。この条件を撤廃し、かわりに行使条件として具体的な業績条件を求めることを検討しています。なお業績条件がない場合は、行使開始まで最低3年間の期間があることを条件として、例外的に賛成することもあわせて検討しています。

以上のポリシー変更には、(部分的に)賛成する。業績条件がない場合に行使価格まで最低3年間の期間があることを条件として、例外的に賛成するのは反対。
基本的には報酬型ストックオプションは、行使価格が業界や市場のインデックスと連動することが望ましいという主張を行っている。本来であれば、行使価格がインデックスに連動するオプション以外は反対推奨するという議案が望ましいといえる。しかしながら、行使価格がインデックスに連動するオプションの利用が日本国内ではあまりないことを考慮した場合、事前的な策として業績条件を求めることには一定の合理性がある。ストックオプションの行使開始時期が退職後である必要性は存在せず、むしろ業績条件が明確化することの利益が優先されると考えられる。行使開始時期が退職後であっても、ただ株価が上昇する資本市場の局面においては、ストックオプション受給者の取締役や経営陣がたなぼた的な利益を享受するにすぎないことがままにあることからすれば、業績条件の明確化の方が利益が大きい。したがって業績条件がない場合には報酬設計に問題があると言わざるを得ず、行使価格まで最低3年間の期間があることを条件として、例外的に賛成するのは正当化できない。

(8)その他ISSに対する意見
(a)株式の持ち合いについて
日本の資本市場の最大の問題の一つは株式の持ち合いであり、株式の持ち合いにより議決権行使が受託者責任とかけ離れたものになるほか、資本効率が悪化という結果を招いている。したがって、株式の持ち合いに関する情報開示をより強化する方向への議決権行使ポリシーの作成を急ぐべきである。

(b)買収防衛策について
日本企業の多くが導入した買収防衛策は日本の資本市場の活性化に障害となっているのが現実であり、ISSが以前検討していた種類の、買収防衛策を導入した会社の取締役会に独立した役員が2名以上いない場合には、トップや指名委員の再任に反対するといった種類の議決権行使ポリシーの作成を急ぐべきである。

(c)中央官庁の官僚出身者に関する独立性基準について
日本においては、メインバンクや監査法人の出身者に独立性を認めない考え方があるのと同じように、中央官庁の官僚出身者は取締役会においても、株主価値を最大化させるというよりも出身官庁の利害を優先させるという行動様式をとることが多い(例えば高橋洋一・須田慎一郎著『偽りの政権交代
財務省に乗っ取られた日本の悲劇』(2010年新潮社)、青木昌彦著、永易浩一訳『日本経済の制度分析
情報・インセンティブ・交渉ゲーム』(1992年筑摩書房)などを参照)。したがって、日本の労働市場と政治経済システムの特殊性を根拠として、原則として中央官庁の出身者には社外取締役としての独立性を認めないポリシーが望ましいと考える。

(d)HOYA株式会社取締役の椎名武雄氏の推奨について
私は2010年のHOYA株式会社に対する株主提案の議案作成者として、15年間取締役を務めて現在指名委員会委員長の椎名武雄氏が過去にコンサルティング報酬を受領している問題を、取締役会の社外取締役の独立性を疑わせる問題として、議案説明の理由としてとりあげた。椎名武雄氏の100%所有する会社を通じてのコンサルティング料受領については、株主総会招集通知と参考書類には開示されていないが、会社側の公開資料である2004年のアニュアルレポート(http://www.hoya.co.jp/japanese/investor/d0h4dj0000000dbq-att/annual2004.pdf)65ページなどに記載があり、委員会設置会社の社外取締役として、非独立として反対称するべき事案であるが、ISS社のMarc
Goldstein氏によれば、参考書類に開示されなければ、過去の事業報告書に開示されなくても、このような推奨になることがあるという。本来は非独立とされるべき取締役候補者が、参考書類にその記載事実がないことを持って、独立とされるのは、むしろ情報開示を限定的にすればよいという態度を促すことになりかねない。参考書類にのみ依拠して独立性の判断をすることは、ISS社自体の推奨内容の信ぴょう性を疑わせるという結果となり、少なくとも株主提案が提出されている場合は、きちんと過去の開示資料に基づいて推奨内容を行うべきである。来年以降の推奨内容にきちんと反映させることを強く望みたい。

2010年9月7日火曜日

株主提案文字数増加議案(HOYA株式会社2010年6月18日定時株主総会第4号議案)の成果と報告

皆様にご報告をしたいと思います。6月の株主提案の第四号議案で求めていた株主提案の説明字数制限の緩和(いわいる「文字数増加議案」)について、以下のような改正が取締役会の承認によりなされたので、お伝えしたいと思います。別に下を見ていただければ分りますが、株式取扱規則の改定により、株主提案の説明分量の制限が事実上撤廃されました。これまでご協力いただいた方々、賛成いただいた個人株主や機関投資家の方々、誠にありがとうございました。今後も報酬個別開示ほか、企業統治の論点については意見表明をしていきます。

6月総会時点(株主提案の説明字数は400字であるとされています)。


現在(株主提案で説明できる字数制限が撤廃されています)。


先日の東洋経済の記事(「HOYA、創業家経営者に問われる“負の影響力”の自覚《新しい経営の形》(1)」2010年8月18日号)にあるように、当社は研究開発体制に問題があり、ここ10年間で新規事業の創出に成果がありません。高密度実装基板、光通信コネクターのいずれも、「終了」の状態です。09年まで丹治宏彰氏が最高技術責任者でありましたが、丹治氏に代わって日産自動車の燃料技術開発担当者として全く実績を有しない萩原太郎氏が技術担当執行役になったことで、さらに問題が悪化している模様です。今後もBalamurali Ambati博士(ユタ大学准教授)をはじめとした30代社外取締役の実現、研究開発体制の整備、萩原太郎氏と鈴木洋氏の退任を重点的に要求していきたいと思います。よみがえれ、日本の資本市場。

追伸:この規則変更を伝えた記事。
HOYA:全役員報酬の個別開示検討、株主意向踏まえて情報開示強化
8月30日(ブルームバーグ):
総会では株主提案議案説明量を4000字に拡大する議案も出されたが否決(賛成率43%)された。この点についてHOYAはすでに8月の取締役会で現行の400字という制限を撤廃、株主の権利を拡大した。HOYAの外国人持ち株比率は3月末で53.6%と1年前に比べて2.3ポイント上昇した。

HOYA、総会で否決の株主提案を採用=取締役会で「規則変更」
9月10日(金)21時17分配信 時事通信

HOYA<7741>が、6月の株主総会で否決された株主提案を取締役会決議で 「規則変更」として採用していたことが10日に明らかになった

2010年7月14日水曜日

SiCの会議で無視されているHOYA株式会社

こんにちは、事情により参議院選挙まで更新を自粛しました。会社による株主提案の反対理由があまりにお粗末だったので、取締役会のレベルのお里が知れてしまったために、投資家が離れているのではないかの心配になります。「秘密投票で投票行動が変わらない」とか言っていたが、従業員株主もいるんだよ。「ストックオプション保有者がヘッジすることは想定し難い」「財産権の問題」など、あまりに浮世離れしていますが、反論の反論は事後的になりますが、今後のために至急掲載していくようにしたいと思います。
なお下記URLは、JSTの主催で京都で開催された、SiC関連の会議(2010年7月5日)です。
当然ながら、HOYA株式会社R&Dグループからは、出席者が誰も出ていません。
http://www.astem.or.jp/kyo-nano/news/forum20100705.htm

株主総会で萩原太郎氏の技術担当の執行役としての適格性についての質問を事前に提出しましたが、まだ回答を得ていません。取締役の説明義務についてどの程度理解しているのか、不明です。
萩原氏の任務が既存の研究開発プロジェクトを整理することならば、萩原氏が材料科学や眼科に関する技術的及び業界に関する知識がないことや、前任の日産自動車の傍流となった燃料電池の開発の担当者として成果を上げていないことを考えると、まさに適任なのかもしれません。

上記URLから一部引用。
■プログラム:
13:30 – 13:35 挨拶
京都環境ナノクラスター 事業総括  市原達朗
13:35 – 13:55 基調講演  「ここまで来たSiCパワーデバイス実用化」
(独)科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ京都 館長  松波弘之 氏
13:55 – 14:40 SiCデバイス
SiC SBD/MOSFET ローム株式会社 センター長  中村 孝 氏
SiC RESURF-JFETの開発 住友電気工業株式会社 開発室次長  並川靖生 氏
SiC インバータ 三菱電機株式会社 主席研究員  中田修平 氏
14:40 – 15:10 SiCウェハ
SiC基板ウェハ 新日本製鐵株式会社 主幹研究員  柘植弘志 氏
SiCエピタキシャルウェハ 昭和電工株式会社 プロジェクトマネージャ 佐藤貴幸 氏
15:10 – 15:20 休 憩
15:20 – 15:50 SiCデバイス応用
自動車応用SiCデバイス 株式会社デンソー 部長  恩田正一 氏
家電応用SiCデバイス パナソニック株式会社 参事  北畠 真 氏
15:50 – 16:20 関連技術・システム
Siパワーデバイス 富士電機システムズ株式会社 部長  藤島直人 氏
太陽光発電用パワーコンディショナ 日新電機株式会社 グループ長  栗尾信広 氏
16:20 – 16:50 技術コメント
京都大学 木本恒暢 教授
京都大学 引原隆士 教授
大阪大学 舟木 剛 教授

なおR&Dセンターは、本日(2010年7月14日)時点で人材採用もストップしています。自主的な萩原太郎氏の報酬個別開示を求めたいと思います。
http://www.hoya.co.jp/japanese/recruit/recruit_career_06_00.html
キャリア採用募集職種一覧
現在、募集はありません。

2010年6月16日水曜日

すでに目標の一部を達成している株主提案。だが丹治宏彰氏の退任では新規事業の問題点は改善されない

株主提案に少しずつとはいえ、関心が高まってきていることは、そもそも株主提案権の立法趣旨である、株主間のコミュニケーションをとる手段という意味を、正しく実現できていると考えています。椎名武雄氏の15年再任の問題、茂木友三郎氏の社外取締役や社外監査役の多数兼任の問題(なお公益法人の役員兼任問題もあり)、天下り官僚である児玉幸治氏の取締役就任の問題とか、旭硝子財団理事や旭化成の取締役との兼任の問題とかが注目されるようになって良かったと思います。そもそも9年を超える取締役には独立性を認めないというのが、ロンドン証券取引所の上場規則にあるので、ある意味でこれがグローバル・スタンダードなのです。新規事業が過去10年の間一回も成功していないことも着目され、話題になっているので、これはすばらしいことです。ちなみに私はこの株主運動に、信託銀行名義の個別株主通知の郵送料80円しか費用を使っていませんが、これでだけを持って丹治宏彰氏(前取締役、現企画担当執行役)を退社に追い込んだことは大きいと思います。

HOYA株式会社の株価は10年間で低落し、長期的に低迷しています。2000年6月末(30日)の株価は9500円(4分割修正後の値で2375円)、今日2010年6月16日の時点の株価は、2130円ぐらいです。このような経営陣に合格点はつけられないと思います。このような株価低迷の原因は、外部の企業買収、R&Dなどの新規事業に全く成果が上がっていないことです。なお会社は、私の要求に応じて丹治宏彰氏(当時最高技術責任者)を2009年6月に取締役から退任させ(なぜか執行役企画担当などとして再任される)、2010年6月付けで執行役からも退任させる人事を発表(「役員異動のお知らせ」2010年5月14日HOYA株式会社)しています。株主の要求に応じて役員を実質的に更迭できたことは、大きいと思います(詳しくは、「私の株主運動により丹治宏彰氏が執行役から退任したならば、それは一つの大きな成果だ。」小生ブログ2010年5月16日)が、これだけでは当社の抱える問題点は改善されないと考えます。

まず最大の問題は、後任の萩原太郎氏が技術担当執行役としては不適格だということです。萩原太郎氏はまず東京大学機械工学の出身であり、材料科学と眼科分野をコアコンピタンスとして持つ当社の技術責任者として相当の教育的バックグラウンドを持っていないといえます。第二に、萩原氏はもともと日産自動車の燃料電池部門の開発責任者でありますが、この分野は電気自動車の開発に経営資源を集中させる経営戦略の傍流となっており、また萩原氏自体が何か顕著な開発に成功した実績を持っているわけでもありません。私が丹治氏について言っていたように、萩原氏についても「過去の人生で一回でも技術開発に成功した実績があるか」といえば、私にはそれがあるといえる根拠を探すことができません。事業部の技術説明会で、技術の中身がまるでわからないから、居眠りしているという証言もあります。

そもそも、日産自動車(前取締役の塙義一氏、あるいは小枝至氏)と当社執行役の人間関係により、社外取締役の出身会社で不必要になった人材を、社外取締役に就任している会社に押し付けるような行為だと疑う余地すらあるわけで、とんでもない人事です。鈴木洋氏が行った投資はペンタックスだけではなく、90年代後半の駐米時代も含め、すべて失敗しているのが実情ですし、丹治宏彰氏も同様です。センスがない人間を指名委員会が指名していること自体が取締役の善管注意義務の観点からも大いに問題なのですが、また萩原太郎氏のような実績のない人間を指名してしまいました。

材料科学ではCardinal Warde博士(MIT)、眼科ではPaul Ashton博士(pSivida社社長兼最高経営責任者)やBalamurali Ambati博士(ユタ大学医学部)などの取締役会での監督を受けながら、新規事業を正しい方向に導いていくことこそが、株主価値を増加させるための、より正しい道だと思います。萩原太郎氏を再び技術担当執行役として選任するのならば、指名委員会メンバーの取締役は、善管注意義務違反です。私はどのような取締役の専任になったとしても、引き続いて萩原太郎氏の技術担当執行役からの退任を求めたいと思います。

2010年5月28日金曜日

鈴木洋氏が最高執行役のままでは研究開発が成功しない理由

鈴木洋氏が最高執行役のままでは、新規事業が成功する可能性はゼロに等しいと思います。これは過去の客観的なパフォーマンスから言えることです。

鈴木氏は北米駐在時代に、全てのベンチャー投資を破産させました。東京に戻ってきてからも、全ての新規事業を失敗させています。9年間技術担当の責任者だった丹治宏彰氏の能力の問題はありますが、鈴木氏が今のままだと、過去の遺産たる事業のキャッシュフローをどんどん食い潰していくと思います。その根拠を以下に述べたいと思います(近日中に加筆予定)。

2010年5月27日木曜日

眼科医薬に進出しないHOYA経営陣への疑問

私は常々疑問に思っているのは、HOYA株式会社の経営方針として、眼科医薬への参入を行わないことです。まさにこのことは、私が経営陣や取締役会の能力に疑問を持たざるを得ないという理由の一つでもあります。ペンタックスの買収資金の1500億円があったならば、おそらく加齢黄班変性症の有望な新薬候補をいくつも買えただろうと思うと、忸怩たる思いがあります。

まず眼科というのは国際的に見てどのような事業分野だと認識されているかというと、市場規模が急成長しており、また眼科医薬に関して低リスク高リターンです。これはどのような意味かと言うと、まず高齢化に伴い先進国では、加齢黄班変性症(AMD)、緑内障、白内障などの疾患になる患者数が急増しています。また糖尿病関連も眼に来ますので、眼科領域です。先進国は人口構成が高齢化しているので、これら分野は経済成長率をはるかに上回るスピードで市場としては成長しています。特に加齢黄班変性症(AMD)については、網膜の血管が繁殖することによって失明となる病気で、色素の弱い白人に多いが、日本でも食生活の欧米化により急増しています。この疾患は、現在のところ抗がん剤の転用による薬が認可されていますが、今のところ疾患の進行を遅くする程度の効き目しかなく、眼科の医療現場ではさらなる新薬が待たれています。市場規模は1兆円を越えるし、年成長率も15%とかの分野です。またほとんどの眼科医薬は、他の疾患の転用薬剤なので、毒性のチェックなどが不必要であり、開発や臨床の失敗のリスクが相対的に低いので、「低リスク高リターン」なのです。

このような背景のもと、眼科分野は世界の製薬会社や医療機器メーカーが参入してくる分野となっています。例えばアメリカにアルコン(Alcon)という会社がありますが、現在の時価総額は眼科専業の会社であるのに4兆円くらいです。もともとスイスのネスレが親会社だったのですが、最近同じくスイスのノバルティスという製薬会社が25%の株式を取得し、さらにネスレから残り50%の株式を買い取る権利を有しています。これは眼科新薬が他の疾患の転用であるという点にから、製薬会社が持つ製品のパイプラインを眼科に応用していくことを狙っているもので、戦略的には極めて合理的だと言えます。また別の眼内レンズメーカーであるAMOという会社は医療機器製薬大手のアボット社に買収されましたが、これも他の医薬を眼科分野にすばやく応用し、眼内レンズと組み合わせてマーケティングするという戦略を具体化したものだと思います。このように世界のライフサイエンスのリーディングカンパニーが参入してくる非常に魅力的な分野になっている、しかもHOYAは国内の眼内レンズの市場ではそれなりの地位を占めているにも関わらず、その経営資源を無駄に放置している状態になっています。

ちなみに取締役候補の一人であるBala Ambati博士は、加齢黄班変性症(AMD)の原因因子の一つに関する基礎研究で世界の第一人者の一人であり、またもう一人の取締役候補であるPaul Ashton博士はこの分野では有名な網膜に移植する薬物伝達デバイスの開発者です。

以上のような状態ですので、優れた眼内レンズをすでに商品として持っているHOYAは、眼科医薬に進出するのに極めて優れた位置にいると言えます(余談ですが6月に退社する元取締役の丹治宏彰氏は、以前この眼内レンズ事業を売却しようとしました。技術担当としても企画担当としても不適格だと言わざるを得ません)。同じ加齢黄班変性症の新薬を開発しても、製薬会社が売るのとHOYAが売るのでは、その効率性も違ってくるはずなのです。このような経営資源を持つ企業は、世界にほかにありません。それにもかかわらず、鈴木洋氏ら経営陣は眼科医薬部門への進出を何ら行おうとしていませんし、ペンタックスのカメラ部門に代表される資本効率の悪い部門に資源と資本を投入し続けています。このような現状を変えなくては、小生は考えている次第です。このような文脈から、Bala Ambati氏の提案も読んでください。当社の持つ経営資源である眼内レンズの開発や販売能力を、眼科分野での新薬の開発(優れた新薬候補の買収を含む)と組み合わせれば、私は北米を中心に5年から7年以内に世界を席巻できると考えています。

2010年5月26日水曜日

社外取締役の独立性のガイドラインの作成の意味

「社外取締役の独立性」ということに日本では大いに誤解があります。というか、企業統治の原則がまだまだ理解されていないのです。例えば教科書レベルの知識で、監査法人の出身者が社外取締役や社外監査役になること、顧問弁護士やメインバンク出身者やコンサルティング契約を結んでいる人物が、社外取締役になることなどは、「独立性」を失わせると考えます。私はHOYA株式会社に対し、北米の上場企業では一般的になっている「会社独自の独立社外取締役の独立性の定義」の作成を指名委員会が行うことを求めることにしました。

一般的に、例えば現在の監査法人の出身者が、報酬を受けながら監査の過ちを指摘することは難しいと思います。一方で、現監査法人(トーマツ)とは別の監査法人出身者の公認会計士が社外取締役に入れば、相互チェックする体制としては、非常に望ましいことになるのです。特に当社の場合は、「買収したペンタックスの業績が急速に悪化して、取締役や執行役の責任問題になった。このままだと自分の責任問題にもなりかねない。売掛金を操作したり、Off-balance sheetで在庫を操作して、業績が回復したことにしよう」とかのインセンティブが強いので、チェックする側としては、要注意です。弁護士についても同じで、一般的に顧問弁護士は、経営陣のイエスマン化し、「弁護士も納得したという大義名分を与えるだけの存在」になり下がることが多いのですが、顧問契約のない弁護士が社外取締役ならば、そういった危険性は大幅に低減されます。

例えば、リスクメトリクス社による、日本企業での社外取締役の独立性の考え方は、以下のように開示されています(この点については、石田猛行氏の商事法務の論文などを参照ください)。
リスクメトリックス グループが採用する「独立性」の原則的な考え方は、その会社と社外取締役との間に、社外取締役として選任されること以外に関係がないことです。日本においては、上記の考え方を形式的な要件として整理した場合、たとえば、下記に該当する場合は独立していないと判断されます。
1. 会社の大株主である組織で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
2. 会社のメインバンクや借入先で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
3. 会社の主要な取引先である組織で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
4. 会社の監査法人において、過去に働いたことがある
5. コンサルティングや顧問契約などの取引関係が現在ある、もしくは過去にあった
6. 親戚が会社で働いている

北米企業が指名委員会を通じて取締役を選出するときには、「社外取締役としての独立性」に重きを置いています。取締役選出の基準に「会社経営から独立したメンバー」の最低割合を定めたり、「独立性」の定義をはっきりと示しています。あと出身会社と社外取締役になる会社との間で取引関係があると、「独立」とはみなされにくくなります。この独立性の独自基準(証券取引所の基準よりも厳格なガイドライン)を作成し、IRを行うことは北米企業では一般的です(以下インターンでリサーチを行っている方の助力を借りました)。

例:ウォルマートのガイドライン(選出基準の第一項目)
1. Director Qualifications
The Board will have a majority of directors who meet the criteria for
independence required by the New York Stock Exchange. The Compensation, Nominating and Governance Committee is responsible for reviewing with the Board, on an annual basis, the requisite skills and characteristics that the Board seeks in Board members as well as the composition of the Board as a whole, including an annual evaluation of whether members qualify as independent under applicable standards. During the course of a year, directors are expected to inform the Board of any material changes in their circumstances or relationships that may impact their designation by the Board as independent.

例:GEのインデペンデントの定義
4. Independence of Directors
A majority of the directors will be independent directors, as independence is determined by the board, based on the guidelines set forth below.
All future non-management directors will be independent. GE seeks to have a minimum of ten independent directors at all times, as independence is determined by the board based on the guidelines set forth below, and it is the board’s goal that at least two-thirds of the directors will be independent. Directors who do not satisfy GE’s independence guidelines also make valuable contributions to the board and to the Company by reason of their experience and wisdom.
For a director to be considered independent, the board must determine that the director does not have any direct or indirect material relationship with GE. The board has established guidelines to assist it in determining director independence, which conform to or are more exacting than the independence requirements in the New York Stock Exchange listing requirements (NYSE rules). In addition to applying these guidelines, the board will consider all relevant facts and circumstances in making an independence determination.
The board will make and publicly disclose its independence determination for each director when the director is first elected to the board and annually thereafter for all nominees for election as directors. If the board determines that a director who satisfies the NYSE rules is independent even though he or she does not satisfy all of GE’s independence guidelines, this determination will be disclosed and explained in the next proxy statement.
In accordance with NYSE rules, independence determinations under the guidelines in section (a) below will be based upon a director’s relationships with GE during the 36 months preceding the determination. Similarly, independence determinations under the guidelines in section (b) below will be based upon the extent of commercial relationships during the three completed fiscal years preceding the determination.
(c) copyright 2010 general electric company governance principles | page 3
a. A director will not be independent if:
i. the director is employed by GE, or an immediate family member is an executive officer of GE;
ii. the director receives any direct compensation from GE, other than director and committee fees and pension or other forms of deferred compensation for prior service (provided such compensation is not contingent in any way on continued service);
iii. an immediate family member receives more than $120,000 per year in direct compensation from GE;
iv. the director is affiliated with or employed by GE’s independent auditor, or an immediate family member is affiliated with or employed by GE’s independent auditor and such immediate family member personally works or worked on GE’s audit; or
v. a GE executive officer is on the compensation committee of the board of directors of a company which employs the GE director or an immediate family member as an executive officer.
b. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director is an executive officer or employee, or if an immediate family member is an executive officer, of another company that does business with GE and the sales by that company to GE or purchases by that company from GE, in any single fiscal year during the evaluation period, are more than the greater of two percent of the annual revenues of that company or $1 million.
c. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director is an executive officer or employee, or an immediate family member is an executive officer, of another company which is indebted to GE, or to which GE is indebted, and the total amount of either company’s indebtedness to the other at the end of the last completed fiscal year is more than two percent of the other company’s total consolidated assets.
d. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director serves as an executive officer, director or trustee of a charitable organization, and GE’s discretionary charitable contributions to the organization are the greater of $200,000 or one percent of that organization’s annual consolidated gross revenues during its last completed fiscal year. (GE’s automatic matching of employee charitable contributions will not be included in the amount of GE’s contributions for this purpose.).

これら独自ガイドラインにより、機関投資家か個人株主かを問わず株主へ対して、「外部からの客観的な監査力」を示すのが、当たり前になっているのです。

2010年5月24日月曜日

機関投資家及び個人投資家の皆様:HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

社外取締役の見解の多様性を確保し、現在の新規事業の取り組み方を是正するため、以下のお願いをしたいと思います。すでに申し上げたように、直近の10年間で新規事業の構築に全く成果がありませんし、この状況に現在の社外取締役が是正しようとした形跡は見られません。これを変えるためには、過半数の社外取締役の交代しかありません。

機関投資家及び個人投資家の皆様
HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

HOYA株式会社株主 山中裕 及び 溝渕彰

 我々は、以下の3人の候補者(椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏の3名、以下3名の候補者と言います)が社外取締役として再任されることは、HOYA株式会社の企業統治、及びその究極的な目的である株主価値向上にはマイナスであると考えるため、平成22年6月18日に予定されているHOYA株式会社の第72期定時株主総会で賛成票を入れないようお願いしたい。なお小枝至氏、河野栄子氏に関しても問題がないとは判断していないが、過半数の社外取締役を交代させることで取締役会構成が本質的に変更されることを考慮し、以上の特に問題のある候補3人に反対票を集中させるため、あえて再任推奨とすることとした。

 確かに形式上では、HOYA株式会社は委員会設置会社を選択し、過半数の社外取締役の選任を定款で義務づけるなど、企業統治の改善の努力をしているかのように見える。しかしながら、まさに社外取締役制度を導入していることがさかんに宣伝されるようになった直近の10年間で株価は凡庸なパフォーマンスしか残しておらず、また直近の5年間では日経平均をアンダー・パフォームする結果となっている。当社の企業価値が大きく向上して優良企業といわれるようになったのは、70年代から80年代にかけて獲得した、ガラス研磨技術を中心とした基幹技術をもとに、フォトマスク、マスクブランクス、ガラス磁気ディスク基板、眼内レンズなどの開発に成功することができたからであり、過去10年から15年の間には、新規事業の経済合理的な形での開発に成功していない(高値掴みの買収で事業数が増えたのは除く)。新規事業の度重なる失敗と現在の事業開発の問題点は別に詳細を述べているが、執行役が「優良案件を掴むための人脈や情報源を保有しておらずそのための努力も全く行っていないこと、投資を行った後は放置したままであり少なくとも四半期おきに投資先の技術開発の動向や代替技術の動向がどうなっているか、買収提案をするべきかどうかなどの精査な分析を一切行っていないこと」などの新規事業の創出による株主価値の増加の障壁となる問題に、社外取締役がなんら関心ないため、経営状況の変更がまったくされない。これを改善する方法は、当社の取締役の過半数を交代させること以外にあり得ない。特に3名の候補者は、①経営者を監督するのに十分な能力や時間がなく、②株主価値を高めるインセンティブに欠け、③経営者の業務執行に賛成する心理的な傾向があると思われるので取締役候補として不適格と考える。以下理由を述べる。

(1)経営者を監督するのに十分な能力や時間がない 
 椎名武雄氏と茂木友三郎氏、児玉幸治氏は、過去または現在において、多くの公益法人、民間企業、政府委員会などで、社外取締役、社外監査役、委員などの兼任を行っている。例えば、椎名武雄氏は、90年代に米工業ガスのエアープロダクト、米電子メーカーのAMPの社外取締役に就任後、商船三井、明治製菓、東京スター銀行などの社外取締役に次々と就任し、2001年の時点で8社もの兼任を行っていた。また茂木友三郎氏は、現在キッコーマンのCEOを兼務しながら、明治安田生命保険と当社の社外取締役、フジ・メディア・ホールディングと東武鉄道の社外監査役、さらに行政刷新会議の議員を兼任し、本年3月の時点で文部科学省と外務省が所管するユネスコ・アジア文化センターや農林水産省所管の食品産業センターなど国から補助金が支出されている法人のポストを含む18にも及ぶ公益法人の理事長などのポストを兼任していることが報道されている。このような兼任数が多い状況では、HOYA株式会社の社外取締役として経営陣を監督するために必要な情報を入手し、分析するのに十分な時間があるとは言えないと考えられる。

(2)株主価値を高めるインセンティブに欠けている。
 児玉幸治氏は、いわゆる天下り・渡り官僚であり、経営の経験もなく企業統治の専門家でもないため、そもそも会社経営を行う能力や経営を監督する能力が本質的に欠けていると考えられる。もし児玉氏がHOYA株式会社の社外取締役としての適格性があるのであれば、「具体的に」どのような役割が期待されているのかを明らかにすべきである。提案者はペンタックスの買収が問題となっていた2007年5月ころに当時のすべての社外取締役に「この買収価格は妥当ではなく、今すぐ買収を中止するべきである」との内容の書簡を送ったが、それらはすべて無視された結果として現在のような状況になっている。また同年6月に児玉幸治氏と面会したところ、「ペンタックスの従業員の過半数がHOYAとの統合に賛成」ということを、取締役として買収に賛成した根拠として述べた。また児玉氏は、財団法人旭硝子財団理事や旭化成の社外取締役を兼任しているが、当社と旭硝子あるいは当社と旭化成の間には事業上の重大な競合関係(フラットパネルのガラス基盤、あるいは眼科製品において)が存在するため、利益相反の関係が自然と疑われると言わざるをえないが、当人はこれら問題に自覚がないようである。

 別法人の理事長を兼任していると、株主ではなく別法人の利益を図る可能性がある。茂木氏の公益法人との兼任の問題はすでに時間の問題で指摘したが、旧通商産業省事務次官の児玉幸治氏は「機械システム振興財団」という公益法人の会長を務めているが、いわいる天下り官僚の上がりポストである。日本社会では、公益法人に、官僚組織がその裁量権による圧力をかけ、民間企業から会費を集めることがあり、児玉氏は経済産業省出身者として、このような会費の徴収に熱心となる可能性がある。HOYAの取締役会は経済産業省からの圧力を受け、取引を承認するかもしれない。また取引のボリュームが小さければ、児玉幸治氏の意向を受けてCEOの判断で会費の支出が行われることもあるだろうが、これら支出の開示はなされていないため、株主には知るところではない。このような場合、児玉氏はHOYAの株主の利益よりも取引先である公益法人の利益を図っていると疑わせるに十分であるし、このような可能性が推測されることだけでも、企業統治上の欠陥があると言わざるを得ない。

 また社外取締役が株主価値を高めるインセンティブを強化するため自社株を保有すべきことは極めて重要であるが、現在の社外取締役は、基本的に自社株を時価ベースで1000万円以下しか保有しておらず、株主価値を高める強い経済的なインセンティブを持っていない(社外取締役の報酬は推定年間1100万円程度)。例えば、取締役の椎名武雄氏は過去15年で推定でも最低1億5000万円の報酬を受け取っているが、1000万円以下の時価総額の同社株しか保有していない。児玉氏の所有する株式数は、前年株主総会の参考資料によると1000株(時価200万円と報酬の五分の一程度)にすぎない。椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏らにとって、株価が上昇することの経済的メリットよりも、現経営陣やほかの取締役とうまくやって、再任を狙うことの方が当人たちの経済的利益に合致していると判断できる。

(3)取締役間の見解の対立を回避し、いわいる「仲良しクラブ」的取締役会を形成し、経営者を無条件に支持する心理的な傾向が高い。
 HOYA株式会社の指名委員会は執行役及び取締役候補者を選定する権限を持つが、一般には指名委員会はCEOの意向に配慮して候補者を選定することが一般的である。例えば塙義一氏の後任に同じ日産自動車の小枝至氏が社外取締役に選任されているが、これはCEOが塙氏に依頼したか、依頼することをCEOが了承することを前提に指名委員会が決定したものと思われる。前任の取締役が出身会社の上司筋であることは、以前の判断に異議を唱えることが難しくなる。そのような候補者だからこそ指名委員会は敢えて選任したと推測できる。外国人や女性、あるいは引退した経営者以外の職業的背景を持った社外取締役候補を(場合によってはサーチ会社等を用いて)探すことを行っていないとみられる。外国人や引退した経営者以外の職業的な背景を持つ社外取締役候補の指名を事実上行っていない事実は、椎名武雄氏や茂木友三郎氏らの現任取締役が取締役会に多様な意見が反映されることに対して、心理的に抵抗していることを示唆する。このような判断は、椎名武雄氏ら当時の指名委員会の構成メンバーに責任があると言える。また現在の社外取締役は、過半数3名が本総会時点で満75歳を越え、他の2人も年齢が60代であるなど老齢化しているため、一部の世代の共通感覚が取締役会を支配することとなる。

 また指名委員会は現任執行役である萩原太郎氏を再度技術担当の執行役候補者にすることを予定している。そもそも荻原太郎氏が前年に日産自動車から当社へ転籍したこと自体も、塙氏による強い推薦があったと思われる。萩原太郎氏は日産自動車で傍流になった燃料電池部門の開発責任者であり、開発に特に成功した実績も確認できる客観的な根拠がない。また当社はガラスを中心とする材料科学メーカーであるため、機械系の教育を受けた荻原氏は適性が疑わしい。日産自動車と当社執行役の人間関係により、社外取締役の出身会社で不必要になった人材を、社外取締役に就任している会社に押し付けるような行為だと疑う余地すらある。

 さらに椎名武雄氏は、株主向けの開示資料によれば、2003年まで社外取締役の報酬とは別に、自身が所有し代表取締役を務めるコンサルティング会社が毎年数100万円のコンサルティング料を受領していた。この事実は社外取締役としての独立性を欠くことを意味する。また椎名氏はHOYA株式会社の社外取締役を15年、茂木氏は9年間の再任期間を経て務めているが、ロンドン証券取引所の証券規則では9年を越える再任期間を持つ取締役は、独立とはみなされない。このように在任期間が長いと一般的に経営陣や他の取締役と個人的な関係を形成することが多い。椎名氏や茂木氏は、最終的には経営陣を支持する心理的な傾向が強くある。実際に通常誰の目から見ても非合理な買収であるペンタックス社の公開買い付けや、新規事業に取り組むにあたる問題について、これらの取締役が意見を述べ、本質的な改善を執行役に要求した事実は、間接的にも全く確認できない。提案者から見れば、株主価値創出の課題は新規事業の失敗という意味で明確であるが、椎名氏らの取締役にとっては、それら課題は問題意識に入っていないと思われる。

 以上の点を考慮し、企業価値の向上への障害となる椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏、3名の取締役候補(推定)について賛成票を入れないことを呼びかけることとしたい。

2010年5月23日日曜日

株主価値が創出されない理由は新規事業のミスマネージメントを10年間続けてきたこと、それを取締役会が放任してきたことの機能不全です

HOYA株式会社の株価動向だけみると、今私がみたデータでは、直近の5年で基本的に日経平均を下回っています。過去の事業開発の貯金が大きく反映された2000年代前半のパフォーマンスを入れて直近の10年で見ても、極めて凡庸な株価パフォーマンスです。優れた企業統治の究極的な目標が、株主に配当増加とキャピタルゲインで報いることだとすれば、現経営陣はその期待を裏切ってきたと結論できると思います。

株主価値破壊の最大の問題は、買収や社内の新規事業への投資の判断が、ここ10年間でたらめであったということです。勿論素人の誰が見ても、ペンタックスの買収は、HOYA株主に多大な損害を与えた失敗です。ただこれだけでなく、直近の10年間で、いわいる新規事業が成功したためしがありません。確かに技術担当の責任者である丹治宏彰氏は去年6月の株主総会で取締役を退任、なぜか執行役には再任されていたものの、今年6月をもって企画担当なる執行役も退任することになりましたが、HOYA株式会社の経営を真摯に考えると、この経営課題を何らかの形で変更しないと、株価が大きく上昇することはあり得ないし、現在の経営体制でもなんら問題点の放置という現状への変更はないと考えています。また詳細は別に述べますが、荻原太郎氏も技術担当の執行役として不適格だと判断しています。

例えば2009年の株主向けアニュアルレポートには、以下のような研究テーマが羅列されていましたが、ここ5年から10年で50億円とか100億円とかの利益を創出すると思われる事業は、ほとんどありません。資料によれば、①ナノインプリント、②3C-SiC、③光通信コネクター、④人工水晶体、⑤スキャニング・ファイバー内視鏡(SFE)、⑥超音波気管支鏡、⑦生体置換型有機無機複合人工骨の開発を行っています。これらの事業が5年後とか10年後に50億とか100億とかの売上なりを創出する事業にならなければ、1000億円の経常利益を創出する会社の潜在的な成長率を底上げすることにはならないはずですが、現状では⑥について情報がなく(ただしこれは既存の内視鏡事業の延長である)、また④⑦以外は、有望でなくほぼ確実にいずれ消えます。④については自社で材料開発を行っていないという決定的な問題がありますが、④と⑦については研究投資として継続することは(ペンタックスが高値掴みであったことを別にして、今となっては)推奨します。なお⑤⑥⑦については、負債を含めて1500億円のコストをかけたペンタックス買収によって得られた事業であるので、どんなに譲って少なくともEBITDA50億円以上に10年でならなければ、投資として成功したとは言えないのです。なお2008年のアニュアルレポートには、「ナノ粒子」なるプロジェクト(有機ELを開発しようとしていたものらしい)が記載されていましたが、2009年のアニュアルレポートではすでに消えています。

一つの分りやすい例として、②3C-SiC(立方晶炭化ケイ素)の開発の問題を記載します。2002年(平成14年)5月発表の、SiC其板の開発、製造子会社のHAST (HOYA Advanced Semiconductor Technology)という会社に関して、2007年(平成19年)での上場を目指すなどと公表され、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とあるが、上場予定の設立5年後の2007年とか、今年6月でいよいよ満8年たっても何の成果もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことから明らかだと思います。

このプロジェクトがスタートした当時は、SiCには、3Cと4Hの方式があり、HOYAは、当初から「3C」の方が基板の大面積化が可能で結果的にコスト競争力がある、との方針から進めてきた経緯があるが、ロームクリー(Cree)等の「4H」勢の躍進やローム自体が「3C」方式を見限ったことにより、世の中は、一気に「4H」に傾いた。基板が大きいことは、逆に結晶成長や不純物(コンタミ等)の影響を受け易いと言う致命的欠点を有している。又、社内的には既に「死に体」となりながら、ゾンビの如く生き延びている研究分野と言われている。半ば「終わった」プロジェクトと言って良い。一説には「父親が始めたPJ(プロジェクト)であるため、止められない」と言う親孝行な噂もあるぐらいであり、想定質問事項として、無計画のまま、ダラダラ投資して来た実態をえぐり出すことが必要がであろう。

<私が株主として行いたい(あるいはCardinal Warde博士が取締役になった時に執行役に説明要求させたい)質問事項>
① ロームやクリーの「4H」方式に対する技術的アドバンテージは何か。
② ロームが既に今年5月に自社SiC基板を用いた「ショットキーバリアダイオード」の量産を開始しているが、HOYAの量産計画と想定製品(ロームと同じ様にダイオードか、他の素子か、例えばMOSFET)の情報を説明せよ。
③ ロームは難しいが、クリー社には「3C」方式の売却は、可能ではないか?
④ ロームは、本田技研工業や日産自動車などと積極的に共同研究を行っているが、HOYAは、何処かの自動車メーカと共同研究を行っているか?例えば、社外取締役を排出している日産自動車との共同研究は、行わないのか?
⑤ 長期に渡り、開発を続けているが、今までの実績を開示いただきたい(費やした研究開発費用と売り上げ・今後の計画と想定顧客等)。2002年時点で5年後に上場とか言っていたプレスリリースは、いったい何なのか?

例えば以上のような問題があっても、鈴木洋氏(最高執行役)や丹治宏彰氏(現企画担当執行役で2010年6月退任予定、取締役は去年6月で退任するもなぜか1年間執行役で社内に留まる)は延々と技術経営のミスマネージメントを続け、そして兼任数の多い社外取締役が過半数からなる取締役会にはそれを是正する意思がまったく見られないため、もし本当に株主価値を真の意味で増加させるような新規事業や研究開発を行わせるためには、取締役の過半を入れ替えるしか方法がないので、今回の株主提案になりました。例えば研究開発を本気で成果あるものにする気があるのならば、指名委員会は、私の推薦するそれぞれの技術分野の専門家であるCardinal Warde博士(電子工学)、Paul Ashton博士(眼科薬物伝達)、Balamurali Ambati博士(眼科医薬、特に加齢黄班変性症の新薬研究)の3人を5月最後の取締役会で次期取締役候補として指名するべきです。以上の例はあくまで一例です。実際に過去9年間のアニュアルレポートを読めば、新規事業で羅列されている研究プロジェクトで、現在の会社のキャッシュフローに貢献している事業は一つもありません。(詳細についてはこの項でなるべく早く加筆しますので、またアクセスしてください)

2010年5月22日土曜日

茂木友三郎氏は社外取締役不適格:兼任数24の人物が行政刷新会議の議員をいまだに務めていることの馬鹿らしさ

茂木友三郎氏の行政刷新会議の議員を務めていることの問題点を手短に述べると、基本的には、公益法人との兼任の問題です。そもそも元通産官僚の児玉幸治氏が天下りの枠でHOYA株式会社の取締役におり、茂木氏はこれを容認しているのであるから、問題だと言わざるをえません。

というか、例えばみんなの党の政策では、「政策投資銀行、商工中金は、経済危機克服後、完全民営化」と公約しているが、児玉幸治氏は以前に通産産業省から商工中金の理事長として天下りしており、いわいる典型的な天下り渡り官僚です。茂木氏は児玉氏の取締役選任も責任を持っているのだから、行政刷新会議の議員に不適切だと言わざるをえません。以下、ご参考にして下さい。良識ある皆さん、そもそも国際的に日本の資本市場や政治がどのように見られるか、冷静に考えましょうね。こんな取締役会を放置しておいたら、日本の恥ですよ。


茂木友三郎氏の行政刷新会議の議員からの退任を求める要望書
「日本の資本市場の機能を考える国民会議」(代表 山中裕)

 民主党の目玉政策である行政刷新会議においては、茂木友三郎氏(キッコーマン会長)が議員についています。われわれは、茂木氏の現在の活動内容から考えるに、茂木氏は行政刷新会議の議員を自主的に退任するべきだと考えています。

 まず茂木友三郎氏は3月の時点で18にも及ぶ公益法人での理事長などのポストの兼任を行っていることが報道されています(例えば時事通信2010年4月2日。以下の事実関係は同報道による)。事業仕分けの対象候補として政府が先に公表した、過去に問題を指摘された50法人とは無関係である一方で、文部科学省と外務省が所管するユネスコ・アジア文化センターや農林水産省所管の食品産業センターなど国から補助金が支出されている法人のポストを兼任していることが明らかにおり、これに対して枝野幸男行政刷新担当相は、4月2日午前の閣議後の会見で、「(仕分け対象の)公益法人の選定に当たって、理事などの固有名詞は見ないで、事業の中身でセレクトしている。問題だとは思っていない」と述べています。しかしながら、茂木氏は以下で述べるように現時点でキッコーマンの最高経営責任者(CEO)を兼務しながら、2社の社外取締役、2社の社外監査役も兼務しており、行政刷新会議の議員も含めると24の兼任があるということになり、一般的な常識から考えて、「そもそも、一つ一つのポストに関する責任を果たすための時間がとれるのか」という当たり前の疑問がありますし、加えてすべてのポストで忠実義務を果たすには、24の役職の相互間に利益相反関係が生じないはずがありません。常識的に考えて、極めて異常なことだと言わざるをえないと考えられます。

 第二に、実際に行政刷新会議の議員として茂木氏の適格性に疑問がある、一つの実例としての前歴があります。茂木友三郎氏は現在HOYA株式会社の取締役を務めていますが、当社の取締役として、通商産業省の元事務次官である児玉幸治氏が付いています。児玉幸治氏は(茂木友三郎氏も同様ですが)、年間10回の出勤で年間推定1000万円の報酬を得ています。茂木氏は児玉氏の取締役就任を容認して承認していますし、行政刷新会議の趣旨と照らし合わせて、言行不一致もはなはだしいと考えられますし、公共性の高いはずの上場企業の取締役会を「仲良しクラブ」化させているのが実態です。茂木氏が役員についてから、当社の株価はほとんど上昇していないことからも、茂木氏が受託者責任を立派に果たしているとは言えないと思います。なおHOYA株主会社の正社員の平均年収は、(週5日朝から夕方までの勤務時間で)650万円程度です。

 第三に、茂木友三郎氏は、HOYA株式会社のペンタックス社の買収に対して、「この買収価格は適正でなく、(HOYA株主会社の株主にとって)利益にならない」という書簡を要望者から受領しながら、経営陣とのなれ合いの関係から会社にとって1500億円もの無駄遣いとなる買収案件に取締役会で異議を唱えませんでした。その結果、当該部門は赤字に転落している他、栃木県の益子工場ではカメラ部門の数百人単位の従業員がリストラの結果として失業し、家族ともども現在も仕事が見つからずに路頭に迷う事態となっている結果になっています。国の無駄使いをなくすための行政刷新会議についている議員が、別の上場企業の取締役会で経営陣の1500億円の無駄使いを放置していること自体が、極めておかしなことだと考えられます。

 第四に、現時点で、茂木友三郎氏は、複数の上場会社の社外取締役や監査役を務めていますが、カルパース(CalPERS)などの国際的な機関投資家の一般的な常識的要望としては、社外取締役の兼任は3社を上限とするべきですし、まして現職のCEOであれば自社以外で2社以上の社外取締役や監査役を務めるのは難しいと考えられます。まして行政刷新会議の議員は、今後の日本の行く末にとって極めて重要な職責を負いますので、これほどの会社の取締役や監査役を務めながら、兼任するというのは、不適切な形態だと思われます。

 第五として、以上のような茂木氏の対応が、メディアの批判的論調の対象になり始めているという点があります。例えば、ジャーナリストの田中幾太郎氏は「『偽りの米国流』で屈折するHOYA『父子鷹』経営」(「ZAITEN」2010年1月号)の記事の中で、茂木氏らが構成する社外取締役会を、「『仲良し老人クラブ』に集う社外取締役という〝藩屏〟」と項を設けて論調し、同社の社外取締役制度について、「『お手盛り』と言われても仕方ない人選だ」と批判し、「社外取締役も納得したという大義名分を与えるための存在」であるとして、「制度そのものがアリバイのためにあると言われてもしようがない」と述べています。また別の経済記者である有森隆氏は、「株主資本主義を体現する米国流経営と、息子への社長ポストの継承には論理矛盾がある」(『創業家物語』講談社2009年出版p.120)として批判していますが、この現状を黙認追認したのが茂木友三郎氏です。行政刷新会議も同様に、「制度そのものがアリバイのためにあると言われてもしようがない」と言われかねないと考えられます。さらには、「「社外取締役」 経営者“名義貸し”ネットワーク」(「ZAITEN」2010年3月号)という特集の中で、茂木氏はその兼任状況の異常さを、かなり激烈に批判されています。

 なお以上のような問題がありますので、要望者としてはHOYA株式会社に対してこれら問題を改善させるべく株主提案(2010年1月12日に本社株主総会事務局に到着)を行いました。①3社より多い兼任数の社外取締役の就任の禁止、②社外取締役の10回以上の連続の再任禁止、③累積投票制度を排除する定款規定の禁止、④株主総会の議決における秘密投票、⑤取締役の個別報酬の開示、⑥交換取締役の禁止、などからなる提案内容になっています。

 資本市場の機能を国際的な投資家から評価させるものに改革させて、日本人の持つ年金の利回りを向上させることは、日本の政治にとって非常に重要な意味を持つ課題だと思われますが、以上のような行動を考慮すると、はたして茂木友三郎氏がこういった問題に対してきちんとした見識を持っているとは全く思えないのが現実です。現実に、日経平均株価などの株価の指標を見ても、民主党の経済政策は2009年8月30日以降、必ずしも国際的な評価を得られていないのが現実ですが、行政刷新会議の議員である茂木友三郎氏の活動がこのようなものであることなどは、その否定的な側面の象徴のように見られているように思われます。すべての世代にとって、日本の金融資産の有効な運用は、国の無駄遣いの削減と同じような重要性を持つはずです。若い経済人や経済の専門家は少なからずいます。現政権としては、旧政権からの引き継ぎ人事である茂木友三郎氏を行政刷新会議議員から退任させて、国際的な資本市場の皮膚感覚を備えた、新たな人材を行政刷新会議の議員として選出されることを強く要望します。

2010年5月19日水曜日

新規事業がここ20年間成功していないことを指名委員会が放置していたことが問題だ。

というタイトルで記事を書きますので、少しお待ちください。
そもそもここ5年間株価が低迷している理由になる一つの主要な問題は、丹治宏彰氏(前年取締役から退任し、平成22年6月18日の株主総会後の退任が発表済み)を代表とする新規事業に成果を持たない執行役を指名委員会が指名していることが問題であり、そのこと自体をもって、指名委員会所属の取締役に反対票を投じるに十分な根拠になると思います。HOYA株式会社の今の社外取締役たちは、「老人仲良しクラブ」です。なお日産自動車から移ってきた荻原太郎氏(技術担当執行役)についても、「元日産自動車の燃料電池の開発責任者であるが、日産自動車時代に新規事業開発の顕著な実績も確認できず、ゴーン体制下でEV車に資源を集中する戦略から外れた事業開発部門の出身者であり、かつ機械系であるため、主要事業が材料科学であるHOYA株式会社の技術担当の責任者として不適格」だと考えていますが、詳細は別に譲ります。このような現状では、新規事業等の投資はすべて失敗に終わるため、株主価値は失われる一方です。

そもそも丹治宏彰氏が取締役となり、実質的に技術担当の責任者になって以来、当社の社内R&Dとベンチャー投資を含む新規事業はすべて失敗しています。新規事業の投資の成功確率0%です。たとえば公開資料から分るように、2004年にCardinal Warde博士の起業したRadiant Images社を買収していますが、この会社はその後のマネージメントが悪く、非常にいい買い物だったはずなのに、他社にプロジェクトを委譲するなど完全に失敗に終わっています。この投資の責任者も丹治宏彰氏です。ペンタックスの失敗については、これ以上ここでは何もいいません。また、Xponent Photonics社の投資失敗も開示されている結果の一つです。過去の株主向け開示資料を注意深く見ていただければわかるように、5、6年前に開示されていたR&Dプロジェクトの内容で、成功したものは一つもないです。

そうであるにも関わらず、80年代までの事業開発の成果(マスクブランクス、フォトマスク、ガラス磁気ディスク基板などの事業)が2000年代前半までは伸びていたため、これだけめちゃくちゃな資本の無駄遣いを行っても、外からはあまり見えにくかったわけです。私はこの現状を変えたいと思っていますが、このために障害になるのは、現在の社外取締役の諸氏です。彼らは私の認識では、完全な善管注意義務違反です。というのも、丹治宏彰氏のような新規事業には実績のない人間を最高技術責任者とか技術担当の執行役とかに指名し続けていたということがあります。だから社外取締役の過半数を何らかの形で交代させないと、新規事業の体制が変わることはないと言えるため、社外取締役の候補を提出せざるを得なかったわけです。ただし委員会設置会社の構造上、指名委員会の過半数が交代すれば、新しい経営体制をスタートさせることができます。

実はHOYA株式会社の事業ポートフォリオにはすごいドル箱候補があります。それは眼科領域で、まだ真の意味での有効な新薬のない加齢黄班変性症の分野で新薬開発に成功すれば、ソニーを越える時価総額を達成できます。私の夢ですが、13歳で大学卒業し17歳で医学博士を取得したBalamurali K. Ambati博士の知恵を有効に活用すれば、それも不可能ではないのです。Balamurali K. Ambati博士は現在加齢黄班症の原因因子の一つの基礎研究を行っていますが、グローバル企業ならば世界の真の意味でのリーダーの知恵を活用するべきです。

それにしても、新しい経営体制を構築するためには、現任の社外取締役である椎名武雄(81歳)、児玉幸治(76歳)、茂木友三郎(75歳)の3氏は退任してもらいたいと考えています。椎名氏は就任期間15年、茂木氏は9年になりますし、児玉氏はいわいる旧通産省からの天下り・渡りの経歴を持つ人物です。イギリスの証券市場の決まりでは、9年を越える再任期間を持つ社外取締役には独立性を認定しません。諸外国の資本市場の歴史を踏まえると、自主的な退任を勧告したいと思います。それに今の社外取締役の構成は、引退した経営者ばかりで、弁護士や会計士、大学教授などの知的バックグラウンドを持つ人材を活用しておらず、多様性に欠けると思います。

2010年5月18日火曜日

神童の眼科医バラ・アンバッティー博士による中長期的株主価値を増大させる経営戦略:Strategic Vision for HOYA Ophthalmics' US Market Entry

HOYA株式会社の取締役候補で、17才で医学博士を取得した神童であるインド出身の眼科医であるBalamurali K. Ambati博士による、HOYA株式会社の経営陣に対する提案内容です。結論からいえば、加齢黄班変性症の新薬の優良候補を買収等で入手し、世界を席巻する事業戦略を取るべきです。このような世界の市場条件を理解せずに、対応が後手後手に回っている鈴木洋氏は、丹治宏彰氏と指名委員会のメンバーともども、早期に辞任するべきです。平均年齢が70歳を越えた社外取締役候補はもはや株主の利益にならないのです。眼科ではBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学准教授)と、Paul Ashton博士サイビダ社社長兼最高経営責任者)、材料科学などエレクトロニクス分野ではCardinal Warde博士MIT電子工学教授)の取締役就任への賛成をぜひともお願いします。

Strategic Vision For Hoya Ophthalmics’ US Market Entry
by Balamurali K. Ambati, MD, PhD, MBA (Associate Professor of Ophthalmology and Visual Sciences & Director of Corneal Research, University of Utah School of Medicine, A Candidate for a Board of Director of HOYA Corporation)

Understanding the Market
Vision loss is a devastating event and a significant risk for the aging. The numbers behind vision loss are staggering. Approximately 1 in 28 Americans over 40 is affected by low vision or blindness. Considering that the >80 cohort is rapidly growing and the coming of age of the baby boomer generation, prevalence of glaucoma and AMD are expected to more than double by 2020. Over 322 million people worldwide have blindness, visual impairment, or low vision, with even more having vision-threatening conditions.

A brief summation:
• US Ophthalmic Pharmaceutical Market 2011: $12B
• Vision Loss is expected to grow 70% by 2020
• Financial Burden of Vision Loss in the US is greater than $35B/yr
• Globally AMD - 30M; Glaucoma - 42M; Diabetic Retinopathy - 20M

Market Size: The total ophthalmic pharmaceutical market was $12 billion in 2007 and is expected to grow 4-11% through 2023. The primary drivers of this market are currently four indications: glaucoma (37.5%); ophthalmic anti-allergy/inflammatory/infective (31.2%); retinal disorder (14.6%), and dry eye (11.5%). The glaucoma and retinal markets are driven by large marketshare, blockbuster drugs; Xalatan/Xalacom $1.6B and Lucentis $1.7B, respectively in 2008. Growth in the retinal disease market is expected to maintain a robust clip between 9-29% through 2013 with glaucoma markets showing limited growth, but remaining the largest market through 2023.

Key Diseases:
AMD, the leading cause of blindness in the US, has 2 principal forms: “wet” or exudative (characterized by angiogenesis or growth of new blood vessels), and “dry” or non-exudative (characterized by geographic atrophy and drusen, and a steady rate of progression to “wet” disease). In the US, there are over 2 million people with advanced AMD (expected to double by 2020). Further, 7.5 million Americans are affected by intermediate AMD and thus at risk for developing advanced AMD. While present anti-angiogenic modalities offer significant benefit to many patients with neovascular AMD, indefinite monthly intravitreal injections are risky, unappealing, and burdensome to patients.

Current FDA-approved therapies include the anti-VEGF aptamer (pegaptanib (Macugen; OSI)) and the anti-VEGF Fab fragment (ranibizumab (Lucentis; Genentech)), and photodynamic therapy. Use of Macugen and photodynamic therapy has been eclipsed by intravitreal injections of Lucentis, as it is the first drug to demonstrate significant visual acuity improvement in patients with neovascular AMD. Lucentis costs approximately $2,500 per injection (prospective annual cost approximating $30,000), thus demonstrating the potential of a large market (Lucentis US sales in 2008 were $875M and $886M for the rest of the world). This has triggered a pipeline of 24 INDs (Investigational New Drugs) with at least 20 drug projects in preclinical stages. While the future space in pharmaceutical management of AMD may become crowded, drug delivery platforms are needed to improve ease of administration, convenience, and patient quality of life, for patients now accept monthly intravitreal injections only because there is no choice. In addition, off-label use of bevacizumab (Avastin® ; Genentech), an anti-VEGF antibody, has become common as it much less expensive, but nonetheless this requires regular intravitreal injections.

Glaucoma is the leading cause of blindness in the African-American community and in much of Africa. It affects 2-3 million Americans. Current therapy revolves around lowering eye pressure using topical eyedrops including latanoprost (Xalatan), brimonidine (Alphagan), timolol (Timoptic), and dorzolamide (Trusopt). Patient understanding of and adherence to complex medical regimens is often poor, resulting in need for costly and high-risk surgical drainage procedures, including trabeculectomy and tube shunt procedures. These have high rates of infection, choroidal hemorrhage, hypotony, and other vision-threatening complications.

Diabetic retinopathy could potentially occur in the 15 million Americans with diabetes as well as the hundreds of millions around the world. Diabetic vision loss (currently afflicting 4 million Americans) is generally due to macular edema (leakage from blood vessels causing swelling in the central retina) or proliferative diabetic retinopathy (growth of new blood vessels causing hemorrhage). The percentage of Americans with diabetic retinopathy is expected to skyrocket over the next 15 years due to aging and increasing obesity.

Market Analysis:
Individuals who live to age 65 have a 45% risk of eventually developing AMD, glaucoma, or diabetic retinopathy (all possible conditions for CDR usage, along with retinal vascular occlusions, uveitis, and other vascular or neurological disorders). As the >80 cohort is rapidly growing, prevalence of glaucoma and AMD are expected to more than double by 2020. Expected 2008 US sales for drugs such as Xalatan (glaucoma) or Lucentis (AMD) exceed $1 billion. The financial burden of vision disorders in the US exceeds $35 billion/yr. With nearly 3 million cataract surgeries performed annually in the US and with over a third of patients over 65 having had cataract surgery (15 million patients; ~25 million eyes), it is reasonable to expect that there would be great demand for products that can be targeted to cataract or post-cataract patients or co-marketed with intraocular lens technology.

The most important driver for growth during this period will be the increasing prevalence of ophthalmic disorders among an expanding older population. The two most rapidly expanding categories will be glaucoma and retinal disorders. The push for new superior technologies is especially evident in the growth of investment seen in the ophthalmic market. Continued increases in new targets and expanded delivery options signal growing interest in ophthalmics, resulting in nearly 40 deals since January 2007, led by Novartis AG’s $10.4 billion purchase of a 25% stake in Alcon Inc., and over $370 million in venture financing. Investors believe the sector is ripe for growth due to an aging population, unmet medical needs and increasing interest from large pharmaceutical companies. The amount of venture capital going into ophthalmic companies rose from $123 million in 2004 to $210 million in 2006. Over the same period, companies with an interest in the eye space raised in excess of $1.5 billion from all capital market sources.

Success in the ophthalmic market during 2008-2023 will be characterized by the launch of products with superior technology, particularly those technologies which increase clinical effectiveness or increase patient compliance. Considerable success is also likely for therapies that meet the large unmet needs.

Recommendations
Hoya’s entry into the US ophthalmology market can achieve its potential for exponential growth by targeting key niches with high margins and scope for expansion. The sectors I would recommend concentrate on would be the following:

(1) Near Term
• Aggressive Rollout of the iSert: A pre-loaded IOL insertion system is a felt need on the part of ophthalmic surgeons and ambulatory surgery centers. With a three-piece acrylic, centration should be excellent, posterior capsule opacification low, and insertion feasible even if placement in the ciliary sulcus is necessary. To compete with Alcon, Hoya will need to develop a far-sighted marketing strategy including the building of a significant sales-force, targeted campaigns to surgeons and facilities, educational events to residency programs & large conferences, and deals on surgical disposal supplies. The iSert itself could further be enhanced for surgical comfort by developing a one handed injector with a spiral stylus and cartridge to enable one-handed delivery with in the bag placement of both haptics & optic.
• Adjustable Intraocular Lens: Calhoun Vision (privately held) has developed a light-adjustable intraocular lens that is in clinical trials. This technology allows refinement using a UV light that modifies the polymers within the lens to desired refractive outcome. Once this is done, a second laser can lock in the refraction. Hoya could explore opportunities to partner (or purchase) Calhoun to develop and market this technology, as well as partner or purchase with an aberrometry company (e.g., the Orange system by Wavetec) to optimize the targeted light adjustment parameters.
• Toric Intraocular Lens: Current toric lenses suffer from either being a single piece silicone design (Staar) or possessing mediocre rotational stability (Alcon). A three-piece acrylic lens would avoid the problems of silicone and likely promote superior rotational stability and thus ease of surgical placement. This would add value to the ophthalmic market.
• Acquisition of Phacoemulsification Capacity: Hoya should explore the opportunity to acquire the cataract surgical business (phacoemulsification machines, surgical packs, instrumentation) of a competitive ophthalmic company (e.g., Abbott Medical Optics, B&L Surgical) to enable synergy in marketing of IOLs with surgical equipment.
• Physician Practice Enhancement: Hoya could partner with practice consultants and management companies to identify and cultivate business opportunities for ophthalmologists in single or group practice. This would dovetail with the rest of Hoya’s ophthalmic program and build brand awareness and goodwill among the ophthalmic community.

(2) Medium Term
• AMD Drug Candidates: Motesanib (a VEGFR/PDGFR inhibitor; Millenium Pharmaceuticals (a Takeda company). CEP-11981 (Cephalon’s VEGF-R/Tie2kinase inhibitor), VEGF-trap (Regeneron) and Macugen microspheres (long-acting pegaptanib; Eyetech) are potential drugs or drug candidates that could find broad application in AMD therapy. These represent promising licensing or partnership opportunities for Hoya
• Development of a Premium Intraocular Lens: The evolution of cataract surgery into a refractive procedure for large numbers of patients with presbyopia and high visual demands is still in its early stages. With the aging of the Baby Boomer population, this market will greatly expand, as this cohort has an affinity for elective medical “enhancement” procedures as well as being large. Hoya has the opportunity to use its materials science infrastructure to develop a novel intraocular lens that could be an injectable polymer with adjustable focus properties. Alternatively, Hoya could develop superior aspheric correcting lenses which correct for higher-order aberrations of the cornea and optical system.
• Drug Delivery Device: Ocular drug delivery has several “pretenders” but no devices which can be implanted by the general ophthalmologist, target glaucoma or wet AMD, or are refillable or versatile. Hoya can partner with pharmaceutical companies or early-stage delivery companies and use its polymer and materials science capabilities to launch an ocular drug delivery platform for the treatment of chronic eye disease (e.g., macular degeneration, glaucoma, diabetic retinopathy) which would eliminate the risks of chronic intravitreal injections and/or the inconvenience & inefficacy of complex topical eyedrop regimens.

(3) Long-Term
• Novel Wet-Field Adhesives: Ophthalmic surgical procedures suffer from an absence of adhesives which retain their coherence in a wet field such as the eye. Hoya could develop a novel adhesive that would have applications in corneal and retinal injury and ocular trauma (of great interest to military applications).
• Advanced BioImaging: Hoya’s internal capabilities in lens technology (both for IOLs and cameras) could be leveraged to develop novel imaging platforms to compete with Heidelberg and Zeiss. Truly 3-dimensional imaging of the cornea and retina remain elusive, and imaging of predictive biomarkers of disease is still the province of university laboratories. Both of these would represent terrific niches for Hoya to synergize its intrinsic strengths and introduce vanguard technology to the field.
• Drug Candidates: Potential drug candidates focusing on neuroprotection, reduction of inflammation, and novel anti-angiogenics are promising long-term opportunities from a pharmaceutical standpoint in ophthalmology.

Strategy for Hoya Growth in Ophthalmics
(1) Near Term
iSert
Physician Practice Enhancement
Adjustable & Toric IOLs
Cataract Surgical Division Acquisition
(2) Medium Term
Drug Delivery Device
Development of a Premium IOL
Acquisition of AMD Drug Pipeline
(3) Long Term
Novel Wet-Field Adhesives
Advanced Bioimaging
New Drug Candidates

By building on a foundation of excellence in lens, imaging, and materials technologies, Hoya Ophthalmics should be able to introduce several best-of-class products to the US market which truly make a difference to patients as well as raise Hoya’s market profile.

2010年5月17日月曜日

日本の企業統治を変える秘密投票議案

6月18日に予定されているHOYA株式会社株主総会への株主提案では、株主総会の決議事項の投票をいわいる秘密投票にするという提案を行っています。

実は現時点では、秘密投票は「法令違反」になります。というのも、議決権行使書面を本店に3カ月だか据え置かなければならない、そして株主は行使された議決権書類を閲覧謄写することができるのです。つまりあなたが行使した議決権行使の書面(いわいる返送するか、株主総会に持っていくはがき)は、ほかの株主が見ようと思えばどのように議決権を行使したか見ることができるのです。したがって、法令が認める範囲で「秘密投票」にし、それが不可能である場合はその限りでない、とする定款変更議案として提出しています。

基本的には、例えば持ち合いの株主、事業上の取引関係にある株主(例えば商社など)、保険会社など投資先としてその会社に投資しているが、保険も買ってもらっているような株主は、現経営陣に反対するような議決権行使は、よほどのことがないと難しいのですが、秘密投票ではそのようなことを心配することなく、自由に議決権行使をすることができるようになります。相撲協会の理事選挙で、秘密投票の威力は直観的には明らかだと思います。こういった観点から、カルパースなどの国際的な投資家は、企業統治の原則として「秘密投票」と推奨しています。

「秘密投票」に反対する立場としては、受託者責任を負う機関投資家に受託者に対する責任を明確化させるため、どのように議決権を行使したか公開した方がいいという見解があります。しかしながら、投資家は投資パフォーマンスに対して投資決定を行うのであって、特定の議決権行使を行わせるために投資するのではないと思いますので、「秘密投票」に反対する理由にはならないのではないでしょうか。

参考文献
"The Myth of Shareholder Franchise" Virginia Law Review, Vol. 93, No. 3, pp. 675-732, 2007 Lucian A. Bebchuk

2010年5月16日日曜日

私の株主運動により丹治宏彰氏が執行役から退任したならば、それは一つの大きな成果だ。

丹治宏彰氏の執行役からの退任のニュースが、HOYA株式会社より発表されています( 「役員異動のお知らせ」2010年5月14日HOYA株式会社)。私は昨年(平成21年6月)の株主総会向けに、丹治氏の取締役からの解任を要求、結果として取締役からは自主的に退任させたが、今年の株主提案でも、まったく何の実績もないにもかかわらず、依然として企画担当の執行役として留まっていること(はっきり申し上げて丹治氏を執行役に指名した指名委員会のメンバー全員の解任をお願いしたい)について、いくつかの方法で問題提起しました。なお去年の提案内容(「平成21年度HOYA株式会社の株主総会における提案内容について」小生ブログ:2009年4月14日)と顛末( 「丹治宏彰氏の実質的な解任に関して、HOYA株式会社の株主総会事務局から書類が送られてきた」小生ブログ:2009年5月31日)は、それぞれのリンク先をご参考にしてください。

大体ここ10年以上、ほとんどすべての投資案件を破産に追い込み、世間の笑い物になったペンタックスの高値掴みを取締役として鈴木洋氏の暴走を黙認し、結果として会社の企業価値に多大な損害を与えた丹治宏彰氏が会社に一応役職があったこと自体が大問題であったのですが、一応丹治宏彰氏の会社役職(現役職は企画担当執行役)からの退任が実現しましたので、良かったと思います。株主提案が一定の成果を上げることができたと思います。

それにしても、会社の発表の仕方が笑ってしまいますね。この人に何か一つでも新規事業において成果があったのでしょうか。今後は材料科学の事業開発に成果のある人物の最高技術責任者の採用を、株主の立場から働きかけていきます。材料科学の会社なのに、機械系のことしか分らない人が、なぜか最高技術責任者にいるのを、なんとしても変えさせましょう。経営戦略に必要なのは、投資分野の集中と選択(眼科と材料科学分野)です。

以下HOYA株式会社ホームページより引用。
2010年05月14日
HOYA株式会社
役員異動のお知らせ
当社の執行役企画担当である丹治宏彰が、2010(平成22)年6月18日開催予定の当社第72期定時株主総会終結のときをもちまして、任期満了により当社執行役を退任する予定であることをお知らせいたします。
丹治氏は1992(平成4)年4月に当社に入社、以来一貫して先端技術の開発、新規事業の開拓等の分野に力を発揮してまいりました。2000(平成12)年6月に当社取締役となり経営に参画し、2003(平成15)年6月には委員会等設置会社への移行に伴い執行役を兼務いたしました。
その後M&A(企業の合併と買収)にも関与し、成長分野であるエレクトロオプティクス部門での買収や、当社で新たな成長分野として位置付けているメディカル分野での新規事業の買収に手腕を発揮いたしました。
同氏はこのように当社の発展に数々の貢献をしてまいりましたが、このたび、ここ数年の懸案事項でありました一部事業の再編プロジェクトが契約締結の運びとなり、これを機に、新しいフィールドでさらなる挑戦をすることを希望し、任期満了に伴い退任するものであります。
当社といたしましては、丹治氏のこれまでの当社に対する貢献を高く評価し、その残した成果をさらに活かして今後の発展を目指してまいります。

丹治宏彰(たんじ・ひろあき)氏 略歴
1952(昭和27)年7月31日生まれ
1992(平成4)年 4月 当社入社
1997(平成9)年 4月 当社R&Dセンター先端技術研究所ゼネラル・マネジャー
2000(平成12)年 6月 当社取締役
2001(平成13)年 6月 当社取締役兼事業開発部門長
2003(平成15)年 6月 当社取締役、執行役兼事業開発部門長
2006(平成18)年 6月 当社取締役、執行役最高技術責任者兼事業開発部門長
2006(平成18)年 7月 当社取締役、執行役最高技術責任者
2009(平成21)年 6月 当社執行役 企画担当(現任)

追伸(2010年7月19日)
丹治宏彰氏が会社の言うように株主価値をつけられるほど優秀ならば、高い給与を提示してでも引き留めるべきだし、それをしていないのはそもそも指名委員会の職務怠慢だと言わざるを得ません。

2010年5月14日金曜日

退任した取締役の報酬を開示させることの企業統治での意味

すでに一部で報道されているように、「退任した取締役の過去10年間の報酬を開示させる定款改正議案」を含む複数の株主提案を、平成22年6月18日に予定されているHOYA株式会社の株主総会に行いました。

なぜ退任した取締役の報酬開示が必要か、それは企業統治のきもは、①まず誰を取締役として選任するか、②そうやって選ばれた取締役にどのようなインセンティブをあたえるか、ということになります。

金融庁主導の内閣府令により、今年4月から1億円以上の報酬を得る取締役の報酬開示が義務付けられます。これは政権交代により、経団連から献金をほとんど貰っていない民主党政権が誕生したことの成果(金融庁は国民新党亀井静香大臣)です。しかしながら私から見れば、極めて不十分であり、取締役の家族に報酬を支払ったり、報酬でない手段で実質的にお金を渡す(例えば取締役の兄弟が国会議員だったら、そこに政治献金やコンサルタント報酬として渡すとか)などの方法が、今後ますます活発になると思います。経営者や取締役と株主の間でのプリンシパル・エージェント関係から生じる最大の問題は、業績努力とは無関係な報酬を、経営者や取締役が受け取ることです。本人らの能力や努力から発生した業績向上以外の理由で、彼らの報酬が上がるのは、社会的厚生の観点からはロスになるのです。基本的に、取締役と執行役の報酬は、基本的には全額株主に開示すべき、どんなに譲っても上位4名は開示するべきです。

今後この会社のみならず、退職してから顧問料やコンサルティング収入などの形で以前の取締役に報酬を渡すという形式がはびこってくると思いますので、この件については、今後より詳細な議論していこうと思います。例えば富士通秋草直之氏が取締役を退任しても、報酬を受け取っていたら、株主としては本当は困るわけです。現に秋草氏らが退任させようとした野副州旦氏(前富士通社長)に、辞める際の口止め料として二億円だかを渡すとか言っていたのをよく覚えておきましょう。私は以前より丹治宏彰氏の取締役と執行役からの退任を求めてきましたが、もし2010年6月の執行役退任後(注:取締役は2009年にすでに退任)も報酬をもらう扱いになっていたら、HOYA株式会社も似たようなものと言わざるをえません。このような状況の放置は、年金の運用先としての資本市場の瀕死を意味すると思います。第一生命さん、日本生命さんの議決権行使担当者の方も、ぜひご考慮のほど宜しくお願いします。

というか、鈴木哲夫名誉会長と山中衛相談役の2名の元取締役の退任後の報酬については、最高執行役鈴木洋氏と彼らは親族であるので、当然開示が求められるべきでしょう。鈴木洋氏の自宅の名義が鈴木哲夫氏であること、すなわち父親の家に住んでいるわけだから、当然です。報酬について関心のある人は、Lucian Bebchuk教授の共著を読んでください。なお私は、経営者の報酬が大きい自体を問題にはしていません。もし今後当社の株価が10年で10倍になれば、最高執行役の報酬が年間100億円でもかまわないと思っています(株主価値を増大させる優秀な経営者には能力相応の報酬を払ってもいいというのが、欧米の機関投資家の標準的な考え方です)。真の意味での問題は、経営者の努力とは無関係な報酬を、取締役や執行役が受け取ること、これを監視するために報酬の個別開示も必要だし、取締役退任後に報酬を受け取っている場合に非公開となっているのは問題なのです。

2010年5月5日水曜日

間違ってはじまってしまった社外取締役制度:椎名武雄と佐伯尚考の両氏には社外取締役の独立性がない

すでに一部報道がされているように、平成22年6月の株主総会へ向けて、HOYA株式会社へ株主提案を行いました。だいぶん株主提案の数が多くなると思います。題目の議論に移りたいと思いますが、私の理解では、やはり社外取締役制度の歴史がまちがってはじまってしまったことが大きいかと。HOYA株式会社のはじめ2人の社外取締役(椎名武雄氏、佐伯尚孝氏)の人選から垣間見れます。理由をまず簡潔に述べます。

まず社外取締役の独立性の「独立」の意味ですが、分りやすく言えば、社外取締役であること以外に会社との関係がないことを言います。詳しくはリスクメトリクス社の石田猛行さんの論文を読んでください。基本線では石田さんの見解に私も同意しています。そういった観点から考えるに以下の事実が指摘できます。なお私は椎名武雄氏や佐伯尚孝氏の社外取締役としての実績には問題があると考えていますが、仮に彼らが大変素晴らしい方だとしても、独立性という意味では問題になるのです。よりよいガバナンスは投資家にとっては保険のようなものであり、業績がいいことが問題のある企業統治が放置されてもいいという発想にはならないのです(どうも日本人には分りにくい発想のようですが)。

①椎名武雄氏はもともとの主要取引先(日本IBM社)の経営幹部なので、そもそも独立性が疑わしい。
②少なくとも開示情報で明らかなように、椎名武雄氏は、少なくとも2003年まで取締役報酬とは別に、自分の個人会社でHOYA株式会社とコンサルティング契約を結び、多額の報酬を受け取っていたことがあります。
③椎名武雄氏の社外取締役としての在任期間が15年となっていますが、少なくとも10年をこえた在任期間を持つ取締役に、「独立性」を認めていいかという問題があります。たとえば日本プロクシーガバナンス研究所という議決権行使助言会社は、8年を越える在任期間を持つ社外取締役の選任議案には、機械的に反対票を投じることを推奨するとしています。
④佐伯尚考氏は三和銀行の前頭取でしたから、いわいるメインバンクの出身者です。債権者と株主の利益は相反するので、融資を行っている銀行の出身者には独立性を認めないというのが、現代の企業統治論の標準的な考え方です。
⑤また三和銀行出身の佐伯尚考氏がHOYA株式会社の取締役となり、HOYA株式会社名誉会長の鈴木哲夫氏が三和銀行の取締役となっていましたが、取締役を交換している主体出身の取締役(「交換取締役:Interlocking Director」)に独立性を認めないのも、標準的な考え方です。

なお平成22年6月の株主総会向けには、交換取締役を禁止する定款規定を導入する定款変更議案の株主提案を行いました。
以上の意見へのコメントを募集します。今後の株主提案の方法などに反映させていきたいと考えています。以下のメールアドレスまで宜しくお願いします。
yy2248[@]columbia.edu([@]を@に変えてください)。

参考
「取締役の独立性の要件―Riskmetricsの見解」(溝渕彰先生のブログ投稿:2010年4月3日)
http://jcorporate-governance-forum.blogspot.com/2010_04_01_archive.html

2010年4月23日金曜日

私が株主総会の取締役選出での累積投票を推奨する理由

HOYA株式会社を含むほとんどの上場企業は、株主総会での取締役選任における累積投票制度の採用を、定款で排除しています。以下に、私が累積投票を推奨する理由を述べておきます。

(累積投票:推奨する理由:HOYA株式会社の株主様へ)
 現在の日本社会の問題の一つが、企業統治の不在による、上場企業の経営における非効率性の放置である。上場企業は、私企業とはいえど、日本の個人が直接・間接に便益を受けるはずの年金基金の運用対象であるので、極めて公共性が高い。経営者は株主の代理人として、配当やキャピタルゲインを増加させることにより株主利益を最大化するよう経営を行うことが望ましく、それを監視するのが取締役会の本来与えられた使命である。ところが、当社を含めたほとんどの日本の上場企業では、そういったメカニズムが、諸外国の資本市場と比較しても、ほとんど働いていない。この現実に非常に憂慮している。
 
 メガネレンズの分野で国内の優位な地位を確立していた当社は、70年代から80年代にかけて、獲得したガラス研磨技術をプラット・フォームの技術として、無機材料科学の分野において、主に半導体産業や液晶の分野を応用とした製品開発に成功し、その結果として90年代に株価が年率15%程度に増加し、10年間で約4倍程度に上昇した。90年代以降成長をけん引したガラス磁気ディスク基板、マスクブランクス、フォトマスクなどの商品はいずれも80年代までに基本的な開発が終了していた商品である。

 他方、当社の過去10年間の株価をみると、ここ十年間でほとんど株主価値が創出されていない。実際2000年代冒頭は一見利益ベースでの成長が起きていたが、それは以前の技術・製品開発の成果がそのまま伸びていたわけであり、こういった業績は当社代表執行役CEO鈴木洋氏ら現経営陣に帰するのではなく、それ以前の世代の経営陣の力によるものであると評価することができる。

 それではなぜここ10年間、企業価値が創出されなかったのだろうか。
 この点、第一にペンタックスの買収が与えたネガティブな影響が挙げられる。すなわち、2006年12月時点の合併会見時でさえ、カメラの市場においてヒット商品が出ていたためにペンタックス社は一時的に黒字になっていただけである。材料科学と異なり、カメラの商品サイクルが2年程度であること等、事業の基礎的な条件だけを見れば、優良な買収対象だと言えない同社を考えられないような高値掴みをしたことが挙げられる。ロイターのインタビューにおいて、3年前に「2011年3月にのれん代を除く営業利益率を18%にすることを目指す」と、鈴木洋氏は発言している。しかしながら、現時点においてこれが実現する可能性はほぼ皆無といって等しい。すでに赤字に転落し、現在の状態は損益分岐点をようやく達成可能かどうかという水準である。買収コストの約1500億円があれば、現在何%の自社株を消却できたであろうか。投資銀行およびやプライベート・エクイティーの実務の観点からは、今回のようないわゆる「高値掴み」は、最大の失敗と解される事例である。残念ながら、本買収については、投資資銀行のアナリストのレベルでも適切な判断が可能といわざるを得ない。結果、現経営陣の能力は、その水準の認識力もないことを意味している。従って、ペンタックス買収は、企業価値の数十パーセントを喪失させた買収であると評価できる。

 第二に、ベンチャー企業の投資に悲惨な結果を、「実績」として残していることが挙げられる。公開情報をもとに例を挙げると、2008年(平成20年)に投資対象であるXponent Photonics社やQstream Networks社の実質的な破産が会社から公表されているが、これが当社経営陣の手によるベンチャー投資の実態を示している。例えば2006年(平成18年)にXponent Photonics社への投資と代理店締結時に、「「GE-PON」用光トランシーバーの初年度の売上を6億円と見込んでおります」と発表しているが、なんら成果は上がっていない。これらは株主に損害を与えた投資活動の公開されているほんの一部である。なおRadiant Images社という2004年に連結対象になった投資先についても、ほぼ同様の結果となっている。なお、現社長である鈴木洋氏が米国駐在時に主導した投資は、すべて破産しているのが実態である。以上のような結果になっている理由は、優良案件を掴むための人脈や情報源を保有しておらずそのための努力も全く行っていないこと、投資を行った後は放置したままであり少なくとも四半期おきに投資先の技術開発の動向や代替技術の動向がどうなっているか、買収提案をするべきかどうかなどの精査な分析を一切行っていないこと等が挙げられる。なお、提案者は、こうした問題があることを3年以上前から現経営陣に伝えているが改善に取り組んだ形跡は全く見られないのが実情である。

 第三に、社内のR&D(研究開発)の結果が、ここ10年に見るべき実績が全くないことが挙げられる。当前のことであるが、当社は2007年度まで経常利益で約1000億円の利益を出しており、更に成長率を底上げするためには、少なくとも100億円以上の利益を上げられる事業を経済合理的な形で創出する必要がある。ところが株主向け資料に記載されているプロジェクトの中に、一つでも5年から7年以内に100億円以上の営業利益が創出されるようなものが含まれているであろうか。答えは否である。例えば2002年(平成14年)5月発表の、SiC其板の開発、製造子会社のHAST(HOYA Advanced Semiconductor Technology)という会社でも、2007年(平成19年)での上場を目指すと公表されている。すなわち、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とある。しかし、8年たっても株主利益に貢献するような成果が何もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことからも明らかである。これはあくまで一例である。丹治宏彰氏が最高技術責任者として不適格であることは、現場の従業員は認識していた事実であった。従って、丹治宏彰氏に支払われていた報酬自体が株主利益に反するものであり、取締役が株主の利益に立って報酬の決定を行ってこなかったことも明らかである。

 基本的に2000年以降に株主価値の増加や、株価の上昇が見られなかった最大の理由は、以上のような状況を当社の執行役を中心とする経営陣が放置していたにもかかわらず、社外取締役を多数とする取締役会がその状況を容認、放置していたことにある。しかし、その状況はいまだに継続している。例えば提案者は昨年度冒頭に、株主提案書の提出により、丹治宏彰氏(当時最高技術責任者)の取締役からの解任を要求、結果として経営陣は丹治宏彰氏を取締役からは自主的に退任させたが、2009年6月の株主総会後の取締役会において、依然として執行役(企画担当)として選任された。提案者から判断すると、社外取締役と経営陣はいわゆる「なれ合いの仲良しクラブ」とも言える関係となっていると目さざるを得ず、到底、最適な人材を執行役に選任するという動機や意思を持ち合わせていないと評価せざるを得ない。以前、鈴木哲夫氏は、「役員の任期は1年」と言っていたはずだが、不適切とされた取締役が以前執行役として留まることを容認している「仲良しクラブ化」の取締役会のもとでは、最適な人材を配置することなど適わないと言える。

 当社の株主価値が創出されない経営上の問題について説明を試みたが、それではなぜ累積投票を排除する定款規定が、株主利益上望ましいかについて、最後に説明したい。現在の累積投票によらない取締役選出方法だと、株主の間で意見の対立があった場合、51%の賛同を得ればすべての取締役選任議案は承認され、49%の賛同があっても一人の取締役候補者も取締役にすることができない多数決ルールになっている。これは冷静に考えれば、民主主義において極めて不合理である。例えば国政選挙において、50%を超える得票を集めた政党だけが議員を選出でき、49%や8%といった得票であれば一人も議員を選出できないという制度が存在したとして、その制度に賛同する人はあまりいないのではないだろうか。仮に取締役の員数が10人である場合、10%以上を持つ株主が自らの票(1議決権につき10票)を一人の候補者に集中的に投票すれば、確実に一人の候補者が取締役になることが、累積投票が定款で排除されていなければ(本提案が可決された場合、来年以降は)可能である。

 多くの個人株主諸氏は、個人株主比率が全体の15%とか20%になっても、なんら経営陣や取締役は自分たちの株主利益ことを省みないではないかと感じることがあるのではないかと思う。ところが、累積投票制度が排除されていなければ、個人株主の票が一人の取締役候補者に15%集中すれば、個人株主代表の取締役を選出することが容易になる。これは従業員持株会が一定以上の株数を持つ場合にもあてはまる。機能する取締役会において重要な要素は、見解の多様性である。実際に提案者や提案者の推薦する候補がすでに取締役になっていれば、彼らはペンタックスの買収などで経営陣の独走を許すことに反対していいたであろうし、その他の問題となる状況も取締役会ですでに検討されていたであろう。

 彼らの意見が取締役の中で少数だったとしても、その意見を取締役会議事録に残すことで、過去の経営行動をチェックし、再検証することも容易になり、責任の追及もしやすくなるのである。この側面は、株主利益に大きく貢献する潜在的な可能性を持っており、取締役会に多様な意見を反映させることは、株主利益の実現上極めて重要である。

 累積投票制度は、現在の取締役会の構成や運営の欠陥を是正し、少数株主からの代表を取締役会に送り込む可能性を高め、取締役会の多様な意見の確保を行うのに適している制度である。総会屋等が横行した昭和49年の旧商法改正当時とは状況が変わっているため、現況に鑑みると会社法で認められている累積投票制度を定款で排除する理由は特に見当たらない。実際に、コロンビア大学のゴードン教授(*1)や、CFA協会(*2)、米国最大の年金基金であるカルパース(*3)などの権威筋についても、株主が自らの意見を反映させる可能性が高められるとして同制度を推奨している。現在民主党政権下において、公開会社法の制定が進められているが、本来あるべき労働者利益と株主利益を一体化していくことも、累積投票の存在によって、より可能になる。累積投票は株主民主主義を健全に機能させるために非常に有効な方式であるので、同方式を排除する当社の定款規定は排除するべきである。

*1 Geffrey N. Gordon, "Institutions as Relational Investors: A New Look at
Cumulative Voting, 94 Colum. L. Rev. 124-192 (1995).
*2 CFA協会「上場企業のコーポレートガバナンス 投資家のためのマニュアル」p.36-37(2005年)
(http://www.cfaj.org/publications/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%89%88%EF%BC%89forEthics%20class%20at%20Waseda.pdfを参照)
*3 カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)「説明責任のあるコーポレートガバナンス(企業統治)国際原則」20頁(最終改訂2008年4月21日)
(http://www.calpers-governance.org/docs-sof/marketinitiatives/japanese-global-principles.pdf参照)

2010年4月13日火曜日

社外取締役候補の略歴その1:Cardinal Warde博士(マサチューセッツ工科大学電子工学教授)

6月の予定されている、次期HOYA株式会社の株主総会での社外取締役の候補として考えているDr. Cardinal Warde(マサチューセッツ工科大学電子工学科教授)を紹介します。黒人で数少ないMITでの終身教授権を獲得した先生です。


Dr. Cardinal Warde joined the faculty of the Department of Electrical Engineering and Computer Science at the Massachusetts Institute of Technology in 1974, where he is currently Professor of Electrical Engineering. He graduated from the Stevens Institute of Technology (with high honor) in 1969, and received the M.Phil. and Ph.D. degrees in physics in 1971 and 1974, respectively, from Yale University.

.Professor Warde's current research activities are centered on the development of: (1) compact optoelectronic neural network co-processors for brain-like computing, (2) imaging multispectral-polarimetric sensors, (3) light modulators for optical switching and projection displays based on micro-electro-mechanical-systems (MEMS), and (4) high-resolution adaptive wavefront phase compensation systems for imaging and optical communications. He has published over one-hundred-fifty technical papers on optical materials, devices and systems, and he is the holder of twelve patents on spatial light modulators, displays and optical information processing systems.

As an entrepreneur, Dr. Warde founded Optron Systems, Inc. in 1982, and then in 1999 co-founded Radiant Images, Inc. Radiant Images was subsequently acquired by the Hoya Corporation of Japan in 2004. Radiant Images was a manufacturer of transparent liquid-crystal microdisplays for use in display eyeglasses, compact computer projectors and TV monitors, and cellular phones and digital cameras.

   Dr. Warde is a fellow of the Optical Society of America, and an Associate Editor of the Journal of Display Technology. He has spent sabbaticals as a Visiting Professor at the University of California (San Diego), Alabama A & M University, Universidad Carlos III de Madrid, and the Barbados and Trinidad campuses of the University of the West Indies. Previously, he served as a member of the Board of Trustees of Stevens Institute of Technology.

2010年3月27日土曜日

これがギネスブックに載っている32歳眼科医の正体:Baramurali K. Ambati博士(ユタ大学医学部眼科及び視覚科学准教授)

今のHOYA株式会社の社外取締役は「仲良しクラブ化」していて、株主の利益を十分に考慮しているとは言えないと断言できます。私が疑問に思う最大の理由は、ペンタックスの買収資金1500億円があれば、眼科新薬の候補などをその3分の1でも買うことができたのではないかということ。眼内レンズと組み合わせて、北米で会社の市場での地位を急速に上げていくべきです。
そのために、インド生まれでアメリカで育ち、17歳で医学博士を取得した神童で、ギネスブック記録保持者のバラムラリ・クリシュナ・アンバッティ博士(ユタ大学医学部眼科及び視覚科学准教授兼角膜研究部門長)をHOYA株式会社の社外取締役にして、新しい日本の資本市場の流れを作りたいとおもいます。機関投資家、個人投資家を含む、皆様のご助力を、ぜひともお願いします。1兆円市場である加齢黄班変性症の研究分野でも第一人者となっている人です。お兄さんも眼科医の研究者ですが。加齢変性症の薬を他社に先駆けて市場に出せば、北米と世界の眼科市場を席巻できます。眼科は高齢化に伴い急成長している分野なのに、経営陣はどぶに金を捨てるような投資の失敗ばかり繰り返して、何もできていません。今こそ変革を求めるときです。


Dr. Balamurali Krishna Ambati(University of Utah, Associate Professor of Ophthalmology and Visual Sciences & Director of Corneal Research at the University of Utah School of Medicine)

冬のソルトレーク・シティーで私自身が昨年12月に撮影した写真もあります。

2010年3月15日月曜日

「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)」等の公表についてのパブリックコメント

株主提案などの経験も踏まえて、金融庁にパブリックコメントを行いました。
「『企業内容等の開示に関する内閣府令(案)』等の公表について」のパブリックコメント
 2010年3月15日 山中 裕

 日本の企業統治は、経営者が会社を自分の私物のように扱うことが多く、「会社は株主のもの」という日本以外の先進国での常識が全般的に理解されていない。取締役を株主の代理人という受託者責任の明確化は、労働者や地域雇用のために株主利益を犠牲にしてもいいという根拠を与えてしまうと、結果として会社内部の資源の配分を経営者の自己利益のために図ることを認めてしまうことになるから必要である(80年代の北米でも後半に見られた現象)。より多くの富を持つ者の方がより多くのリスクを取りより大きなリターンを得られるという現実があるが、所得分配の問題はベイシック・インカムの導入や、北欧などにある失業者の再教育システムを強化することで対応するべきであり、「会社が株主のもの」という商法上の原則を崩すことは、経営者の広大な裁量権を認めてしまい、今の日本経済がそうであるように、経済全体での非効率を広範に認める結果となる。
 役員報酬については、投資家が役員報酬の妥当性を検証できるようにするために、基本的には役員報酬は額にかかわらず、(社外取締役を含む)取締役と執行役の全額を開示するべきであると考えるが、より重要な論点は、役員報酬を株式の長期保有と経営陣のパフォーマンスに応じた業績連動型を組み合わせ、ストック・オプションは日経平均や産業別のインデックスを用いたインデックス型のオプションを用いるべきである。また開示される報酬以外に実質的に報酬を得ることが、年金やその他のベネフィットを得ることで可能なことにも注意が必要であるし、取締役や執行役の家族がプット・オプションを所有することも、情報開示や禁止をするべきである。株主持ち合いは、非効率な投資であることが多く、議決権行使をゆがめ、結果として株主軽視と経営陣の保護になるので、株式保有目的は明確に開示し、少数株主の責任追及が可能な情報を広くアクセス可能な状況にするべきであるし、議決権行使結果については、臨時報告書において、株主総会における議案ごとの議決権行使の結果(得票数等)を開示することは、投資家が投資を行う際に現状の投資家の投票行動が参考になるので、望ましいことだと考えられる。
 日本の企業統治を改善する方法は、①取締役選任において累積投票を義務化、②株主総会決議の秘密投票の2点が重要である。現在の取締役の選任方法は、ほとんどの上場企業で「取締役の選任は累積投票によらない」という定款上の定めがあるため、49%を保有する株主は、51%の株主が反対票を投じた場合には、一人の取締役を選出することもできない。結果として、少数株主の利益を無視した経営が公然とまかり通る。社外取締役や社外監査役の選任(たとえば民主党公開会社法の試案にある労働者代表の監査役就任の強制)を義務付けたとしても、現状では主に現在の経営陣や取締役側が選任権を実質的に持つのであれば、社外取締役や社外監査役の制度はあまり意味をなさないと思える。取引先や保険会社や株式持ち合いの株主が、現経営陣に反対の票を入れることは、取引中止の恐れなどから難しいので、株主総会決議を秘密投票にすることは、問題のある経営陣を解任する可能性を担保する意味で重要である。累積投票も秘密投票も、カリフォルニア公務員年金基金(CalPERS)などほとんどの機関投資家が推奨している企業統治原則である。
 今回の金融庁の企業内容開示府令案は、不十分な側面もあるが、基本的には投資家保護の観点から妥当な内容が多く、累積投票や秘密投票などの会社法の改正を立法化とセットになれば、日本の資本市場と年金の運用にとっても極めて有意義なものとなる可能性が高いと考えられる。

2010年3月2日火曜日

土井香苗さん夕食会(3月19日)


私の東京大学の一つ上の先輩に当たり、「東京大学の卒業生をはじめとする日本の志を持つ者が、公共的な生き方をするためのロール・モデル(の一つ)を開発して提示した」土井香苗弁護士との東京での夕食会(3月19日午後7時から開始)を、友人に企画させました。写真の左の女性(2010年2月19日衆議院第二議員会館にて撮影)です。NGOセクターの人材を社外取締役にしていくことについても、個人的にご相談に乗ってもらっています。ちなみに右の男性は、私の累積投票の運動の知的バックボーンを支えている溝渕彰先生下関市立大学経済学部)です。以下の会は、たった7000円(学生5000円)で誰でも参加可能ですので、以下のページのリンクから登録されて、ぜひご参加を!

http://d.hatena.ne.jp/polyculture
ポリカルチャーの皆様
寒さが一段と厳しくなって参りましたが、皆さま如何お過ごしでしょうか?
3月のポリカルチャーでは、2月のテーマ「恋愛 amour」とはガラリと変わって、硬派な分野、『人権』に挑みたいと思います。
ゲストには、世界最大の人権団体、国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチの東京ディレクター(日本代表)であり、弁護士でもいらっしゃる土井 香苗氏をお迎えいたします。
ヒューマン・ライツ・ウォッチとは、世界80カ国に250人の優秀な職員を擁する世界最大の人権団体で、その入手する人権侵害情報は、速さ・質・量とも世界最高。
質の高い調査とアドボカシーとを組み合わせて、人権侵害の解決に向けた行動を求める世論と圧力を作り出すことで弾圧する側への政治的圧力をかけ、人権侵害の加害者が負うコストを高めることで事態を改善することを目的としています。また、先進国の政府に国際政策を提言するシンクタンクの機能をも有しています。
(ヒューマン・ライツ・ウォッチについて詳細はコチラ http://www.hrw.org/ja/about
土井氏は東大在学中に史上最年少(当時)で司法試験合格、大学4年次にNGOピースボートのボランティアとしてアフリカで一番新しい独立国エリトリアにて法律作りに従事し広く世界を見聞。
帰国後弁護士として数年間勤務の傍ら難民の法的救済に携わり、その後ニューヨーク大学ロースクール(LLM)に留学。現地にてヒューマン・ライツ・ウォッチのフェローとして活躍の後2007年にヒューマン・ライツ・ウォッチ日本支社を立ち上げて現在は日本代表をなさっております。
その目も眩むような華やかなご経歴からは想像もつかないほどの気さくなお人柄は土井氏にお会いした方々全員に共通の印象です。
その土井氏より、ヒューマン・ライツ・ウォッチのご活動全般のお話から、土井氏が何故ヒューマン・ライツ・ウォッチでのご活動に携わるようになられたのかというプライベートな話まで、じっくりお聞きしたいと思います。
海外での現地政府の目を盗みながらの情報収集活動、外務省には語れない国際政治の内情などなど、ハリウッド映画並みのスリリングなお話もきっと期待できるはず(?)です。
Q&Aセッションでは「ぜひ土井氏に伺いたい!」という個別のご質問も大歓迎ですので、ぜひ皆様奮ってご参加くださいませ!

【土井香苗氏プロフィール】

1975年8月 神奈川県生まれ
1996年に司法試験に合格後、大学4年生の時、NGOピースボートのボランティアとして、アフリカで一番新しい独立国・エリトリアに赴き、1年間、エリトリア法務省で法律作りのお手伝いのボランティア。
その後、1998年東京大学法学部卒。2000年司法研修所終了。
2000年から弁護士。普段の業務の傍ら、日本にいる難民の法的支援や難民認定法の改正のロビーイングやキャンペーンにかかわる。
2006年6月米国ニューヨーク大学ロースクール修士課程終了(国際法)。
2007年、米国ニューヨーク州弁護士。
2006年から、国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー。2007年から日本駐在員。
2008年9月から東京ディレクター(日本代表)。
著書に、「”ようこそ”といえる日本へ」(岩波書店 2005年)、「テキストブック 現代の人権第3版」(日本評論社 2004年)など。
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★日時:  3月19日(金) 18:30集合19:00開始 
      **通常の例会より開始時間が早いのでご注意ください**
★場所:  フレンチビストロ「レシャンソン」
      銀座メルキュールホテル  tel.03-4335-1100(レストラン直通)
      http://mercureginza.jp/ja/restaurantbar
★交通:  メルキュールホテル銀座東京へのアクセス
・東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」11番出口直結(07:00~22:00)
・東京メトロ銀座線・丸の内線「銀座駅」A13番出口より徒歩3分
・東京メトロ日比谷線・都営地下鉄浅草線「東銀座駅」より徒歩3分
・JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」より徒歩7分
      http://mercureginza.jp/ja/images/location_map.pdf
★ゲスト: 土井 香苗(どい かなえ)氏
      国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ 東京ディレクター(日本代表)、
      弁護士
      (http://www.hrw.org/ja/home
★テーマ: 「人権に挑む」
★言語:  スピーチは日本語、Q&Aセッションでは英語での質問も可
★参加費:  7000円 (学生5000円)
★参加申し込み:下記ホームページからお願いします。
        http://www.polyculture.net/login.htm
        パスワード:human
        **3月12日以降のキャンセル、通知なしの欠席の方は不可抗力を除き、
        7000円徴収となりますので、ご注意くださいませ**
★3月幹事:   杉江 真理子、砂金政良

2010年2月23日火曜日

痴漢えん罪と女性専用車両

今日ふと頭にきて、大泉学園駅の駅員室の助役に、痴漢えん罪の温床となっている駅員が被疑者を警察に引き渡す行為について、意見を言いました。
被疑者とされる人物の名前と住所を確認するのを優先し、その場合は原告犯逮捕ができないはずなので、警察に引き渡すな、ということですが。

ところで海外から一時帰国中に、女性専用車両にふと乗り込んでしまったことがあります。ところが今日駅員に問い合わせたところ、「女性専用車両に男性が乗り込むことは違法ではない」という言質を得ました。あくまで協力を求めているものなので、要するに男性が乗っても(法的には)いいものらしいです。

2010年2月21日日曜日

株主総会における秘密投票の重要性

日本の株主総会において、秘密投票はいまだ実施されていません。
とかくと驚かれると思いますが、株主はほかの株主の投票も含めて、議決権行使書面を閲覧請求することができるのです。

相撲協会の理事選挙のケースで秘密投票の効果は周知されたと思います。なるべく早く、株主総会で秘密投票が実現する日を願いつつ。

2010年2月9日火曜日

指名委員会の独立性と事務局に株主がコンタクトできる権利

実は先日、某会社の株主総会事務局に、「あなたの会社の会社の指名委員会の事務局に直接コンタクトをとりたい」と伝えたところ、芳しい即答が得られませんでした。

株主総会事務局というのは、代表執行役の指揮系統にあり、当然ボーナスを決める権限とか、昇進や移動の権限を執行役が持っているわけです。カルパース(CalPERS)等の企業統治原則では、株主は執行役に知られることなく指名委員会のメンバーにコンタクトをとれることが望ましいとされています。

以前から言っているように、株価を上げる方法のもっとも早い処方箋は、国際的な投資家が株を買うようなコーポレート・ガバナンスを、会社法で導入すること。しかしながら、このような現状では、変革に10年かかるかもしれませんね。

2010年1月30日土曜日

日本の資本市場を活性化させる累積投票制度

私の一番の暫定的な提案は、取締役を選ぶための累積投票制度を定款で排除することを、会社法上で禁止するようにしていただきたいということです。実は累積投票を定款で完全排除できるようになったのは昭和49年からの話であり、それ以前は少なくとも大きな株主の請求があれば、株主総会での取締役の選任は累積投票にすることができたのです。 累積投票は少数株主の権利を守ることが可能になりやすい制度ですし、CFA協会(主にファンド・マネージャーの資格を認定している)や、カルパース(CalPERS)などの欧米の大手機関投資家もよいガバナンスの例として推奨している企業投資のための制度です。

「日経平均の株価を上げるのは簡単です、会社法でカルパースが推奨している企業統治の原則を強制してしまえばいいのです。外国人機関投資家が投資をする基準と合わせれば、日本株の人気が上がるので、日本株の値段が上がり、年金の運用の問題も大きく解決しますよ」とお伝えしたら、ほとんどの議員の先生方は理解していただけるのではないかと思いました。

ほかにも多くの問題があります。秘密投票や、執行役を兼ねる役員は1名以内として、その他取締役は社外取締役とすると考えているなど、いくつかの論点があるのですが、今後運動をやっていこうと思います。

取締役会の多様性を確保することが極めて重要なので、経営陣側が選んだ取締役しか取締役会にいないというのは極めて問題があります。HOYAソニーのような取締役会を見ても、社外取締役制度を導入した後に、株価が顕著に伸びたとかいう形跡がありますか?取締役会の多様性を確保するために、累積投票制度を株主の側が選択できる制度にすることが、日本の上場企業の企業統治の向上につながりますし、株価が上がることで、年金の運用も改善できます。

民主党の政策インデックスには、「新公開会社法の制定」というのが入っていますが、これを国民益にかなう形にお願いしたいと考えています。 ①親子上場の禁止、②監査役会に一人の労働組合の代表を入れるというものですが、特に②については、問題があるすぎるのではないか、それよりも累積投票で、取締役会の多様性を確保していくことが望ましいと考えています。 というか、監査役には執行役の選解任権がないので意味がない、労働者の代表の取締役を送り込みたいのならば、労働者持株会で一定の割合の株数を持って、民主的な方法で取締役の選出を目指していけばいいはずだ。 というか、CalPERSは、日本でいえば「日教組年金組合」なんだけれども。

(以下続く)

参考
溝渕彰先生(下関市立大学/ハーバード大学法科大学院)のブログ
「累積投票のススメ」(2010年1月30日)

累積投票の株主向けの価値を実証した論文
Sanjai Bhagat and James A. Brickley 'Cumlative Voting: The Value of Minority Shareholder Voting Rights' Journal of Law and Economics. 339 (1984)