2010年5月24日月曜日

機関投資家及び個人投資家の皆様:HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

社外取締役の見解の多様性を確保し、現在の新規事業の取り組み方を是正するため、以下のお願いをしたいと思います。すでに申し上げたように、直近の10年間で新規事業の構築に全く成果がありませんし、この状況に現在の社外取締役が是正しようとした形跡は見られません。これを変えるためには、過半数の社外取締役の交代しかありません。

機関投資家及び個人投資家の皆様
HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

HOYA株式会社株主 山中裕 及び 溝渕彰

 我々は、以下の3人の候補者(椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏の3名、以下3名の候補者と言います)が社外取締役として再任されることは、HOYA株式会社の企業統治、及びその究極的な目的である株主価値向上にはマイナスであると考えるため、平成22年6月18日に予定されているHOYA株式会社の第72期定時株主総会で賛成票を入れないようお願いしたい。なお小枝至氏、河野栄子氏に関しても問題がないとは判断していないが、過半数の社外取締役を交代させることで取締役会構成が本質的に変更されることを考慮し、以上の特に問題のある候補3人に反対票を集中させるため、あえて再任推奨とすることとした。

 確かに形式上では、HOYA株式会社は委員会設置会社を選択し、過半数の社外取締役の選任を定款で義務づけるなど、企業統治の改善の努力をしているかのように見える。しかしながら、まさに社外取締役制度を導入していることがさかんに宣伝されるようになった直近の10年間で株価は凡庸なパフォーマンスしか残しておらず、また直近の5年間では日経平均をアンダー・パフォームする結果となっている。当社の企業価値が大きく向上して優良企業といわれるようになったのは、70年代から80年代にかけて獲得した、ガラス研磨技術を中心とした基幹技術をもとに、フォトマスク、マスクブランクス、ガラス磁気ディスク基板、眼内レンズなどの開発に成功することができたからであり、過去10年から15年の間には、新規事業の経済合理的な形での開発に成功していない(高値掴みの買収で事業数が増えたのは除く)。新規事業の度重なる失敗と現在の事業開発の問題点は別に詳細を述べているが、執行役が「優良案件を掴むための人脈や情報源を保有しておらずそのための努力も全く行っていないこと、投資を行った後は放置したままであり少なくとも四半期おきに投資先の技術開発の動向や代替技術の動向がどうなっているか、買収提案をするべきかどうかなどの精査な分析を一切行っていないこと」などの新規事業の創出による株主価値の増加の障壁となる問題に、社外取締役がなんら関心ないため、経営状況の変更がまったくされない。これを改善する方法は、当社の取締役の過半数を交代させること以外にあり得ない。特に3名の候補者は、①経営者を監督するのに十分な能力や時間がなく、②株主価値を高めるインセンティブに欠け、③経営者の業務執行に賛成する心理的な傾向があると思われるので取締役候補として不適格と考える。以下理由を述べる。

(1)経営者を監督するのに十分な能力や時間がない 
 椎名武雄氏と茂木友三郎氏、児玉幸治氏は、過去または現在において、多くの公益法人、民間企業、政府委員会などで、社外取締役、社外監査役、委員などの兼任を行っている。例えば、椎名武雄氏は、90年代に米工業ガスのエアープロダクト、米電子メーカーのAMPの社外取締役に就任後、商船三井、明治製菓、東京スター銀行などの社外取締役に次々と就任し、2001年の時点で8社もの兼任を行っていた。また茂木友三郎氏は、現在キッコーマンのCEOを兼務しながら、明治安田生命保険と当社の社外取締役、フジ・メディア・ホールディングと東武鉄道の社外監査役、さらに行政刷新会議の議員を兼任し、本年3月の時点で文部科学省と外務省が所管するユネスコ・アジア文化センターや農林水産省所管の食品産業センターなど国から補助金が支出されている法人のポストを含む18にも及ぶ公益法人の理事長などのポストを兼任していることが報道されている。このような兼任数が多い状況では、HOYA株式会社の社外取締役として経営陣を監督するために必要な情報を入手し、分析するのに十分な時間があるとは言えないと考えられる。

(2)株主価値を高めるインセンティブに欠けている。
 児玉幸治氏は、いわゆる天下り・渡り官僚であり、経営の経験もなく企業統治の専門家でもないため、そもそも会社経営を行う能力や経営を監督する能力が本質的に欠けていると考えられる。もし児玉氏がHOYA株式会社の社外取締役としての適格性があるのであれば、「具体的に」どのような役割が期待されているのかを明らかにすべきである。提案者はペンタックスの買収が問題となっていた2007年5月ころに当時のすべての社外取締役に「この買収価格は妥当ではなく、今すぐ買収を中止するべきである」との内容の書簡を送ったが、それらはすべて無視された結果として現在のような状況になっている。また同年6月に児玉幸治氏と面会したところ、「ペンタックスの従業員の過半数がHOYAとの統合に賛成」ということを、取締役として買収に賛成した根拠として述べた。また児玉氏は、財団法人旭硝子財団理事や旭化成の社外取締役を兼任しているが、当社と旭硝子あるいは当社と旭化成の間には事業上の重大な競合関係(フラットパネルのガラス基盤、あるいは眼科製品において)が存在するため、利益相反の関係が自然と疑われると言わざるをえないが、当人はこれら問題に自覚がないようである。

 別法人の理事長を兼任していると、株主ではなく別法人の利益を図る可能性がある。茂木氏の公益法人との兼任の問題はすでに時間の問題で指摘したが、旧通商産業省事務次官の児玉幸治氏は「機械システム振興財団」という公益法人の会長を務めているが、いわいる天下り官僚の上がりポストである。日本社会では、公益法人に、官僚組織がその裁量権による圧力をかけ、民間企業から会費を集めることがあり、児玉氏は経済産業省出身者として、このような会費の徴収に熱心となる可能性がある。HOYAの取締役会は経済産業省からの圧力を受け、取引を承認するかもしれない。また取引のボリュームが小さければ、児玉幸治氏の意向を受けてCEOの判断で会費の支出が行われることもあるだろうが、これら支出の開示はなされていないため、株主には知るところではない。このような場合、児玉氏はHOYAの株主の利益よりも取引先である公益法人の利益を図っていると疑わせるに十分であるし、このような可能性が推測されることだけでも、企業統治上の欠陥があると言わざるを得ない。

 また社外取締役が株主価値を高めるインセンティブを強化するため自社株を保有すべきことは極めて重要であるが、現在の社外取締役は、基本的に自社株を時価ベースで1000万円以下しか保有しておらず、株主価値を高める強い経済的なインセンティブを持っていない(社外取締役の報酬は推定年間1100万円程度)。例えば、取締役の椎名武雄氏は過去15年で推定でも最低1億5000万円の報酬を受け取っているが、1000万円以下の時価総額の同社株しか保有していない。児玉氏の所有する株式数は、前年株主総会の参考資料によると1000株(時価200万円と報酬の五分の一程度)にすぎない。椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏らにとって、株価が上昇することの経済的メリットよりも、現経営陣やほかの取締役とうまくやって、再任を狙うことの方が当人たちの経済的利益に合致していると判断できる。

(3)取締役間の見解の対立を回避し、いわいる「仲良しクラブ」的取締役会を形成し、経営者を無条件に支持する心理的な傾向が高い。
 HOYA株式会社の指名委員会は執行役及び取締役候補者を選定する権限を持つが、一般には指名委員会はCEOの意向に配慮して候補者を選定することが一般的である。例えば塙義一氏の後任に同じ日産自動車の小枝至氏が社外取締役に選任されているが、これはCEOが塙氏に依頼したか、依頼することをCEOが了承することを前提に指名委員会が決定したものと思われる。前任の取締役が出身会社の上司筋であることは、以前の判断に異議を唱えることが難しくなる。そのような候補者だからこそ指名委員会は敢えて選任したと推測できる。外国人や女性、あるいは引退した経営者以外の職業的背景を持った社外取締役候補を(場合によってはサーチ会社等を用いて)探すことを行っていないとみられる。外国人や引退した経営者以外の職業的な背景を持つ社外取締役候補の指名を事実上行っていない事実は、椎名武雄氏や茂木友三郎氏らの現任取締役が取締役会に多様な意見が反映されることに対して、心理的に抵抗していることを示唆する。このような判断は、椎名武雄氏ら当時の指名委員会の構成メンバーに責任があると言える。また現在の社外取締役は、過半数3名が本総会時点で満75歳を越え、他の2人も年齢が60代であるなど老齢化しているため、一部の世代の共通感覚が取締役会を支配することとなる。

 また指名委員会は現任執行役である萩原太郎氏を再度技術担当の執行役候補者にすることを予定している。そもそも荻原太郎氏が前年に日産自動車から当社へ転籍したこと自体も、塙氏による強い推薦があったと思われる。萩原太郎氏は日産自動車で傍流になった燃料電池部門の開発責任者であり、開発に特に成功した実績も確認できる客観的な根拠がない。また当社はガラスを中心とする材料科学メーカーであるため、機械系の教育を受けた荻原氏は適性が疑わしい。日産自動車と当社執行役の人間関係により、社外取締役の出身会社で不必要になった人材を、社外取締役に就任している会社に押し付けるような行為だと疑う余地すらある。

 さらに椎名武雄氏は、株主向けの開示資料によれば、2003年まで社外取締役の報酬とは別に、自身が所有し代表取締役を務めるコンサルティング会社が毎年数100万円のコンサルティング料を受領していた。この事実は社外取締役としての独立性を欠くことを意味する。また椎名氏はHOYA株式会社の社外取締役を15年、茂木氏は9年間の再任期間を経て務めているが、ロンドン証券取引所の証券規則では9年を越える再任期間を持つ取締役は、独立とはみなされない。このように在任期間が長いと一般的に経営陣や他の取締役と個人的な関係を形成することが多い。椎名氏や茂木氏は、最終的には経営陣を支持する心理的な傾向が強くある。実際に通常誰の目から見ても非合理な買収であるペンタックス社の公開買い付けや、新規事業に取り組むにあたる問題について、これらの取締役が意見を述べ、本質的な改善を執行役に要求した事実は、間接的にも全く確認できない。提案者から見れば、株主価値創出の課題は新規事業の失敗という意味で明確であるが、椎名氏らの取締役にとっては、それら課題は問題意識に入っていないと思われる。

 以上の点を考慮し、企業価値の向上への障害となる椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏、3名の取締役候補(推定)について賛成票を入れないことを呼びかけることとしたい。

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