2008年4月29日火曜日

HOYAの2007年度営業利益が前年度比11.3%減の発表について

以下のニュースについて、私からもコメントしたいと考えています。今週中にこのページを更新したいと考えていますので、宜しくお願いします。

「HOYAが反落、前期連結営業利益は11.3%減」の記事
http://www.excite.co.jp/News/economy/20080428163900/kabu_20080428100597.html
http://money.jp.msn.com/investor/stock/news/newsarticle.aspx?ac=K20080428031&cc=12&nt=01

HOYA<7741.t>が反落。午後1時に発表した前08年3月期連結決算を受け、株価は一時220円安の2725円まで売られた。 前期決算は営業利益で前々期比11.3%減の950億4600万円と2ケタ減益を計上した。四半期ベースで見た営業利益率は第2四半期(07年7~9月)の26.6%から第4四半期(08年1~3月)には13.3%へと急低下(前期通年では19.7%)しており、嫌気されている。要因は半導体用フォトマスクやHDD用ガラスディスク、光学レンズなどを手掛けるエレクトロオプティクス部門の低迷。一部の主要製品の価格低下や新製品への対応の遅れなどが影響したという。

なお3ヶ月前時点(2008年1月28日)の会社予想は、1011億円とされていました。
HOYA<7741.t>、08年3月期営業利益は1011億円を予想=市場予測は1105億円
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK007818620080128

HOYA株式会社のホームページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/index.cfm

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoya_08.html

HOYAのCOOに浜田宏氏就任
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoyacoo.html

HOYA株式会社最高執行役に浜田宏氏就任のニュースリリース
http://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-578-pdf.pdf

HOYA株式会社R&Dのページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_06.cfm

HOYA株式会社の経営理念のページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_03.cfm

2008年4月28日月曜日

牧野洋氏(経済ジャーナリスト)がビデオニュースに登場

もともと私が注目していた経済ジャーナリストである、牧野洋氏が、神保哲夫・宮台真司のビデオニュース・ドットコムに出演しています。
http://www.videonews.com/on-demand/361370/001297.php

「不思議の国のM&A―世界の常識日本の非常識」(牧野洋氏)という著書も出していて、実は結構お勧めだったりします。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532352738/videonewscom-22
「「値段がないまま企業を買う」「わざと損をして持ち株を売る」。そんな摩訶不思議がまかり通る日本のM&A」(上リンクに引用されている、内容(「MARC」データベース)より)について、私もかねてより違和感を持っています。HOYAとペンタックスの買収も、「価格を議論せずに抽象論だけでM&Aを合意するケース」として、槍玉に挙げられています。

しかしながら、なぜこのようなまっとう内容が、日経新聞にのることがなかなかないのでしょうか。

社会学者:宮台真司氏(首都大学東京)のホームページ
http://www.miyadai.com/

宮台真司氏の記事(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%8F%B0%E7%9C%9F%E5%8F%B8

ビデオジャーナリスト神保哲夫氏のブログ
http://www.jimbo.tv/

神保哲夫氏の記事(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E4%BF%9D%E5%93%B2%E7%94%9F

牧野洋氏と神保哲夫氏の出身校:コロンビア大学のホームページ
http://www.columbia.edu/

牧野洋氏と神保哲夫氏の出身学部:ジャーナリズム大学院のホームページ
http://www.journalism.columbia.edu

2008年4月27日日曜日

鈴木洋氏(HOYA代表執行役最高経営責任者CEO)は、株主総会で株主の質問に時間制限無しで答えよ

私は何も鈴木洋氏が、「箔付けのために行った留学先の大学を、成績不良で中退したから、即経営者失格だ」とか、「シリコンバレーでの投資活動で多額の損害を会社に与えたから、経営者として不適格だ」とか、「日本の同じ規模の会社の世襲で経営者になっている人(例えばエーザイ内藤晴夫社長イオンの岡田元也社長トヨタ自動車豊田章男副社長)と比べても、平均的な学力水準を持ち合わせていない」、などということを、ここであえて、問題にしようとは思いません。またもちろん丹治宏彰氏は、技術担当者として不適格だと思いますが、それは別項で記述します。ただし、私は確信を持って言えますが、このような経営が続くと、株主に多大な損害が与えられ続けることは確実だと思われます。現にペンタックスも、既に散々な結果になっています。私の2008年1月3日時点での見解については、まず以下のページをご参考にしてください。

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoya_08.html

以下の文章も、ご参考にしてください。

HOYAのCOOに浜田宏氏就任についての私の文章(2008年4月12日)
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoyacoo.html

2005年秋の株主分割4分割を経て、多くの方がHOYA株式会社の個人株主になられたと思います。去年(2007年)の6月19日の株主総会に参加された多くの方は、株主総会の議事進行、鈴木洋氏(HOYA代表執行役最高経営者CEO)の対応に、失望されたのではないでしょうか。

比較して、年間1回だけ行われる、Berkshire Hathawayの株主総会では、CEOであるWarren E. Baffet氏が、時間制限無しで、個人株主を含む多くの株主の質問に答えます。経営陣は株主から経営を委託された存在ですから、それは当たり前のことと受け取られているのです。

Berkshire Hathaway社のホームページ
http://www.berkshirehathaway.com/

Warren E. Buffet氏のメッセージ
http://www.berkshirehathaway.com/message.html

別に株主総会で個人株主の質問に時間をかけ、誠実に答えるのは、Berkshire Hathaway社だけではなく、北米の株式公開企業においては、どこの会社でも基本的には同じことです。

「ヤフー、年次株主総会を開催--業績低迷で株主から非難」の記事
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20350723,00.htm

ヤフー社ホームページ
http://www.yahoo.com/

はたしてこの会社(HOYA株式会社)の取締役会では、株主価値の増加に関して、まともな議論がおこなわれているのか、多くの個人株主の方が疑問を持ったのではないでしょうか。個人株主が質問をしようと手を上げているのに、3人程度の質問に短く答えるのみで、一方的に打ち切って1時間少しで株主総会を打ち切ろうとする態度には、株主利益最優先を掲げている企業として、多くの方が疑問に思ったに違いありません。

なぜ個人株主の質問に、時間をかけて、もっと真摯に答えていかないのでしょうか。勤務先を休んで参加しているサラリーマンや、財産の無視できない比重の株式運用先として選んでいる主婦や、老後としてリタイアされた方から、貴重なお金を預かっているという認識と責任感が、足りないのではないでしょうか。 個人投資家の質問に答えることだって、そのやり取りから学べることはあるだろうし、コミュニケーションとは元来そういうものなのではないでしょうか。

(そもそも戦略というものがないのかもしれませんが、)自分の経営戦略の論理的欠陥が、議論から分かるかもしれないではないですか。 キャピタル・リサーチ(Capital Research)やフィデリティ(Fidelity)といった大口の機関投資家にも、一方的に質問を打ち切るような、個人投資家に対してと同じような対応をとっているのでしょうか。そうでなければ、個人株主軽視といわざるを得ませんし、個人株主向けのIR戦略としても、宜しくないでしょう。

私が知る限り、HOYAの役員会でも、株主総会同様の表面的なやり取りで終始し、株主価値にとって本当に本質的であるはずの経営戦略に関する議論は行われないまま、新規事業のあり方など私が提起していたことを含む、重要な問題は放置され続けています。その結果として、2年間で40%の株価下落という結果を招いた経営陣は、何らかの責任を感じなければいけないでしょう。

すでに述べたように、ペンタックス合併以前の問題に、HOYAの現経営陣は、株主価値を効果的に増やすための投資銀行の使い方がわかっていない、きちんとしたディシプリンなしに、アメリカのスタート・アップ企業に投資をしては、破産させているなど、経営能力に疑問を抱かざるを得ない状況が放置されています。これは放置していること自体が、全取締役の責任でもあります。

もし、今年も去年同様の株主総会の議事進行でお茶を濁す気なのならば、新事業が必要なHOYAの経営者として失格だとといわざるを得ません。

HOYA株式会社のホームページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/index.cfm

HOYA株式会社(ウィキペディア記事)
http://ja.wikipedia.org/wiki/HOYA

日経ビジネス記事(2007年5月28日):HOYA、TOB合意後の「試練」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070524/125459/

Nikkei BP Net 記事(2007年8月8日):HOYA、TOB成立は単なる一里塚
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q3/541954/

HOYA株式会社の会社概要のページ
http://www.hoya.co.jp/HOYA_DYNAMIC/index.cfm?fuseaction=company.about

ペンタックスのページ
http://www.pentax.jp/japan/index.php

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoya_08.html

HOYAのCOOに浜田宏氏就任
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoyacoo.html

HOYA株式会社最高執行役に浜田宏氏就任のニュースリリース
http://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-578-pdf.pdf

HOYA株式会社R&Dのページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_06.cfm

HOYA株式会社の経営理念のページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_03.cfm

キャピタル・グループのホームページ
http://www.capgroup.com/

フィデリティのホームページ
https://www.fidelity.com/

2008年4月26日土曜日

活躍するインド系アメリカ人(2)

若くして成功した投資家という一例では、ディナカール・シン(Dinakar Singh)氏が有名です。

1990年に名門エール大学(コネチカット州ニューヘブン市にあるブッシュ大統領の出身校)で電子工学を専攻して卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社し、プロップ・デスク(会社の自己勘定でトレーディングを行う部署)で大活躍し、20代後半の若さで、同社歴史史上の最年少で同社のマネージング・ダイレクターになる。現在は、テキサス・パシフィック・グループ(TPG)と共同で設立した投資会社の責任者を務めているとのことですが、別の意味で一定の知名度があるのが、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)に罹ってしまった娘さんのためにも、同じく金融界で活躍していた奥さんともども、この病気の治療法を研究するための慈善活動に熱心だということ。 

例えば、コロンビア大学の医学部のサイトを検索していると、シン氏の以下のような情報もでてきます。
http://ps.cpmc.columbia.edu/annual/report06/development.html

エール大学のサイト
http://www.yale.edu/

ゴールドマン・サックス証券のサイト
http://www2.goldmansachs.com/

医学研究に個人資産を寄付するというのは、北米では良くあることですし、実にロックフェラーからの伝統ともいえますが、その一翼をアジア系のアメリカ人が担っているわけです。

2008年4月24日木曜日

ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局

私が毎週視聴しているインターネット番組のページ。海外で日本のニュースの核心を知るには、非常にお勧めです。1ヶ月525円程度で、これだけ解説を得られるのは大変ありがたいと思っています。

http://www.videonews.com/

以下のように、うたわれています。
http://www.videonews.com/explanation.php
「報道本来の役割を全うするためには、広告に依存しない収益構造が必要となるが、そのためには、多くの視聴者の方々に浅く広くサポートしていただくシステムを作る必要がある」との認識に基づき、ビデオニュース・ドットコムは2001年より有料会員制を採用。一部のプレミアムコンテンツをご視聴いただくためには、1ヶ月525円(税込み)の会員登録が必要となります。視聴者の方々に毎月の会費をご負担いただくことで、スポンサー圧力を受けない良質な報道を目指します。

私が10年以上も前に、大学で宮台真司氏の授業を受けていた頃には、彼はまだ現在のように社会活動を広範には行っていませんでした。これからも、がんばってもらいたいと思います。

社会学者:宮台真司氏(首都大学東京)のホームページ
http://www.miyadai.com/

宮台真司氏の記事(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%8F%B0%E7%9C%9F%E5%8F%B8

ビデオジャーナリスト神保哲夫氏のブログ
http://www.jimbo.tv/

神保哲夫氏の記事(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E4%BF%9D%E5%93%B2%E7%94%9F

2008年4月14日月曜日

HOYA株主の失われた8年

2000年6月に私の従兄弟でもある、鈴木洋氏が最高経営者(CEO)になったときの株価が2375円。そして今現在で、2008年4月の株価は、高値2815円から安値2400円の間で取引されています。つまるところ、長期保有をする投資家に対して、8年間の間に、鈴木氏はほとんど企業価値を増やせなかったわけです。本当に残念なことですが、事実は事実として受け入れるべきでしょう。決して、変な言い訳をしないように。

ペンタックス買収がHOYAの成長戦略として、すべてにおいて疑問であることもあるが、結局のところ、特に2000年以降の間に、企業の価値を真の意味で上げるR&Dや設備投資を行ってこなかったことが、その原因に尽きます。

日経新聞が何を血迷ったか、「成長企業の軌跡(2)HOYA(株価上昇率8位)(ブラックマンデー20年) 」などという記事を去年の10月ころに書いていましたが、ここ2年間の間で株価がほぼ半分になってしまったことで、2000年以降の株価の上昇率は、日本企業の月並みなものになってしまいました。もう一度言っておきますが、HOYAが90年代に優良企業になれたのは、70年代から80年代に、ガラス研磨技術をプラットフォームにした事業開発を行って、差別性のある製品を世に出し、そこに重点投資をしたからです。鈴木洋氏は本社の経営者になった2000年以降、まったく新規事業の開発を誠実に行いませんでした。

2000年以降も、途中までは経常利益は伸びていましたが、そのこと自体は2000年以前の経営判断の結果で、2000年6月の時点で株価に予想され、すでに反映されているものだったことも、ここで確認しておく必要があります。鈴木氏は記事上で、以下のようにコメントしています。「バブル崩壊時の経営陣が、そこから始まる長期の経済低迷、いわば“失われた十年”を予見していた」。自分の責任である「HOYA株主にとっての失われた8年」を、次期株主総会できちんと誠実に総括し、株主の質問に長時間をかけてでも、誠実に答えてほしいと思います。

2008年4月12日土曜日

私が問題にしている記事

以下について、鈴木氏が90年代後半に主導した投資活動は、すべて破産に終わって、株主価値に損害を与えた。2000年代に入っても、前述のExponent Photonics社や、Radiant Images社の投資など、全く成果を挙げていない。それにも関わらず、このような記述を世間に垂れ流している事自体が、株主に対する背信ではないか。

すでに別のところで詳しく述べたように、HOYAが高収益企業になったのは、フォトマスクしかり、マスクブランクしかり、ガラス磁気ディスク基盤事業しかりで、80年代までの技術開発の成功に負っているからであって、ベンチャー投資や社外取締役制度は、そのこととはまったく関係ない。

編集長インタビュー  HOYA社長●鈴木 洋( 2003/10/18 ) 
interviewer●辻広雅文(本誌編集長) 
http://www.arukikata.ne.jp/daigaku-net/news_152.html

――米国の社長時代、ベンチャーへ積極投資しましたね。
鈴木 ためになったのは、ベンチャーキャピタルやコンサルタントと一緒に取締役としてベンチャー経営にかかわったことです。それまでの仕事は、HOYAという枠組みの一部にすぎなかった。しかし、ベンチャーは野原にポツンといるのに似て、どこへでも動ける。選択の幅がすごくある。業態転換、撤退、大リストラ、合併、なんでもあり。でありながら、5年先のビジョンはある。非常に異質なおもしろい経験でした。

HOYAのCOOに浜田宏氏就任

表題の件については、すでにいくつかのメディアで報道されています(例えば以下のリンク)が、私からもコメントしたいと思います。

HOYA:COOにリヴァンプの浜田宏氏
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080404k0000m020038000c.html

すでに別のところで述べているように、私はHOYAの最高経営者としては、実績ある専門経営者を雇うべきだと考えていたので、浜田氏が最高執行責任者に就任することは、ほとんど私の理想に近い人事。なお私は従来より、樋口泰行氏(前ダイエー代表取締役、現マイクロソフト日本法人代表執行役最高執行責任者)や、藤森義明氏(GE本社上席副社長)などの名前を具体的にあげて、専門経営者の採用を主張してきた。ただし、HOYAの株主価値が8年間の間に、一向に上昇しない理由は、新規事業への正しい投資がここ8年間にわたって、まったく行われていないことに集約されるため、仮に浜田氏が有能な実務家だったとしても、この点が改善されなければ、本質的な問題の解決にはならないことを、株主は理解しておく必要がある。また浜田氏自身がおそらく認識しているように、本人はもともと理系のバックグラウンドを持った経営者ではないので、それを補完する人材が必要。

数年前の株主向け資料に、ベンチャー投資と社内の技術開発を「両輪」として、新規事業の創出に取りくむ旨が、鈴木氏の署名入りで、記述されている。ならば、90年代終わりころからのベンチャー投資がすべて破産に終わっていることの現状と、抜本的な解決案を、鈴木洋氏はきちんと誠実に、株主に説明してほしい。失敗することが悪いのではなく、失敗するようなアプローチを、反省もなく放置していることと、まったくうまくいっていない投資をあたかも先端的なことをやっているように、週刊誌の対談でしゃべっていることは、株主に対する背信行為。 この時期から、新規事業の創出に成功していないから、HOYAの株価は2年で半分になってしまった。
http://www.arukikata.ne.jp/daigaku-net/news_152.html

また技術担当者の丹治宏彰氏は、ここ8年にわたってなんら新規事業の創出における実績を示せなかったし、投資案件もすべて失敗に終わっているので、本人のためにも、なるべく早く交代させるべき。2006年1月13日に発表している出資先であるエクスポーントフォトニクス社(Xponent Photonics)は破産した上で、HOYAが二束三文の知的所有権を買い取った結果に終わった模様(以下のリンクを参考)だし、2004年に買収したRadiant Images社も、日本の同業の会社に特許等の権利を安値で売却して終わりにした。新規事業や投資のセンスがない人が、その担当についているのは、すでにいままでの8年間で明らかなように、株主にとっては不幸なことです。

Xponent社のサイト
http://www.xponentinc.com/index.htm

Radiant Images社創業者のCardinal Warde教授の情報(文中に、“It's no wonder his company, Radiant Images, responsible for the management of the liquid crystal display (LCD) in micro displays that made the 3D images possible, was bought by a Japanese company, Hoya Corporation.”とあります。)
http://www.nationnews.com/story/291203758602647.php

下のリンクを参照。「「GE-PON」用光トランシーバの初年度の売上を6億円と見込んでおります」と書いていますが、2007年までにいくら売り上げがあったか、株主に説明してほしい。Radiant Images社の件も同様。鈴木氏は口先ではなく、本当に反省することから始めなくてはならない。
http://www.hoya.co.jp/CACHE/japanese/news_content_newsobj297.cfm

他にも、例えば以下のニュース(2002年5月発表の、HOYA、SiC其板の開発、製造子会社を設立について)でも、2002年における「半導体素子材料であるSiC基板の開発・製造・販売を行う子会社『HOYA アドバンスト セミコンダクタ テクノロジーズ』」の設立について、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とありますが、6年たっても何の成果もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことから、明らかです。

HOYA、SiC其板の開発、製造子会社を設立(2002年5月28日)
http://www.edresearch.co.jp/mtb/0205/111.html

HOYAの事業領域は、ガラス等の材料科学と、眼科を中心とした医療領域の2つの異なる領域があるので、無機材料の専門家で半導体製造装置を扱っている人間に、眼科の新しい治療法のことはわかるはずがない。少なくとも技術開発に関して限定して、材料科学を担当する責任者と、眼科領域を担当する責任者の、別々の2名に担当させるべき。

また以前から言っているように、ペンタックス社の買収はHOYA株主の価値を毀損したので、反省してきちんとその事実を認めること。2011年3月にのれん代を除く営業利益率を18%にすることを目指すといっているが、できないことを株主に示すこと自体が、失礼な話ではないか。

HOYA株式会社のホームページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/index.cfm

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoya_08.html

HOYA株式会社最高執行役に浜田宏氏就任のニュースリリースhttp://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-578-pdf.pdf

HOYA株式会社R&Dのページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_06.cfm

HOYA株式会社の経営理念のページhttp://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_03.cfm

2008年4月8日火曜日

会社にとっての経営者の重要性

私の観察してきた客観的な事実からも、会社が伸びるかどうかは経営者の能力、資質と人間性に大きく依存します。ほとんどそれだけといってもいいと思います。だから経営者は重要なのです。
経営者が無能だと、会社は伸びることはないか、某ガラス会社のように、たまたま会社の事業基盤のファンダメンタルズが良くて業績が短期的に伸びていても、中長期で大きく成長することは、まずないでしょう。

たとえば、1970年当時、同じような光学機器を製造開発するメーカーだった、キャノンの売り上げは350億円程度、ペンタックスが150億円程度だったと記憶します。35年たってそれがどのような差を生んだかということです。1989年の富士フィルムとキャノンの時価総額を、ほぼ20年たった後の時価総額と比較しても同じことが言えます。

多くの日本の企業が、なんら株主価値の創出を行えていない間に、海外では、大きく株式発行時価総額や株価を上げている会社がいくつもあります。一刻も早く、日本でも有能な経営者が活躍して、資本主義の優れたところを活かせる社会になることを、個人的には望んでいます。

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)

以前の文章を転載しておきます。なお誤字脱字等を若干訂正しました。

HOYAの経営課題と事実関係について
2008年1月3日 山中 裕

◆概略

 去年(2007年)の6月ころから、私がHOYAの経営の問題についてどのように考えるか、多くの方からご質問を受けましたが、時間的な制約もあり、すべてのお答えに対応できる余裕がなく、しかしながら、現在HOYAは経営上の曲がり角にあることは明らかで、またなぜHOYAがこのような高収益企業になったか、そして現在どのような問題を抱えているかという点について、HOYAという会社を誤解している方が、機関投資家、個人株主やマスコミ関係者の皆様でさえほとんどだと思いますので、問題意識を広く共有認識していただいて、前向きな議論を誘発することは意義のあることだと考えます。したがって、以下で私の考え方をご説明することにします。

(1) 私の問題提起について

 まず最初に、私の問題提起がどのようなところにあるかを説明します。端的には、現HOYA経営陣が2005年を基準とした場合に、今後10年間で株主価値を大きく伸ばすような経営を行えているかという点です。共に画像処理をメインの事業にしてきた富士フィルムとキャノン。1989年12月時点でのキャノンの時価総額は1兆3000億円、富士フィルムの時価総額は、1兆9000億円でしたが、現在キャノンの時価総額は8兆円強、富士フィルムの時価総額は2兆円あまりにすぎず、3倍以上の差がついてしまっています(この例は、岩崎日出俊氏の『投資銀行日本に大変化が起こる』(PHP研究所)25ページを参考にしました。この本はすばらしい本ですので、興味のある方はお読みになることをお薦めします。以下では、いくつかの例を岩崎氏の著書から引用します)。

 HOYAは確かに1990年から2005年までの株価成長率は年間15%を超えていましたが、ここ直近2年間の上昇率は日経平均すら下回っています。現在のHOYAの時価総額は約1兆5000億円ですが、2015年や2020年までに、1989年から2005年までの富士フィルムとキャノンのどちらのシナリオになるかといえば、キャノンのように業績が伸びるとは資本市場で評価されておらず、その結果として、HOYAが大スポンサーの日本経済新聞からさえも、「最近二年間の株価の伸び悩みを見ると、投資家の成長期待に十分応えているとは言い難い面もある」と言及されるにいたっています。

 なぜこのような資本市場の評価を受けるにいたったかというと、①現在の主力事業の将来性が明るくない。成長性が低く、長期的に減益の可能性すら強い、②新規事業の創出実績がなく、その見通しもない、という2点に集約されます。①については、以下で詳しく述べますが、まず稼ぎ頭のHDD用のガラス磁気ディスク事業の市場が、フラッシュメモリーという代替品に5年以内に取って代わられる可能性が強いこと、第二にフォトマスク事業の競争環境が趨勢的に悪化しており、成長が見込めないこと、それらを補う事業ポートフォリオ転換を実現できていないことが原因です。②については、現在のHOYAの主力事業は、70年代に獲得したガラス研磨技術の応用であり、すべてが80年代後半までに創出されたもので、いくつかの理由により90年代以降は新規事業の創出実績がないこと、特に余剰資金の再投資先が明らかな課題とされた2000年代以降に経営陣による成果がまったくないことが理由になります。株価は短期では市場での需要や思惑によって上下しますが、中長期的には会社の株主価値をある程度正確に反映するものですから、ここ2年の株価の伸び悩みは、重要な課題を経営陣に提起しているといえます。1990年までに新規事業を創出し、90年代に成長事業に重点投資をしたHOYAの株価は、仮に日経平均の動きに関わらず、2005年までの15年間に高いパフォーマンスを創出しましたが、今のHOYAの経営では、これから10年で同様なパフォーマンスを生み出せるでしょうか。

 IBMのガースナー前会長は、ハードからソフトへの事業転換を、投資銀行を使いこなして年間平均10件近くのM&Aを行い、ロータスやチボリなどの数多くの優良ソフトウェア会社を次々に買収して、在任中に株主価値を10倍、時価総額15兆円に高めました(岩崎氏著書39ページより)。HOYAにとっては70年代に獲得したガラス研磨技術は現在の事業を作り上げたコアとなる技術ですが、もうこの技術に頼ってはいられません。事業構造を転換し、再び株主価値を大きく創出するような経営を行わなければいけないのに、5年近く課題が放置されているのが実情です。

(2) HOYAが高収益企業になったからくりについて

 どのようにしてHOYAはROAが一部上場企業でトップ級の高収益企業になったかについて、ほとんどの皆さんは誤解しています。HOYAは社外取締役が過半数を占めるなど、いくつかの点で特長のある点がありますが、決して「社外役員が過半数だから」「ガバナンスが先端的だから」「CEOが若いから」「財務が優れているから」、高収益企業になったわけではないのです。高収益企業になった最大の秘密(からくり)は、1970年代に非常に差別性があり、つまりほかの会社が参入しようとしても容易ではない、かつ市場での応用性がある(つまり現在の事業を作り上げることのプラットフォームとなる)ガラス研磨技術を、偶然と幸運もあり、獲得できた点にあります。関連して、現在の事業は実ににすべて、80年代までに作られたものであり、90年代以降には、実効性のある形で、買収にせよ、社内のR&Dにせよ、新規事業の創出に成功したことはないという事情もあります。

 主力事業のうち、ガラス磁気ディスク基板事業、フォトマスク事業、ブランクス事業の稼ぎ頭トップ3はいずれも、ガラス研磨技術の応用商品であり、この3事業で現在収益の7,8割稼いでいます。HOYAの創業事業はクリスタル事業、2番目がめがねレンズ事業です。90年代に当時の主力事業であるめがねレンズ事業から発生するキャッシュを、80年代までに獲得したガラス研磨技術に基づいて、新規事業開発がなされていたオプトエレクトロニクス事業に果敢に再投資し、大きく育て上げたから、現在のHOYAがあります。ナノレベルのガラス研磨という技術は、30年近い社内でのノウハウ等の蓄積があり、他社にはまねが簡単にはできず、したがってその商品は市場シェアが必然的に高いので高い収益をあげられ、しかも一旦確立した優位性を維持するための技術開発への再投資がさほど必要ないという特性があるので高い資本効率が実現しているにすぎません。このような技術特性を持つ応用商品の市場が、半導体産業の発展と平行して規模が拡大していったから、私の祖父兄弟が知多半島から出てきてはじめた保谷市(現在の西東京市)の片田舎のガラス工場が、経常利益1000億円以上の会社になったのです。従って、他の会社でも社外役員を過半数にしたり、CEOを若くしたり、財務を革新的にしたら、ROAが20%を超える数百億円の利益を生む事業部をいくつか作れるかというと、それは違います。一般に、企業経営は「きちんとした理論的なバックボーンと、それに基づく戦略のもとに、M&Aや資金調達、設備投資を展開していけば、企業価値は向上していく」(岩崎氏著書208ページ)ものですが、HOYAの場合は、幸運の結果もあって30年以上前に獲得したガラス研磨技術の応用を軸に、適切な事業選択と再投資がされていったから大きく成長することができたのです。

 逆に言うと、社外役員が過半数でも、CEOが若くても、財務が革新的でも、必要な設備投資がされなかったり、有望な(内部外部を問わず)事業機会に投資がされなかったり、割高な企業買収を行ったり、本業とは関係がなく優位性のない事業にお金を無駄につかったりしたら、会社はそれ以上成長しないでしょう。いまのHOYAは後者のような状況にあります。従って、ここ15年のHOYAが優れた会社に見えていたとしても、実際の経営に対する評価は(特に2000年以降について)、ガラス研磨技術の圧倒的な優位性という過去の遺産に胡坐をかいてなにもせずに、いざフラッシュメモリーの脅威でガラス磁気ディスク基盤事業が脅かされるなど、成長性に疑問がついてしまった今になって、何をしていいのかよくわかっていない小田原評定化しているという評価が適切だと思われます。

 言い換えると、HOYAのガラス研磨技術はそれだけ圧倒的に優位性があるものだったのです。2度と簡単に手に入るような技術ではありません。ガラス研磨技術の優位性は、経営陣の無能力、戦略やビジョンの欠如、投資銀行の使い方の無知、オペレーションの無能などのそれらディスアドバンテージをすべて補っても余りあるくらいの圧倒的なものでした。しかしながら、セラミックスの領域でも、陶磁器の分野は今後も応用が見込まれますので、例えば森村グループの会社(日本ガイシ、TOTO、日本特殊陶業、ノリタケ)は軒並み最高益に近い状況を更新していますが、ガラスの分野はさして将来性がなく、ガラス研磨にしか優位性のないHOYAの将来性は比較して暗いといわざるをえまえん。

(3) 5年以上も前から新事業育成が急務だったHOYAの経営

 主力事業の見通しが順調な会社であれば、新規事業の必要性は相対的には高くありません。例えば、キャノンのカメラ、複写機、プリンターの主力3事業は、今後5年から10年で大きく崩れる可能性はおそらくないでしょうから。しかしHOYAの場合は、ガラス磁気ディスク基盤事業は、代替品のフラッシュメモリーが台頭し、中長期のいつかは代替するということは、実に事業を始めた80年代後半の時点でさえ認識されていました。いわんや、2000年代前半では、いまは伸びているが、いずれ10年スパンでは確実に代替されるということは、はっきり分かっており、HOYAの経営課題においては、2000年代前半の時点ですでに、新規事業創出の必要性は、他企業と比較しても、非常に高かったといえます。鈴木洋最高執行役自身が2004年のアニュアルレポートにて、「(余剰資金を自己株式の取得や配当金増額により還元する)資本配当政策だけでなく、中長期での成長力を見越した需要を満足させる事業への投資が後手にならないよう、従来の収益構造とは異なる投資が後手にならないよう、従来の収益構造とは異なる(事業)ポートフォリオへと変えていかなければならないと考えています。そのためには新規事業の取得・発掘が必須の条件になります。従来から懸案となっていますこの課題に関しては、今後も取り組んでまいります」と述べています。鈴木氏自身が、「従来から懸案となっていますこの課題」と、2004年時点で述べていますので、私の主張は自ずと明らかです。

 ガラス磁気ディスク基盤事業は、HDD業界は高容量化のための垂直磁気方式への新方式への対応に手間取り、2007年度第一四半期の業績が悪化していましたが、より重要な課題は、フラッシュメモリーという代替品が存在することです。現在のHOYAの稼ぎ頭であるガラス磁気ディスク基盤は、主に2.5インチのHDDの基盤に使われています。2.5インチのHDDは、アップル社のヒット商品であるアイポットなどの携帯音楽再生機器や、ノート型のパソコンに掲載されており、HOYAはこの分野で、80%以上の市場シェアを持っています。アルミよりもガラス基板のほうが、衝撃に強く、高容量化にも優れていたために、90年代から急速に普及が進みました。注意深い皆さんはすでにお気がつきかと思いますが、アイポットナノではフラッシュメモリーが掲載されており、HDD(及びその用途のガラス基板)は掲載されていません。フラッシュメモリーは、書き換え回数が有限であるという限界があるために、個人利用でも動画再生のビデオを頻繁にダウンロードしたり、書き換えが頻繁な企業サーバーのデータベースなどの用途には向かないものの、通常のインターネットと電子メールだけのPCユーザーには、起動時間やコスト、高容量化がメリットが大きく、2.5インチHDDの市場の多くは、フラッシュメモリーに5年以内に代替される可能性がほぼ確実と思われています。したがって、この事業は今がピークであり、中期的には大幅に減益になる可能性が強いといえます。いわばHOYAが置かれている状況は、CDが登場する時のレコード針の会社、デジタルカメラが普及する時の写真フィルムの会社と似た状況で、こうなることは5年前から分かっていたことです。

 論理的に考えれば、主力事業の成長率が高いうちに、そして主力事業が大きくキャッシュを出している間に、次の世代の稼ぎ頭を育成する必要性があり、このことは5年前から当然社内関係者には理解されていました。特に2000年代前半に、既存事業外への大きなM&Aや投資が必要だったことは明確です。そのような戦略を実行しなかったために、直近2年間の株価の低迷というコストを株主は甘んじて受けなければならなくなっているわけです。新事業の必要性に対し、7年間もなんら答えを出せなかったことを、まず取締役会は事実認識として受け入れる必要があります。末尾の別紙からも窺い知れるように、HOYAの経営陣は90年代後半以降は、新規事業の創出に成功していないというのが真実です。なお鈴木洋氏は、2003年10月のダイヤモンド誌の辻広雅文編集長(当時)によるインタビューの中で、「この会社は、収益性が高くても成長余力が乏しいことが問題で」、「株主の期待に応えるには、5年くらいのスパンで新しい事業を継ぎ足して、急角度の成長を達成しなくてはならない。それが私の仕事です」と述べています。友人としても、きちんと仕事をしてほしいと思っています。

(4) 1000億円以上のコストを払ったペンタックス社買収がHOYA株主の価値を毀損したことを取締役会は認めるべき

 鈴木洋氏がペンタックス社の創業事業の売却を示唆する発言を行ったことと、その後の経緯については、様々に面白おかしくも取り上げられましたし、発言自体は本人の発言趣旨云々を問わず、買収対象会社に不快に思う人間がいることは明らかなので、不適切だと考えられますし、資本拘束条項を見落として、合併のスキームを発表したのも初歩なミスで論外です。しかしこれら以外にも、きわめて本質的な問題がありますので、そのことについて、言及しておきます。第一に、資本政策についてです。HOYAとペンタックスは、当初は株式交換での合併を方針としました。MBAの1学期のコースで習うように、株主資本はコストの高い資金調達の方法であり、低金利の借り入れが可能で、かつ余剰資金を抱えているわけですから、果たして株式交換での買収がHOYA株主の利益になるかという点がそもそも標準的なMBAのカリキュラムで習うことからして、疑問です。現にその後の騒動勃発以前にも、合併発表後のHOYAの株価は低落していきました(関連して、「GEはなぜソニーを買収しないのか」というコラムを岩崎氏が90ページに書いていますので、そちらを参考にしてください。「HOYAが株式交換でペンタックスを買うことがHOYAの株主利益にかなわないか」と読み替えて、岩崎氏のコラムを読まれることをお勧めします)。HOYA経営陣が、株主の代表者としてのアメリカ型の経営者の標準的な思考方法を理解できていないことを如実にあらわしたと思います。

 第二に、HOYAの企業戦略上、ペンタックス社の買収によって、2015年までに数百億円の利益を出す事業を創出しなければいけないという点です。現在のHOYAは、経常利益で1000億円強であり、ガラス磁気ディスク基盤事業等のダウンサイドを補い、かつ成長率を底上げする(言い換えると1990年から2005年までの年間15%成長、あるいは少なくとも年10%成長を実現する)には、大体2015年までに数百億円、たとえば500億円以上の利益を出すような事業を作り上げる必要があります。15%成長を維持するには、2015年に2000億円の経常利益を出していなければいけません。言い換えると、数十億円の利益では、HOYAの株価に与えるインパクトはほとんど無視されてしまいます。買収が成功と言えるためには、数百億円の利益を出す事業を10年後に作れたかどうか、その見通しを3、4年以内に株主に示すことが必要です。このような思考方法を、北米の株主資本主義の洗礼を受けた経営者は行います。

 従って、2007年5月28日の日経ビジネスの記事「HOYA、TOB後の『試練』」という記事の末尾部分に、私は疑問を持ちます。鈴木洋氏は2007年5月末での記者会見で、「カメラ事業は存続する。ただ、量を追っても将来性はない。ニコンやキャノンを追うことは考えていない。小さいながら輝くカメラメーカーになる必要がある」と述べています。これはHOYAのカメラ事業は、K10DやK100Dの動向如何(かりにペンタックス統合後に非常にうまく経営ができたとしても)に関わらず、数百億円の利益を創出する事業領域としては、対象外であることを意味しています。同様に、同記事末尾にあるような内視鏡事業の展開の可能性でも、数百億円の事業を創出する事業分野にはなりにくいと思います。まとめると、「数百億円の利益を出す事業を10年後に作れたかどうか、その見通しを(少なくとも)3、4年以内に株主に示すこと」がポイントなのです。詳細はここでは割愛しますが、その他の方法をもってしても、内視鏡分野でHOYAが数百億円の利益を創出する事業を創出できる可能性は、現状ではゼロに近いと考えられます。従って、1000億円以上のコストをかけた事業戦略としては、常識的に考えて合格点はつけられず、それが株価の下落という評価を受けている理由です。以上の点を取締役会は早く認識して、本当に株主のためになる経営を行わなければいけないでしょう。

(5) HOYAの経営陣の認識には、何が足りないか。どういう側面が、株主に対して誠実ではないか。

 以上である程度述べたように、現在のHOYA経営陣は、株主利益を実現するための基本的な思考ができていないません。ガラス研磨技術の応用に頼ってきた今までの事業ポートフォリオには限界があることをまず認めて、価値の創造を行う正しい方法を認識し、実行するべきです。私が問題だと思うのは、鈴木洋最高執行役の姿勢です。鈴木洋氏は先に引用したダイヤモンド誌のインタビューの中で、辻広氏の「米国の社長時代、ベンチャーへ積極投資しましたね」という質問に対して、「ためになったのは、ベンチャーキャピタルやコンサルタントと一緒に取締役としてベンチャー経営にかかわったことです。それまでの仕事は、HOYAという枠組みの一部にすぎなかった。しかし、ベンチャーは野原にポツンといるのに似て、どこへでも動ける。選択の幅がすごくある。業態転換、撤退、大リストラ、合併、なんでもあり。でありながら、5年先のビジョンはある。非常に異質なおもしろい経験でした」などと述べています。しかしながらこのころ、鈴木氏が主導して行った投資活動は、10社あまりすべて破産したのが実態で、失敗から何も学んでいないこともあるが、このような株主利益に損害を与えた投資行動があったにもかかわらず、あたかも先端的なベンチャー投資を行っているかのような印象を無責任に株主に与えているのは不誠実です。そもそもこの時期から現在に至るまでの間、新事業の創出に成功していないから、株価の伸び悩みというコストを株主は現在払っているわけで、きちんと反省して、自分に何が足りなかったか真剣に考えるべきです。

 なおHOYAは2004年にMITのCardinal Warde教授らが設立したRadiant Imagesという会社を買収していますが、それに関する意思決定の経緯は、株主にまともに説明できるようなものではなかった模様で、鈴木氏らは同様の過ちを繰り返しています。外部の企業を買収して会社を成長させるための、確固としたディシプリンに基づいて経営を行っていないからこのような結果が繰り返されます。

 外部の技術をM&Aによって獲得することで株主価値を創出することは可能です。一例をあげると、内視鏡手術器、使い捨てコンタクトレンズ、携帯血糖値測定器などの事業を獲得してきたジョンドン・アンド・ジョンソンや、ロータスなどのソフトウェア会社を買収してきたIBMです。このためには、情報収集において投資銀行をフル活用するなどの経営上の手腕が必要になりますが、鈴木洋氏にはその実績がなく、自分に何が足りないかもよく認識していないと言えます。鈴木氏は2007年6月5日配信のロイターのインタビューの中で、「内視鏡と周辺機器を組み合わせて、そうした特定の領域で診断から治療までを可能にするような事業を展開したい」として、「外部と組み合わせることになるだろう。M&Aもあるだろうし、ベンチャーを買収したり、ライセンスを受けるなど、いろんな枠組みがある」と述べています。しかしながら、鈴木氏には外部の会社を買収したり、ライセンスを受けることで企業価値を創出してきた実績が残念ながらありません。

 「HOYAは案外、技術力がなく、自ら新事業を手がけるよりも、M&Aをした方が手っ取り早かった」と書かれたことがあります。よくよく財務関係の書類を見ていただけば分かるように、HOYAは30億円程度しか新規分野のR&Dに予算がありません。アメリカでもマイクロソフト、インテル、グーグルのような会社は膨大な金額を社内の技術開発に費やしていますが、シスコ・システムズのように社内でのR&Dを行わず、外部からの導入に依存する会社もあります。そのためには、外部技術の評価能力や買収後の経営能力などが必要とされるのですが、HOYAの経営陣は社内の技術研究開発にお金をかけていない上に、M&Aで外部技術を獲得して新事業を創出する能力を持っているとはいえませんので、問題です。

◆最後にQ&A

Q1 HOYAに技術力はあるか?

 この答えは私ならばこのように答えます。1970年代に獲得したガラス研磨技術の優位性は圧倒的である。したがって、マスクブランクス事業、ガラス磁気ディスク事業は他社の参入が難しいので、利益率が高い。(若干語弊があるが)その他の領域での技術優位性はほとんどないといってもよいので、たとえば日本板硝子との合弁の子会社だったNHテクノグラス社はガラス研磨とは別の領域なので、優位性をもてなかった。

Q2 ほかの創業家のメンバーに言いたいことは?

 私はいわいる事業家家系に生まれましたので、似たような境遇の人たちと幼少期より付き合いがありますが、日本のほかの事業を営む家系と比べても、私の親族は教育水準が低すぎると断言できます。現在は経済が右肩上がりの高度成長期と比較して、経営判断に必要とされる知識が複雑化しており、経営者にとって情報処理の能力が非常に重要になっていますので、一般論としては、2世3世でも経営者になろうという人間は、きちんと大学の学部時代にも勉強してコアとなる知識を身につけて、海外のトップのビジネス・スクールのMBA(経営学修士号)くらいは持っていたほうがいい。HOYAは技術を基礎とする会社だから、学部の選考もどちらかというと理系のほうがいいでしょう。留学先の大学を成績不良で中退というのは論外。倅を後継者にするのならば、周囲は机にかじりついてでも勉強させるべきで、それに耐えられないのならば、機関投資家のお金を預かって経営している会社の後継者は別の人(例えば任天堂の岩田聡社長のようなプロ経営者)にしなくてはいけない。大学院や大学で得られるネットワークも重要なので、小学生時代からそのような人脈ができるように本人に努力させるべきです。たとえば明治時代から世界でノリタケの陶磁器を売っていた老舗商社の経営者である森村さん一族がもっているような国際的なネットワークを、私の親族は持っていません。HOYAは眼科というすばらしい事業分野を持っているのに持ち腐れになっており、第二の任天堂になれる可能性があるのですが、そのような可能性が未実現なのは、経営者の能力の問題です。

 もちろん事業家の家に生まれたとしても、企業経営者になる必要はなく、パリス・ヒルトン姉妹のように芸能界で成功するとか、森敬さん(森ビル創業者の森泰吉郎氏の長男、元慶応大学理工学部教授)のように、学術界に入って活躍して、家業との関わりはアドバイスを与えるという関係にするということもありうる。しかし私たちのような境遇に生まれることは、幼少のときより事業というものを肌で感じることができ、学生時代から先輩の経営者の方々と接することができるなど、非常に有利な側面がありますので、それを生かせるかどうかは本人次第です。ただし組織上多くの人の上に立つということのために、周囲がついてくるための正統性を確保するためには、若いときからそれなりの覚悟があったことを、何らかの実績で示すべきでしょう。そうでなければ、経営を継ぐべきでも継がすべきでもありません。配当生活をしていれば生活には困らないでしょうから、周囲に損害を与えないようにすべきです。

HOYAの各事業が作られた年代:めがねレンズとクリスタルは、70年代以前に基礎が作られ、70年代にガラス研磨技術の応用としてブランクス事業が創出された。80年代にフォトマスク事業、ガラス磁気ディスク事業、オプティクス事業、眼内レンズ事業と現在の主力事業のほとんどが創出されたが、90年代以降は新事業が創出されていない。

ノバルティスによるアルコン買収

つい先ほど、以下のようなニュースが入ってきました。アルコンは記事にあるように、食料品大手ネスレの上場子会社で世界最大の眼科関連企業で、時価総額は4兆円にもなります。ある会社が1000億円程度の買収で世間を騒がせてすったもんだしている間に、世界規模では、より大きな戦略的な動きがあったのです。
以下のニュースは、HOYAのこれからの経営にとっても重要な意味を持つのですが、おそらく日本のアナリストやマスコミの方は良くわかっていらっしゃらないと思いますので、近日中にこのブログ上で、お話したいと思っています。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080407AT2M0701X07042008.html
スイス製薬大手、総額4兆円の大型買収・ネスレの眼科医薬子会社
 【フランクフルト=後藤未知夫】スイス製薬大手のノバルティスは7日、食品世界最大手のネスレから眼科医薬品子会社のアルコンを買収すると発表した。年内をめどにアルコンの25%の株式を取得し、さらに52%の株式を買い増す権利を持つことで合意した。総額で約390億ドル(約4兆円)の大型買収となる。
 アルコンは、1945年に米テキサス州で薬局として創業し、点眼薬やコンタクトレンズケア商品など眼科分野の最大手メーカー。78年にネスレが買収し、77%の株式を保有する。昨年の売上高は約56億ドルで、従業員数は約1万4500人。
 合意によると、ノバルティスは約110億ドルでアルコンの25%の株式を取得後、2011年7月までに約280億ドルで52%の株式を追加取得する権利を持つ。他の株主が保有している残りの23%の株式を取得する義務は負わない。 (07日 23:28)

2008年4月7日月曜日

HOYAの経営課題と事実関係について

とりあえず、去年からいろいろと問い合わせのあった件については、以下に私の見解を述べていますので、ご参考にしていただきたいと考えています。

HOYAの経営課題と事実関係について
2008年1月3日
http://www5.atpages.jp/ymnk/top.html

私はHOYAの現経営陣は、ペンタックス買収がHOYA株主の立場からみて失敗(=株主価値を毀損する結果になった)であることを、なるべく早く認めるべきだと考えています。そちらの方が、株主に対して誠実というものです。現に2006年12月に5000円近くあった株価は、2008年4月現在で2500円程度に、実に2年でほぼ半分に急落する結果になっており、現経営陣が就任した2000年6月からほとんど株価が上がっていないという結果になっていることを、まず事実関係として受け止めるべきです(ちなみにこの2年間に日経平均自体も下落したが、20%程度の下落率です)。

鈴木洋CEOは、2011年3月期でペンタックスののれん代を除く営業利益率を18%(現在は3.6%)を目指すなどと言っています(2008年1月28日の説明会)が、このような実現不可能な目標を株主に提示すること自体が不誠実ではないかと考えています。ペンタックス社のファンダメンタルな競争力を考慮すると、どんなスーパーマン的経営者が問題解決に当たっても不可能な業績の向上であり、基礎的な条件が買収金額に合わない案件を実行してしまう意思決定のしくみが、そもそも大問題なのでしょう。

私も別にこの問題だけを日々の生活で扱っているわけではないのですが、一刻も早く株主の皆さんのためになる経営に変わってもらえることを願っています。

ご挨拶

ニューヨークの日々の生活から、見て聞いたこと、いろいろと考えたことを、こちらでお話していきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします。