2010年5月28日金曜日

鈴木洋氏が最高執行役のままでは研究開発が成功しない理由

鈴木洋氏が最高執行役のままでは、新規事業が成功する可能性はゼロに等しいと思います。これは過去の客観的なパフォーマンスから言えることです。

鈴木氏は北米駐在時代に、全てのベンチャー投資を破産させました。東京に戻ってきてからも、全ての新規事業を失敗させています。9年間技術担当の責任者だった丹治宏彰氏の能力の問題はありますが、鈴木氏が今のままだと、過去の遺産たる事業のキャッシュフローをどんどん食い潰していくと思います。その根拠を以下に述べたいと思います(近日中に加筆予定)。

2010年5月27日木曜日

眼科医薬に進出しないHOYA経営陣への疑問

私は常々疑問に思っているのは、HOYA株式会社の経営方針として、眼科医薬への参入を行わないことです。まさにこのことは、私が経営陣や取締役会の能力に疑問を持たざるを得ないという理由の一つでもあります。ペンタックスの買収資金の1500億円があったならば、おそらく加齢黄班変性症の有望な新薬候補をいくつも買えただろうと思うと、忸怩たる思いがあります。

まず眼科というのは国際的に見てどのような事業分野だと認識されているかというと、市場規模が急成長しており、また眼科医薬に関して低リスク高リターンです。これはどのような意味かと言うと、まず高齢化に伴い先進国では、加齢黄班変性症(AMD)、緑内障、白内障などの疾患になる患者数が急増しています。また糖尿病関連も眼に来ますので、眼科領域です。先進国は人口構成が高齢化しているので、これら分野は経済成長率をはるかに上回るスピードで市場としては成長しています。特に加齢黄班変性症(AMD)については、網膜の血管が繁殖することによって失明となる病気で、色素の弱い白人に多いが、日本でも食生活の欧米化により急増しています。この疾患は、現在のところ抗がん剤の転用による薬が認可されていますが、今のところ疾患の進行を遅くする程度の効き目しかなく、眼科の医療現場ではさらなる新薬が待たれています。市場規模は1兆円を越えるし、年成長率も15%とかの分野です。またほとんどの眼科医薬は、他の疾患の転用薬剤なので、毒性のチェックなどが不必要であり、開発や臨床の失敗のリスクが相対的に低いので、「低リスク高リターン」なのです。

このような背景のもと、眼科分野は世界の製薬会社や医療機器メーカーが参入してくる分野となっています。例えばアメリカにアルコン(Alcon)という会社がありますが、現在の時価総額は眼科専業の会社であるのに4兆円くらいです。もともとスイスのネスレが親会社だったのですが、最近同じくスイスのノバルティスという製薬会社が25%の株式を取得し、さらにネスレから残り50%の株式を買い取る権利を有しています。これは眼科新薬が他の疾患の転用であるという点にから、製薬会社が持つ製品のパイプラインを眼科に応用していくことを狙っているもので、戦略的には極めて合理的だと言えます。また別の眼内レンズメーカーであるAMOという会社は医療機器製薬大手のアボット社に買収されましたが、これも他の医薬を眼科分野にすばやく応用し、眼内レンズと組み合わせてマーケティングするという戦略を具体化したものだと思います。このように世界のライフサイエンスのリーディングカンパニーが参入してくる非常に魅力的な分野になっている、しかもHOYAは国内の眼内レンズの市場ではそれなりの地位を占めているにも関わらず、その経営資源を無駄に放置している状態になっています。

ちなみに取締役候補の一人であるBala Ambati博士は、加齢黄班変性症(AMD)の原因因子の一つに関する基礎研究で世界の第一人者の一人であり、またもう一人の取締役候補であるPaul Ashton博士はこの分野では有名な網膜に移植する薬物伝達デバイスの開発者です。

以上のような状態ですので、優れた眼内レンズをすでに商品として持っているHOYAは、眼科医薬に進出するのに極めて優れた位置にいると言えます(余談ですが6月に退社する元取締役の丹治宏彰氏は、以前この眼内レンズ事業を売却しようとしました。技術担当としても企画担当としても不適格だと言わざるを得ません)。同じ加齢黄班変性症の新薬を開発しても、製薬会社が売るのとHOYAが売るのでは、その効率性も違ってくるはずなのです。このような経営資源を持つ企業は、世界にほかにありません。それにもかかわらず、鈴木洋氏ら経営陣は眼科医薬部門への進出を何ら行おうとしていませんし、ペンタックスのカメラ部門に代表される資本効率の悪い部門に資源と資本を投入し続けています。このような現状を変えなくては、小生は考えている次第です。このような文脈から、Bala Ambati氏の提案も読んでください。当社の持つ経営資源である眼内レンズの開発や販売能力を、眼科分野での新薬の開発(優れた新薬候補の買収を含む)と組み合わせれば、私は北米を中心に5年から7年以内に世界を席巻できると考えています。

2010年5月26日水曜日

社外取締役の独立性のガイドラインの作成の意味

「社外取締役の独立性」ということに日本では大いに誤解があります。というか、企業統治の原則がまだまだ理解されていないのです。例えば教科書レベルの知識で、監査法人の出身者が社外取締役や社外監査役になること、顧問弁護士やメインバンク出身者やコンサルティング契約を結んでいる人物が、社外取締役になることなどは、「独立性」を失わせると考えます。私はHOYA株式会社に対し、北米の上場企業では一般的になっている「会社独自の独立社外取締役の独立性の定義」の作成を指名委員会が行うことを求めることにしました。

一般的に、例えば現在の監査法人の出身者が、報酬を受けながら監査の過ちを指摘することは難しいと思います。一方で、現監査法人(トーマツ)とは別の監査法人出身者の公認会計士が社外取締役に入れば、相互チェックする体制としては、非常に望ましいことになるのです。特に当社の場合は、「買収したペンタックスの業績が急速に悪化して、取締役や執行役の責任問題になった。このままだと自分の責任問題にもなりかねない。売掛金を操作したり、Off-balance sheetで在庫を操作して、業績が回復したことにしよう」とかのインセンティブが強いので、チェックする側としては、要注意です。弁護士についても同じで、一般的に顧問弁護士は、経営陣のイエスマン化し、「弁護士も納得したという大義名分を与えるだけの存在」になり下がることが多いのですが、顧問契約のない弁護士が社外取締役ならば、そういった危険性は大幅に低減されます。

例えば、リスクメトリクス社による、日本企業での社外取締役の独立性の考え方は、以下のように開示されています(この点については、石田猛行氏の商事法務の論文などを参照ください)。
リスクメトリックス グループが採用する「独立性」の原則的な考え方は、その会社と社外取締役との間に、社外取締役として選任されること以外に関係がないことです。日本においては、上記の考え方を形式的な要件として整理した場合、たとえば、下記に該当する場合は独立していないと判断されます。
1. 会社の大株主である組織で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
2. 会社のメインバンクや借入先で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
3. 会社の主要な取引先である組織で、現在働いている、もしくは過去に働いたことがある
4. 会社の監査法人において、過去に働いたことがある
5. コンサルティングや顧問契約などの取引関係が現在ある、もしくは過去にあった
6. 親戚が会社で働いている

北米企業が指名委員会を通じて取締役を選出するときには、「社外取締役としての独立性」に重きを置いています。取締役選出の基準に「会社経営から独立したメンバー」の最低割合を定めたり、「独立性」の定義をはっきりと示しています。あと出身会社と社外取締役になる会社との間で取引関係があると、「独立」とはみなされにくくなります。この独立性の独自基準(証券取引所の基準よりも厳格なガイドライン)を作成し、IRを行うことは北米企業では一般的です(以下インターンでリサーチを行っている方の助力を借りました)。

例:ウォルマートのガイドライン(選出基準の第一項目)
1. Director Qualifications
The Board will have a majority of directors who meet the criteria for
independence required by the New York Stock Exchange. The Compensation, Nominating and Governance Committee is responsible for reviewing with the Board, on an annual basis, the requisite skills and characteristics that the Board seeks in Board members as well as the composition of the Board as a whole, including an annual evaluation of whether members qualify as independent under applicable standards. During the course of a year, directors are expected to inform the Board of any material changes in their circumstances or relationships that may impact their designation by the Board as independent.

例:GEのインデペンデントの定義
4. Independence of Directors
A majority of the directors will be independent directors, as independence is determined by the board, based on the guidelines set forth below.
All future non-management directors will be independent. GE seeks to have a minimum of ten independent directors at all times, as independence is determined by the board based on the guidelines set forth below, and it is the board’s goal that at least two-thirds of the directors will be independent. Directors who do not satisfy GE’s independence guidelines also make valuable contributions to the board and to the Company by reason of their experience and wisdom.
For a director to be considered independent, the board must determine that the director does not have any direct or indirect material relationship with GE. The board has established guidelines to assist it in determining director independence, which conform to or are more exacting than the independence requirements in the New York Stock Exchange listing requirements (NYSE rules). In addition to applying these guidelines, the board will consider all relevant facts and circumstances in making an independence determination.
The board will make and publicly disclose its independence determination for each director when the director is first elected to the board and annually thereafter for all nominees for election as directors. If the board determines that a director who satisfies the NYSE rules is independent even though he or she does not satisfy all of GE’s independence guidelines, this determination will be disclosed and explained in the next proxy statement.
In accordance with NYSE rules, independence determinations under the guidelines in section (a) below will be based upon a director’s relationships with GE during the 36 months preceding the determination. Similarly, independence determinations under the guidelines in section (b) below will be based upon the extent of commercial relationships during the three completed fiscal years preceding the determination.
(c) copyright 2010 general electric company governance principles | page 3
a. A director will not be independent if:
i. the director is employed by GE, or an immediate family member is an executive officer of GE;
ii. the director receives any direct compensation from GE, other than director and committee fees and pension or other forms of deferred compensation for prior service (provided such compensation is not contingent in any way on continued service);
iii. an immediate family member receives more than $120,000 per year in direct compensation from GE;
iv. the director is affiliated with or employed by GE’s independent auditor, or an immediate family member is affiliated with or employed by GE’s independent auditor and such immediate family member personally works or worked on GE’s audit; or
v. a GE executive officer is on the compensation committee of the board of directors of a company which employs the GE director or an immediate family member as an executive officer.
b. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director is an executive officer or employee, or if an immediate family member is an executive officer, of another company that does business with GE and the sales by that company to GE or purchases by that company from GE, in any single fiscal year during the evaluation period, are more than the greater of two percent of the annual revenues of that company or $1 million.
c. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director is an executive officer or employee, or an immediate family member is an executive officer, of another company which is indebted to GE, or to which GE is indebted, and the total amount of either company’s indebtedness to the other at the end of the last completed fiscal year is more than two percent of the other company’s total consolidated assets.
d. A director will not be independent if, at the time of the independence determination, the director serves as an executive officer, director or trustee of a charitable organization, and GE’s discretionary charitable contributions to the organization are the greater of $200,000 or one percent of that organization’s annual consolidated gross revenues during its last completed fiscal year. (GE’s automatic matching of employee charitable contributions will not be included in the amount of GE’s contributions for this purpose.).

これら独自ガイドラインにより、機関投資家か個人株主かを問わず株主へ対して、「外部からの客観的な監査力」を示すのが、当たり前になっているのです。

2010年5月24日月曜日

機関投資家及び個人投資家の皆様:HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

社外取締役の見解の多様性を確保し、現在の新規事業の取り組み方を是正するため、以下のお願いをしたいと思います。すでに申し上げたように、直近の10年間で新規事業の構築に全く成果がありませんし、この状況に現在の社外取締役が是正しようとした形跡は見られません。これを変えるためには、過半数の社外取締役の交代しかありません。

機関投資家及び個人投資家の皆様
HOYA株式会社の取締役候補(会社側提案)についてのお願い

HOYA株式会社株主 山中裕 及び 溝渕彰

 我々は、以下の3人の候補者(椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏の3名、以下3名の候補者と言います)が社外取締役として再任されることは、HOYA株式会社の企業統治、及びその究極的な目的である株主価値向上にはマイナスであると考えるため、平成22年6月18日に予定されているHOYA株式会社の第72期定時株主総会で賛成票を入れないようお願いしたい。なお小枝至氏、河野栄子氏に関しても問題がないとは判断していないが、過半数の社外取締役を交代させることで取締役会構成が本質的に変更されることを考慮し、以上の特に問題のある候補3人に反対票を集中させるため、あえて再任推奨とすることとした。

 確かに形式上では、HOYA株式会社は委員会設置会社を選択し、過半数の社外取締役の選任を定款で義務づけるなど、企業統治の改善の努力をしているかのように見える。しかしながら、まさに社外取締役制度を導入していることがさかんに宣伝されるようになった直近の10年間で株価は凡庸なパフォーマンスしか残しておらず、また直近の5年間では日経平均をアンダー・パフォームする結果となっている。当社の企業価値が大きく向上して優良企業といわれるようになったのは、70年代から80年代にかけて獲得した、ガラス研磨技術を中心とした基幹技術をもとに、フォトマスク、マスクブランクス、ガラス磁気ディスク基板、眼内レンズなどの開発に成功することができたからであり、過去10年から15年の間には、新規事業の経済合理的な形での開発に成功していない(高値掴みの買収で事業数が増えたのは除く)。新規事業の度重なる失敗と現在の事業開発の問題点は別に詳細を述べているが、執行役が「優良案件を掴むための人脈や情報源を保有しておらずそのための努力も全く行っていないこと、投資を行った後は放置したままであり少なくとも四半期おきに投資先の技術開発の動向や代替技術の動向がどうなっているか、買収提案をするべきかどうかなどの精査な分析を一切行っていないこと」などの新規事業の創出による株主価値の増加の障壁となる問題に、社外取締役がなんら関心ないため、経営状況の変更がまったくされない。これを改善する方法は、当社の取締役の過半数を交代させること以外にあり得ない。特に3名の候補者は、①経営者を監督するのに十分な能力や時間がなく、②株主価値を高めるインセンティブに欠け、③経営者の業務執行に賛成する心理的な傾向があると思われるので取締役候補として不適格と考える。以下理由を述べる。

(1)経営者を監督するのに十分な能力や時間がない 
 椎名武雄氏と茂木友三郎氏、児玉幸治氏は、過去または現在において、多くの公益法人、民間企業、政府委員会などで、社外取締役、社外監査役、委員などの兼任を行っている。例えば、椎名武雄氏は、90年代に米工業ガスのエアープロダクト、米電子メーカーのAMPの社外取締役に就任後、商船三井、明治製菓、東京スター銀行などの社外取締役に次々と就任し、2001年の時点で8社もの兼任を行っていた。また茂木友三郎氏は、現在キッコーマンのCEOを兼務しながら、明治安田生命保険と当社の社外取締役、フジ・メディア・ホールディングと東武鉄道の社外監査役、さらに行政刷新会議の議員を兼任し、本年3月の時点で文部科学省と外務省が所管するユネスコ・アジア文化センターや農林水産省所管の食品産業センターなど国から補助金が支出されている法人のポストを含む18にも及ぶ公益法人の理事長などのポストを兼任していることが報道されている。このような兼任数が多い状況では、HOYA株式会社の社外取締役として経営陣を監督するために必要な情報を入手し、分析するのに十分な時間があるとは言えないと考えられる。

(2)株主価値を高めるインセンティブに欠けている。
 児玉幸治氏は、いわゆる天下り・渡り官僚であり、経営の経験もなく企業統治の専門家でもないため、そもそも会社経営を行う能力や経営を監督する能力が本質的に欠けていると考えられる。もし児玉氏がHOYA株式会社の社外取締役としての適格性があるのであれば、「具体的に」どのような役割が期待されているのかを明らかにすべきである。提案者はペンタックスの買収が問題となっていた2007年5月ころに当時のすべての社外取締役に「この買収価格は妥当ではなく、今すぐ買収を中止するべきである」との内容の書簡を送ったが、それらはすべて無視された結果として現在のような状況になっている。また同年6月に児玉幸治氏と面会したところ、「ペンタックスの従業員の過半数がHOYAとの統合に賛成」ということを、取締役として買収に賛成した根拠として述べた。また児玉氏は、財団法人旭硝子財団理事や旭化成の社外取締役を兼任しているが、当社と旭硝子あるいは当社と旭化成の間には事業上の重大な競合関係(フラットパネルのガラス基盤、あるいは眼科製品において)が存在するため、利益相反の関係が自然と疑われると言わざるをえないが、当人はこれら問題に自覚がないようである。

 別法人の理事長を兼任していると、株主ではなく別法人の利益を図る可能性がある。茂木氏の公益法人との兼任の問題はすでに時間の問題で指摘したが、旧通商産業省事務次官の児玉幸治氏は「機械システム振興財団」という公益法人の会長を務めているが、いわいる天下り官僚の上がりポストである。日本社会では、公益法人に、官僚組織がその裁量権による圧力をかけ、民間企業から会費を集めることがあり、児玉氏は経済産業省出身者として、このような会費の徴収に熱心となる可能性がある。HOYAの取締役会は経済産業省からの圧力を受け、取引を承認するかもしれない。また取引のボリュームが小さければ、児玉幸治氏の意向を受けてCEOの判断で会費の支出が行われることもあるだろうが、これら支出の開示はなされていないため、株主には知るところではない。このような場合、児玉氏はHOYAの株主の利益よりも取引先である公益法人の利益を図っていると疑わせるに十分であるし、このような可能性が推測されることだけでも、企業統治上の欠陥があると言わざるを得ない。

 また社外取締役が株主価値を高めるインセンティブを強化するため自社株を保有すべきことは極めて重要であるが、現在の社外取締役は、基本的に自社株を時価ベースで1000万円以下しか保有しておらず、株主価値を高める強い経済的なインセンティブを持っていない(社外取締役の報酬は推定年間1100万円程度)。例えば、取締役の椎名武雄氏は過去15年で推定でも最低1億5000万円の報酬を受け取っているが、1000万円以下の時価総額の同社株しか保有していない。児玉氏の所有する株式数は、前年株主総会の参考資料によると1000株(時価200万円と報酬の五分の一程度)にすぎない。椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏らにとって、株価が上昇することの経済的メリットよりも、現経営陣やほかの取締役とうまくやって、再任を狙うことの方が当人たちの経済的利益に合致していると判断できる。

(3)取締役間の見解の対立を回避し、いわいる「仲良しクラブ」的取締役会を形成し、経営者を無条件に支持する心理的な傾向が高い。
 HOYA株式会社の指名委員会は執行役及び取締役候補者を選定する権限を持つが、一般には指名委員会はCEOの意向に配慮して候補者を選定することが一般的である。例えば塙義一氏の後任に同じ日産自動車の小枝至氏が社外取締役に選任されているが、これはCEOが塙氏に依頼したか、依頼することをCEOが了承することを前提に指名委員会が決定したものと思われる。前任の取締役が出身会社の上司筋であることは、以前の判断に異議を唱えることが難しくなる。そのような候補者だからこそ指名委員会は敢えて選任したと推測できる。外国人や女性、あるいは引退した経営者以外の職業的背景を持った社外取締役候補を(場合によってはサーチ会社等を用いて)探すことを行っていないとみられる。外国人や引退した経営者以外の職業的な背景を持つ社外取締役候補の指名を事実上行っていない事実は、椎名武雄氏や茂木友三郎氏らの現任取締役が取締役会に多様な意見が反映されることに対して、心理的に抵抗していることを示唆する。このような判断は、椎名武雄氏ら当時の指名委員会の構成メンバーに責任があると言える。また現在の社外取締役は、過半数3名が本総会時点で満75歳を越え、他の2人も年齢が60代であるなど老齢化しているため、一部の世代の共通感覚が取締役会を支配することとなる。

 また指名委員会は現任執行役である萩原太郎氏を再度技術担当の執行役候補者にすることを予定している。そもそも荻原太郎氏が前年に日産自動車から当社へ転籍したこと自体も、塙氏による強い推薦があったと思われる。萩原太郎氏は日産自動車で傍流になった燃料電池部門の開発責任者であり、開発に特に成功した実績も確認できる客観的な根拠がない。また当社はガラスを中心とする材料科学メーカーであるため、機械系の教育を受けた荻原氏は適性が疑わしい。日産自動車と当社執行役の人間関係により、社外取締役の出身会社で不必要になった人材を、社外取締役に就任している会社に押し付けるような行為だと疑う余地すらある。

 さらに椎名武雄氏は、株主向けの開示資料によれば、2003年まで社外取締役の報酬とは別に、自身が所有し代表取締役を務めるコンサルティング会社が毎年数100万円のコンサルティング料を受領していた。この事実は社外取締役としての独立性を欠くことを意味する。また椎名氏はHOYA株式会社の社外取締役を15年、茂木氏は9年間の再任期間を経て務めているが、ロンドン証券取引所の証券規則では9年を越える再任期間を持つ取締役は、独立とはみなされない。このように在任期間が長いと一般的に経営陣や他の取締役と個人的な関係を形成することが多い。椎名氏や茂木氏は、最終的には経営陣を支持する心理的な傾向が強くある。実際に通常誰の目から見ても非合理な買収であるペンタックス社の公開買い付けや、新規事業に取り組むにあたる問題について、これらの取締役が意見を述べ、本質的な改善を執行役に要求した事実は、間接的にも全く確認できない。提案者から見れば、株主価値創出の課題は新規事業の失敗という意味で明確であるが、椎名氏らの取締役にとっては、それら課題は問題意識に入っていないと思われる。

 以上の点を考慮し、企業価値の向上への障害となる椎名武雄氏、児玉幸治氏、茂木友三郎氏、3名の取締役候補(推定)について賛成票を入れないことを呼びかけることとしたい。

2010年5月23日日曜日

株主価値が創出されない理由は新規事業のミスマネージメントを10年間続けてきたこと、それを取締役会が放任してきたことの機能不全です

HOYA株式会社の株価動向だけみると、今私がみたデータでは、直近の5年で基本的に日経平均を下回っています。過去の事業開発の貯金が大きく反映された2000年代前半のパフォーマンスを入れて直近の10年で見ても、極めて凡庸な株価パフォーマンスです。優れた企業統治の究極的な目標が、株主に配当増加とキャピタルゲインで報いることだとすれば、現経営陣はその期待を裏切ってきたと結論できると思います。

株主価値破壊の最大の問題は、買収や社内の新規事業への投資の判断が、ここ10年間でたらめであったということです。勿論素人の誰が見ても、ペンタックスの買収は、HOYA株主に多大な損害を与えた失敗です。ただこれだけでなく、直近の10年間で、いわいる新規事業が成功したためしがありません。確かに技術担当の責任者である丹治宏彰氏は去年6月の株主総会で取締役を退任、なぜか執行役には再任されていたものの、今年6月をもって企画担当なる執行役も退任することになりましたが、HOYA株式会社の経営を真摯に考えると、この経営課題を何らかの形で変更しないと、株価が大きく上昇することはあり得ないし、現在の経営体制でもなんら問題点の放置という現状への変更はないと考えています。また詳細は別に述べますが、荻原太郎氏も技術担当の執行役として不適格だと判断しています。

例えば2009年の株主向けアニュアルレポートには、以下のような研究テーマが羅列されていましたが、ここ5年から10年で50億円とか100億円とかの利益を創出すると思われる事業は、ほとんどありません。資料によれば、①ナノインプリント、②3C-SiC、③光通信コネクター、④人工水晶体、⑤スキャニング・ファイバー内視鏡(SFE)、⑥超音波気管支鏡、⑦生体置換型有機無機複合人工骨の開発を行っています。これらの事業が5年後とか10年後に50億とか100億とかの売上なりを創出する事業にならなければ、1000億円の経常利益を創出する会社の潜在的な成長率を底上げすることにはならないはずですが、現状では⑥について情報がなく(ただしこれは既存の内視鏡事業の延長である)、また④⑦以外は、有望でなくほぼ確実にいずれ消えます。④については自社で材料開発を行っていないという決定的な問題がありますが、④と⑦については研究投資として継続することは(ペンタックスが高値掴みであったことを別にして、今となっては)推奨します。なお⑤⑥⑦については、負債を含めて1500億円のコストをかけたペンタックス買収によって得られた事業であるので、どんなに譲って少なくともEBITDA50億円以上に10年でならなければ、投資として成功したとは言えないのです。なお2008年のアニュアルレポートには、「ナノ粒子」なるプロジェクト(有機ELを開発しようとしていたものらしい)が記載されていましたが、2009年のアニュアルレポートではすでに消えています。

一つの分りやすい例として、②3C-SiC(立方晶炭化ケイ素)の開発の問題を記載します。2002年(平成14年)5月発表の、SiC其板の開発、製造子会社のHAST (HOYA Advanced Semiconductor Technology)という会社に関して、2007年(平成19年)での上場を目指すなどと公表され、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とあるが、上場予定の設立5年後の2007年とか、今年6月でいよいよ満8年たっても何の成果もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことから明らかだと思います。

このプロジェクトがスタートした当時は、SiCには、3Cと4Hの方式があり、HOYAは、当初から「3C」の方が基板の大面積化が可能で結果的にコスト競争力がある、との方針から進めてきた経緯があるが、ロームクリー(Cree)等の「4H」勢の躍進やローム自体が「3C」方式を見限ったことにより、世の中は、一気に「4H」に傾いた。基板が大きいことは、逆に結晶成長や不純物(コンタミ等)の影響を受け易いと言う致命的欠点を有している。又、社内的には既に「死に体」となりながら、ゾンビの如く生き延びている研究分野と言われている。半ば「終わった」プロジェクトと言って良い。一説には「父親が始めたPJ(プロジェクト)であるため、止められない」と言う親孝行な噂もあるぐらいであり、想定質問事項として、無計画のまま、ダラダラ投資して来た実態をえぐり出すことが必要がであろう。

<私が株主として行いたい(あるいはCardinal Warde博士が取締役になった時に執行役に説明要求させたい)質問事項>
① ロームやクリーの「4H」方式に対する技術的アドバンテージは何か。
② ロームが既に今年5月に自社SiC基板を用いた「ショットキーバリアダイオード」の量産を開始しているが、HOYAの量産計画と想定製品(ロームと同じ様にダイオードか、他の素子か、例えばMOSFET)の情報を説明せよ。
③ ロームは難しいが、クリー社には「3C」方式の売却は、可能ではないか?
④ ロームは、本田技研工業や日産自動車などと積極的に共同研究を行っているが、HOYAは、何処かの自動車メーカと共同研究を行っているか?例えば、社外取締役を排出している日産自動車との共同研究は、行わないのか?
⑤ 長期に渡り、開発を続けているが、今までの実績を開示いただきたい(費やした研究開発費用と売り上げ・今後の計画と想定顧客等)。2002年時点で5年後に上場とか言っていたプレスリリースは、いったい何なのか?

例えば以上のような問題があっても、鈴木洋氏(最高執行役)や丹治宏彰氏(現企画担当執行役で2010年6月退任予定、取締役は去年6月で退任するもなぜか1年間執行役で社内に留まる)は延々と技術経営のミスマネージメントを続け、そして兼任数の多い社外取締役が過半数からなる取締役会にはそれを是正する意思がまったく見られないため、もし本当に株主価値を真の意味で増加させるような新規事業や研究開発を行わせるためには、取締役の過半を入れ替えるしか方法がないので、今回の株主提案になりました。例えば研究開発を本気で成果あるものにする気があるのならば、指名委員会は、私の推薦するそれぞれの技術分野の専門家であるCardinal Warde博士(電子工学)、Paul Ashton博士(眼科薬物伝達)、Balamurali Ambati博士(眼科医薬、特に加齢黄班変性症の新薬研究)の3人を5月最後の取締役会で次期取締役候補として指名するべきです。以上の例はあくまで一例です。実際に過去9年間のアニュアルレポートを読めば、新規事業で羅列されている研究プロジェクトで、現在の会社のキャッシュフローに貢献している事業は一つもありません。(詳細についてはこの項でなるべく早く加筆しますので、またアクセスしてください)

2010年5月22日土曜日

茂木友三郎氏は社外取締役不適格:兼任数24の人物が行政刷新会議の議員をいまだに務めていることの馬鹿らしさ

茂木友三郎氏の行政刷新会議の議員を務めていることの問題点を手短に述べると、基本的には、公益法人との兼任の問題です。そもそも元通産官僚の児玉幸治氏が天下りの枠でHOYA株式会社の取締役におり、茂木氏はこれを容認しているのであるから、問題だと言わざるをえません。

というか、例えばみんなの党の政策では、「政策投資銀行、商工中金は、経済危機克服後、完全民営化」と公約しているが、児玉幸治氏は以前に通産産業省から商工中金の理事長として天下りしており、いわいる典型的な天下り渡り官僚です。茂木氏は児玉氏の取締役選任も責任を持っているのだから、行政刷新会議の議員に不適切だと言わざるをえません。以下、ご参考にして下さい。良識ある皆さん、そもそも国際的に日本の資本市場や政治がどのように見られるか、冷静に考えましょうね。こんな取締役会を放置しておいたら、日本の恥ですよ。


茂木友三郎氏の行政刷新会議の議員からの退任を求める要望書
「日本の資本市場の機能を考える国民会議」(代表 山中裕)

 民主党の目玉政策である行政刷新会議においては、茂木友三郎氏(キッコーマン会長)が議員についています。われわれは、茂木氏の現在の活動内容から考えるに、茂木氏は行政刷新会議の議員を自主的に退任するべきだと考えています。

 まず茂木友三郎氏は3月の時点で18にも及ぶ公益法人での理事長などのポストの兼任を行っていることが報道されています(例えば時事通信2010年4月2日。以下の事実関係は同報道による)。事業仕分けの対象候補として政府が先に公表した、過去に問題を指摘された50法人とは無関係である一方で、文部科学省と外務省が所管するユネスコ・アジア文化センターや農林水産省所管の食品産業センターなど国から補助金が支出されている法人のポストを兼任していることが明らかにおり、これに対して枝野幸男行政刷新担当相は、4月2日午前の閣議後の会見で、「(仕分け対象の)公益法人の選定に当たって、理事などの固有名詞は見ないで、事業の中身でセレクトしている。問題だとは思っていない」と述べています。しかしながら、茂木氏は以下で述べるように現時点でキッコーマンの最高経営責任者(CEO)を兼務しながら、2社の社外取締役、2社の社外監査役も兼務しており、行政刷新会議の議員も含めると24の兼任があるということになり、一般的な常識から考えて、「そもそも、一つ一つのポストに関する責任を果たすための時間がとれるのか」という当たり前の疑問がありますし、加えてすべてのポストで忠実義務を果たすには、24の役職の相互間に利益相反関係が生じないはずがありません。常識的に考えて、極めて異常なことだと言わざるをえないと考えられます。

 第二に、実際に行政刷新会議の議員として茂木氏の適格性に疑問がある、一つの実例としての前歴があります。茂木友三郎氏は現在HOYA株式会社の取締役を務めていますが、当社の取締役として、通商産業省の元事務次官である児玉幸治氏が付いています。児玉幸治氏は(茂木友三郎氏も同様ですが)、年間10回の出勤で年間推定1000万円の報酬を得ています。茂木氏は児玉氏の取締役就任を容認して承認していますし、行政刷新会議の趣旨と照らし合わせて、言行不一致もはなはだしいと考えられますし、公共性の高いはずの上場企業の取締役会を「仲良しクラブ」化させているのが実態です。茂木氏が役員についてから、当社の株価はほとんど上昇していないことからも、茂木氏が受託者責任を立派に果たしているとは言えないと思います。なおHOYA株主会社の正社員の平均年収は、(週5日朝から夕方までの勤務時間で)650万円程度です。

 第三に、茂木友三郎氏は、HOYA株式会社のペンタックス社の買収に対して、「この買収価格は適正でなく、(HOYA株主会社の株主にとって)利益にならない」という書簡を要望者から受領しながら、経営陣とのなれ合いの関係から会社にとって1500億円もの無駄遣いとなる買収案件に取締役会で異議を唱えませんでした。その結果、当該部門は赤字に転落している他、栃木県の益子工場ではカメラ部門の数百人単位の従業員がリストラの結果として失業し、家族ともども現在も仕事が見つからずに路頭に迷う事態となっている結果になっています。国の無駄使いをなくすための行政刷新会議についている議員が、別の上場企業の取締役会で経営陣の1500億円の無駄使いを放置していること自体が、極めておかしなことだと考えられます。

 第四に、現時点で、茂木友三郎氏は、複数の上場会社の社外取締役や監査役を務めていますが、カルパース(CalPERS)などの国際的な機関投資家の一般的な常識的要望としては、社外取締役の兼任は3社を上限とするべきですし、まして現職のCEOであれば自社以外で2社以上の社外取締役や監査役を務めるのは難しいと考えられます。まして行政刷新会議の議員は、今後の日本の行く末にとって極めて重要な職責を負いますので、これほどの会社の取締役や監査役を務めながら、兼任するというのは、不適切な形態だと思われます。

 第五として、以上のような茂木氏の対応が、メディアの批判的論調の対象になり始めているという点があります。例えば、ジャーナリストの田中幾太郎氏は「『偽りの米国流』で屈折するHOYA『父子鷹』経営」(「ZAITEN」2010年1月号)の記事の中で、茂木氏らが構成する社外取締役会を、「『仲良し老人クラブ』に集う社外取締役という〝藩屏〟」と項を設けて論調し、同社の社外取締役制度について、「『お手盛り』と言われても仕方ない人選だ」と批判し、「社外取締役も納得したという大義名分を与えるための存在」であるとして、「制度そのものがアリバイのためにあると言われてもしようがない」と述べています。また別の経済記者である有森隆氏は、「株主資本主義を体現する米国流経営と、息子への社長ポストの継承には論理矛盾がある」(『創業家物語』講談社2009年出版p.120)として批判していますが、この現状を黙認追認したのが茂木友三郎氏です。行政刷新会議も同様に、「制度そのものがアリバイのためにあると言われてもしようがない」と言われかねないと考えられます。さらには、「「社外取締役」 経営者“名義貸し”ネットワーク」(「ZAITEN」2010年3月号)という特集の中で、茂木氏はその兼任状況の異常さを、かなり激烈に批判されています。

 なお以上のような問題がありますので、要望者としてはHOYA株式会社に対してこれら問題を改善させるべく株主提案(2010年1月12日に本社株主総会事務局に到着)を行いました。①3社より多い兼任数の社外取締役の就任の禁止、②社外取締役の10回以上の連続の再任禁止、③累積投票制度を排除する定款規定の禁止、④株主総会の議決における秘密投票、⑤取締役の個別報酬の開示、⑥交換取締役の禁止、などからなる提案内容になっています。

 資本市場の機能を国際的な投資家から評価させるものに改革させて、日本人の持つ年金の利回りを向上させることは、日本の政治にとって非常に重要な意味を持つ課題だと思われますが、以上のような行動を考慮すると、はたして茂木友三郎氏がこういった問題に対してきちんとした見識を持っているとは全く思えないのが現実です。現実に、日経平均株価などの株価の指標を見ても、民主党の経済政策は2009年8月30日以降、必ずしも国際的な評価を得られていないのが現実ですが、行政刷新会議の議員である茂木友三郎氏の活動がこのようなものであることなどは、その否定的な側面の象徴のように見られているように思われます。すべての世代にとって、日本の金融資産の有効な運用は、国の無駄遣いの削減と同じような重要性を持つはずです。若い経済人や経済の専門家は少なからずいます。現政権としては、旧政権からの引き継ぎ人事である茂木友三郎氏を行政刷新会議議員から退任させて、国際的な資本市場の皮膚感覚を備えた、新たな人材を行政刷新会議の議員として選出されることを強く要望します。

2010年5月19日水曜日

新規事業がここ20年間成功していないことを指名委員会が放置していたことが問題だ。

というタイトルで記事を書きますので、少しお待ちください。
そもそもここ5年間株価が低迷している理由になる一つの主要な問題は、丹治宏彰氏(前年取締役から退任し、平成22年6月18日の株主総会後の退任が発表済み)を代表とする新規事業に成果を持たない執行役を指名委員会が指名していることが問題であり、そのこと自体をもって、指名委員会所属の取締役に反対票を投じるに十分な根拠になると思います。HOYA株式会社の今の社外取締役たちは、「老人仲良しクラブ」です。なお日産自動車から移ってきた荻原太郎氏(技術担当執行役)についても、「元日産自動車の燃料電池の開発責任者であるが、日産自動車時代に新規事業開発の顕著な実績も確認できず、ゴーン体制下でEV車に資源を集中する戦略から外れた事業開発部門の出身者であり、かつ機械系であるため、主要事業が材料科学であるHOYA株式会社の技術担当の責任者として不適格」だと考えていますが、詳細は別に譲ります。このような現状では、新規事業等の投資はすべて失敗に終わるため、株主価値は失われる一方です。

そもそも丹治宏彰氏が取締役となり、実質的に技術担当の責任者になって以来、当社の社内R&Dとベンチャー投資を含む新規事業はすべて失敗しています。新規事業の投資の成功確率0%です。たとえば公開資料から分るように、2004年にCardinal Warde博士の起業したRadiant Images社を買収していますが、この会社はその後のマネージメントが悪く、非常にいい買い物だったはずなのに、他社にプロジェクトを委譲するなど完全に失敗に終わっています。この投資の責任者も丹治宏彰氏です。ペンタックスの失敗については、これ以上ここでは何もいいません。また、Xponent Photonics社の投資失敗も開示されている結果の一つです。過去の株主向け開示資料を注意深く見ていただければわかるように、5、6年前に開示されていたR&Dプロジェクトの内容で、成功したものは一つもないです。

そうであるにも関わらず、80年代までの事業開発の成果(マスクブランクス、フォトマスク、ガラス磁気ディスク基板などの事業)が2000年代前半までは伸びていたため、これだけめちゃくちゃな資本の無駄遣いを行っても、外からはあまり見えにくかったわけです。私はこの現状を変えたいと思っていますが、このために障害になるのは、現在の社外取締役の諸氏です。彼らは私の認識では、完全な善管注意義務違反です。というのも、丹治宏彰氏のような新規事業には実績のない人間を最高技術責任者とか技術担当の執行役とかに指名し続けていたということがあります。だから社外取締役の過半数を何らかの形で交代させないと、新規事業の体制が変わることはないと言えるため、社外取締役の候補を提出せざるを得なかったわけです。ただし委員会設置会社の構造上、指名委員会の過半数が交代すれば、新しい経営体制をスタートさせることができます。

実はHOYA株式会社の事業ポートフォリオにはすごいドル箱候補があります。それは眼科領域で、まだ真の意味での有効な新薬のない加齢黄班変性症の分野で新薬開発に成功すれば、ソニーを越える時価総額を達成できます。私の夢ですが、13歳で大学卒業し17歳で医学博士を取得したBalamurali K. Ambati博士の知恵を有効に活用すれば、それも不可能ではないのです。Balamurali K. Ambati博士は現在加齢黄班症の原因因子の一つの基礎研究を行っていますが、グローバル企業ならば世界の真の意味でのリーダーの知恵を活用するべきです。

それにしても、新しい経営体制を構築するためには、現任の社外取締役である椎名武雄(81歳)、児玉幸治(76歳)、茂木友三郎(75歳)の3氏は退任してもらいたいと考えています。椎名氏は就任期間15年、茂木氏は9年になりますし、児玉氏はいわいる旧通産省からの天下り・渡りの経歴を持つ人物です。イギリスの証券市場の決まりでは、9年を越える再任期間を持つ社外取締役には独立性を認定しません。諸外国の資本市場の歴史を踏まえると、自主的な退任を勧告したいと思います。それに今の社外取締役の構成は、引退した経営者ばかりで、弁護士や会計士、大学教授などの知的バックグラウンドを持つ人材を活用しておらず、多様性に欠けると思います。

2010年5月18日火曜日

神童の眼科医バラ・アンバッティー博士による中長期的株主価値を増大させる経営戦略:Strategic Vision for HOYA Ophthalmics' US Market Entry

HOYA株式会社の取締役候補で、17才で医学博士を取得した神童であるインド出身の眼科医であるBalamurali K. Ambati博士による、HOYA株式会社の経営陣に対する提案内容です。結論からいえば、加齢黄班変性症の新薬の優良候補を買収等で入手し、世界を席巻する事業戦略を取るべきです。このような世界の市場条件を理解せずに、対応が後手後手に回っている鈴木洋氏は、丹治宏彰氏と指名委員会のメンバーともども、早期に辞任するべきです。平均年齢が70歳を越えた社外取締役候補はもはや株主の利益にならないのです。眼科ではBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学准教授)と、Paul Ashton博士サイビダ社社長兼最高経営責任者)、材料科学などエレクトロニクス分野ではCardinal Warde博士MIT電子工学教授)の取締役就任への賛成をぜひともお願いします。

Strategic Vision For Hoya Ophthalmics’ US Market Entry
by Balamurali K. Ambati, MD, PhD, MBA (Associate Professor of Ophthalmology and Visual Sciences & Director of Corneal Research, University of Utah School of Medicine, A Candidate for a Board of Director of HOYA Corporation)

Understanding the Market
Vision loss is a devastating event and a significant risk for the aging. The numbers behind vision loss are staggering. Approximately 1 in 28 Americans over 40 is affected by low vision or blindness. Considering that the >80 cohort is rapidly growing and the coming of age of the baby boomer generation, prevalence of glaucoma and AMD are expected to more than double by 2020. Over 322 million people worldwide have blindness, visual impairment, or low vision, with even more having vision-threatening conditions.

A brief summation:
• US Ophthalmic Pharmaceutical Market 2011: $12B
• Vision Loss is expected to grow 70% by 2020
• Financial Burden of Vision Loss in the US is greater than $35B/yr
• Globally AMD - 30M; Glaucoma - 42M; Diabetic Retinopathy - 20M

Market Size: The total ophthalmic pharmaceutical market was $12 billion in 2007 and is expected to grow 4-11% through 2023. The primary drivers of this market are currently four indications: glaucoma (37.5%); ophthalmic anti-allergy/inflammatory/infective (31.2%); retinal disorder (14.6%), and dry eye (11.5%). The glaucoma and retinal markets are driven by large marketshare, blockbuster drugs; Xalatan/Xalacom $1.6B and Lucentis $1.7B, respectively in 2008. Growth in the retinal disease market is expected to maintain a robust clip between 9-29% through 2013 with glaucoma markets showing limited growth, but remaining the largest market through 2023.

Key Diseases:
AMD, the leading cause of blindness in the US, has 2 principal forms: “wet” or exudative (characterized by angiogenesis or growth of new blood vessels), and “dry” or non-exudative (characterized by geographic atrophy and drusen, and a steady rate of progression to “wet” disease). In the US, there are over 2 million people with advanced AMD (expected to double by 2020). Further, 7.5 million Americans are affected by intermediate AMD and thus at risk for developing advanced AMD. While present anti-angiogenic modalities offer significant benefit to many patients with neovascular AMD, indefinite monthly intravitreal injections are risky, unappealing, and burdensome to patients.

Current FDA-approved therapies include the anti-VEGF aptamer (pegaptanib (Macugen; OSI)) and the anti-VEGF Fab fragment (ranibizumab (Lucentis; Genentech)), and photodynamic therapy. Use of Macugen and photodynamic therapy has been eclipsed by intravitreal injections of Lucentis, as it is the first drug to demonstrate significant visual acuity improvement in patients with neovascular AMD. Lucentis costs approximately $2,500 per injection (prospective annual cost approximating $30,000), thus demonstrating the potential of a large market (Lucentis US sales in 2008 were $875M and $886M for the rest of the world). This has triggered a pipeline of 24 INDs (Investigational New Drugs) with at least 20 drug projects in preclinical stages. While the future space in pharmaceutical management of AMD may become crowded, drug delivery platforms are needed to improve ease of administration, convenience, and patient quality of life, for patients now accept monthly intravitreal injections only because there is no choice. In addition, off-label use of bevacizumab (Avastin® ; Genentech), an anti-VEGF antibody, has become common as it much less expensive, but nonetheless this requires regular intravitreal injections.

Glaucoma is the leading cause of blindness in the African-American community and in much of Africa. It affects 2-3 million Americans. Current therapy revolves around lowering eye pressure using topical eyedrops including latanoprost (Xalatan), brimonidine (Alphagan), timolol (Timoptic), and dorzolamide (Trusopt). Patient understanding of and adherence to complex medical regimens is often poor, resulting in need for costly and high-risk surgical drainage procedures, including trabeculectomy and tube shunt procedures. These have high rates of infection, choroidal hemorrhage, hypotony, and other vision-threatening complications.

Diabetic retinopathy could potentially occur in the 15 million Americans with diabetes as well as the hundreds of millions around the world. Diabetic vision loss (currently afflicting 4 million Americans) is generally due to macular edema (leakage from blood vessels causing swelling in the central retina) or proliferative diabetic retinopathy (growth of new blood vessels causing hemorrhage). The percentage of Americans with diabetic retinopathy is expected to skyrocket over the next 15 years due to aging and increasing obesity.

Market Analysis:
Individuals who live to age 65 have a 45% risk of eventually developing AMD, glaucoma, or diabetic retinopathy (all possible conditions for CDR usage, along with retinal vascular occlusions, uveitis, and other vascular or neurological disorders). As the >80 cohort is rapidly growing, prevalence of glaucoma and AMD are expected to more than double by 2020. Expected 2008 US sales for drugs such as Xalatan (glaucoma) or Lucentis (AMD) exceed $1 billion. The financial burden of vision disorders in the US exceeds $35 billion/yr. With nearly 3 million cataract surgeries performed annually in the US and with over a third of patients over 65 having had cataract surgery (15 million patients; ~25 million eyes), it is reasonable to expect that there would be great demand for products that can be targeted to cataract or post-cataract patients or co-marketed with intraocular lens technology.

The most important driver for growth during this period will be the increasing prevalence of ophthalmic disorders among an expanding older population. The two most rapidly expanding categories will be glaucoma and retinal disorders. The push for new superior technologies is especially evident in the growth of investment seen in the ophthalmic market. Continued increases in new targets and expanded delivery options signal growing interest in ophthalmics, resulting in nearly 40 deals since January 2007, led by Novartis AG’s $10.4 billion purchase of a 25% stake in Alcon Inc., and over $370 million in venture financing. Investors believe the sector is ripe for growth due to an aging population, unmet medical needs and increasing interest from large pharmaceutical companies. The amount of venture capital going into ophthalmic companies rose from $123 million in 2004 to $210 million in 2006. Over the same period, companies with an interest in the eye space raised in excess of $1.5 billion from all capital market sources.

Success in the ophthalmic market during 2008-2023 will be characterized by the launch of products with superior technology, particularly those technologies which increase clinical effectiveness or increase patient compliance. Considerable success is also likely for therapies that meet the large unmet needs.

Recommendations
Hoya’s entry into the US ophthalmology market can achieve its potential for exponential growth by targeting key niches with high margins and scope for expansion. The sectors I would recommend concentrate on would be the following:

(1) Near Term
• Aggressive Rollout of the iSert: A pre-loaded IOL insertion system is a felt need on the part of ophthalmic surgeons and ambulatory surgery centers. With a three-piece acrylic, centration should be excellent, posterior capsule opacification low, and insertion feasible even if placement in the ciliary sulcus is necessary. To compete with Alcon, Hoya will need to develop a far-sighted marketing strategy including the building of a significant sales-force, targeted campaigns to surgeons and facilities, educational events to residency programs & large conferences, and deals on surgical disposal supplies. The iSert itself could further be enhanced for surgical comfort by developing a one handed injector with a spiral stylus and cartridge to enable one-handed delivery with in the bag placement of both haptics & optic.
• Adjustable Intraocular Lens: Calhoun Vision (privately held) has developed a light-adjustable intraocular lens that is in clinical trials. This technology allows refinement using a UV light that modifies the polymers within the lens to desired refractive outcome. Once this is done, a second laser can lock in the refraction. Hoya could explore opportunities to partner (or purchase) Calhoun to develop and market this technology, as well as partner or purchase with an aberrometry company (e.g., the Orange system by Wavetec) to optimize the targeted light adjustment parameters.
• Toric Intraocular Lens: Current toric lenses suffer from either being a single piece silicone design (Staar) or possessing mediocre rotational stability (Alcon). A three-piece acrylic lens would avoid the problems of silicone and likely promote superior rotational stability and thus ease of surgical placement. This would add value to the ophthalmic market.
• Acquisition of Phacoemulsification Capacity: Hoya should explore the opportunity to acquire the cataract surgical business (phacoemulsification machines, surgical packs, instrumentation) of a competitive ophthalmic company (e.g., Abbott Medical Optics, B&L Surgical) to enable synergy in marketing of IOLs with surgical equipment.
• Physician Practice Enhancement: Hoya could partner with practice consultants and management companies to identify and cultivate business opportunities for ophthalmologists in single or group practice. This would dovetail with the rest of Hoya’s ophthalmic program and build brand awareness and goodwill among the ophthalmic community.

(2) Medium Term
• AMD Drug Candidates: Motesanib (a VEGFR/PDGFR inhibitor; Millenium Pharmaceuticals (a Takeda company). CEP-11981 (Cephalon’s VEGF-R/Tie2kinase inhibitor), VEGF-trap (Regeneron) and Macugen microspheres (long-acting pegaptanib; Eyetech) are potential drugs or drug candidates that could find broad application in AMD therapy. These represent promising licensing or partnership opportunities for Hoya
• Development of a Premium Intraocular Lens: The evolution of cataract surgery into a refractive procedure for large numbers of patients with presbyopia and high visual demands is still in its early stages. With the aging of the Baby Boomer population, this market will greatly expand, as this cohort has an affinity for elective medical “enhancement” procedures as well as being large. Hoya has the opportunity to use its materials science infrastructure to develop a novel intraocular lens that could be an injectable polymer with adjustable focus properties. Alternatively, Hoya could develop superior aspheric correcting lenses which correct for higher-order aberrations of the cornea and optical system.
• Drug Delivery Device: Ocular drug delivery has several “pretenders” but no devices which can be implanted by the general ophthalmologist, target glaucoma or wet AMD, or are refillable or versatile. Hoya can partner with pharmaceutical companies or early-stage delivery companies and use its polymer and materials science capabilities to launch an ocular drug delivery platform for the treatment of chronic eye disease (e.g., macular degeneration, glaucoma, diabetic retinopathy) which would eliminate the risks of chronic intravitreal injections and/or the inconvenience & inefficacy of complex topical eyedrop regimens.

(3) Long-Term
• Novel Wet-Field Adhesives: Ophthalmic surgical procedures suffer from an absence of adhesives which retain their coherence in a wet field such as the eye. Hoya could develop a novel adhesive that would have applications in corneal and retinal injury and ocular trauma (of great interest to military applications).
• Advanced BioImaging: Hoya’s internal capabilities in lens technology (both for IOLs and cameras) could be leveraged to develop novel imaging platforms to compete with Heidelberg and Zeiss. Truly 3-dimensional imaging of the cornea and retina remain elusive, and imaging of predictive biomarkers of disease is still the province of university laboratories. Both of these would represent terrific niches for Hoya to synergize its intrinsic strengths and introduce vanguard technology to the field.
• Drug Candidates: Potential drug candidates focusing on neuroprotection, reduction of inflammation, and novel anti-angiogenics are promising long-term opportunities from a pharmaceutical standpoint in ophthalmology.

Strategy for Hoya Growth in Ophthalmics
(1) Near Term
iSert
Physician Practice Enhancement
Adjustable & Toric IOLs
Cataract Surgical Division Acquisition
(2) Medium Term
Drug Delivery Device
Development of a Premium IOL
Acquisition of AMD Drug Pipeline
(3) Long Term
Novel Wet-Field Adhesives
Advanced Bioimaging
New Drug Candidates

By building on a foundation of excellence in lens, imaging, and materials technologies, Hoya Ophthalmics should be able to introduce several best-of-class products to the US market which truly make a difference to patients as well as raise Hoya’s market profile.

2010年5月17日月曜日

日本の企業統治を変える秘密投票議案

6月18日に予定されているHOYA株式会社株主総会への株主提案では、株主総会の決議事項の投票をいわいる秘密投票にするという提案を行っています。

実は現時点では、秘密投票は「法令違反」になります。というのも、議決権行使書面を本店に3カ月だか据え置かなければならない、そして株主は行使された議決権書類を閲覧謄写することができるのです。つまりあなたが行使した議決権行使の書面(いわいる返送するか、株主総会に持っていくはがき)は、ほかの株主が見ようと思えばどのように議決権を行使したか見ることができるのです。したがって、法令が認める範囲で「秘密投票」にし、それが不可能である場合はその限りでない、とする定款変更議案として提出しています。

基本的には、例えば持ち合いの株主、事業上の取引関係にある株主(例えば商社など)、保険会社など投資先としてその会社に投資しているが、保険も買ってもらっているような株主は、現経営陣に反対するような議決権行使は、よほどのことがないと難しいのですが、秘密投票ではそのようなことを心配することなく、自由に議決権行使をすることができるようになります。相撲協会の理事選挙で、秘密投票の威力は直観的には明らかだと思います。こういった観点から、カルパースなどの国際的な投資家は、企業統治の原則として「秘密投票」と推奨しています。

「秘密投票」に反対する立場としては、受託者責任を負う機関投資家に受託者に対する責任を明確化させるため、どのように議決権を行使したか公開した方がいいという見解があります。しかしながら、投資家は投資パフォーマンスに対して投資決定を行うのであって、特定の議決権行使を行わせるために投資するのではないと思いますので、「秘密投票」に反対する理由にはならないのではないでしょうか。

参考文献
"The Myth of Shareholder Franchise" Virginia Law Review, Vol. 93, No. 3, pp. 675-732, 2007 Lucian A. Bebchuk

2010年5月16日日曜日

私の株主運動により丹治宏彰氏が執行役から退任したならば、それは一つの大きな成果だ。

丹治宏彰氏の執行役からの退任のニュースが、HOYA株式会社より発表されています( 「役員異動のお知らせ」2010年5月14日HOYA株式会社)。私は昨年(平成21年6月)の株主総会向けに、丹治氏の取締役からの解任を要求、結果として取締役からは自主的に退任させたが、今年の株主提案でも、まったく何の実績もないにもかかわらず、依然として企画担当の執行役として留まっていること(はっきり申し上げて丹治氏を執行役に指名した指名委員会のメンバー全員の解任をお願いしたい)について、いくつかの方法で問題提起しました。なお去年の提案内容(「平成21年度HOYA株式会社の株主総会における提案内容について」小生ブログ:2009年4月14日)と顛末( 「丹治宏彰氏の実質的な解任に関して、HOYA株式会社の株主総会事務局から書類が送られてきた」小生ブログ:2009年5月31日)は、それぞれのリンク先をご参考にしてください。

大体ここ10年以上、ほとんどすべての投資案件を破産に追い込み、世間の笑い物になったペンタックスの高値掴みを取締役として鈴木洋氏の暴走を黙認し、結果として会社の企業価値に多大な損害を与えた丹治宏彰氏が会社に一応役職があったこと自体が大問題であったのですが、一応丹治宏彰氏の会社役職(現役職は企画担当執行役)からの退任が実現しましたので、良かったと思います。株主提案が一定の成果を上げることができたと思います。

それにしても、会社の発表の仕方が笑ってしまいますね。この人に何か一つでも新規事業において成果があったのでしょうか。今後は材料科学の事業開発に成果のある人物の最高技術責任者の採用を、株主の立場から働きかけていきます。材料科学の会社なのに、機械系のことしか分らない人が、なぜか最高技術責任者にいるのを、なんとしても変えさせましょう。経営戦略に必要なのは、投資分野の集中と選択(眼科と材料科学分野)です。

以下HOYA株式会社ホームページより引用。
2010年05月14日
HOYA株式会社
役員異動のお知らせ
当社の執行役企画担当である丹治宏彰が、2010(平成22)年6月18日開催予定の当社第72期定時株主総会終結のときをもちまして、任期満了により当社執行役を退任する予定であることをお知らせいたします。
丹治氏は1992(平成4)年4月に当社に入社、以来一貫して先端技術の開発、新規事業の開拓等の分野に力を発揮してまいりました。2000(平成12)年6月に当社取締役となり経営に参画し、2003(平成15)年6月には委員会等設置会社への移行に伴い執行役を兼務いたしました。
その後M&A(企業の合併と買収)にも関与し、成長分野であるエレクトロオプティクス部門での買収や、当社で新たな成長分野として位置付けているメディカル分野での新規事業の買収に手腕を発揮いたしました。
同氏はこのように当社の発展に数々の貢献をしてまいりましたが、このたび、ここ数年の懸案事項でありました一部事業の再編プロジェクトが契約締結の運びとなり、これを機に、新しいフィールドでさらなる挑戦をすることを希望し、任期満了に伴い退任するものであります。
当社といたしましては、丹治氏のこれまでの当社に対する貢献を高く評価し、その残した成果をさらに活かして今後の発展を目指してまいります。

丹治宏彰(たんじ・ひろあき)氏 略歴
1952(昭和27)年7月31日生まれ
1992(平成4)年 4月 当社入社
1997(平成9)年 4月 当社R&Dセンター先端技術研究所ゼネラル・マネジャー
2000(平成12)年 6月 当社取締役
2001(平成13)年 6月 当社取締役兼事業開発部門長
2003(平成15)年 6月 当社取締役、執行役兼事業開発部門長
2006(平成18)年 6月 当社取締役、執行役最高技術責任者兼事業開発部門長
2006(平成18)年 7月 当社取締役、執行役最高技術責任者
2009(平成21)年 6月 当社執行役 企画担当(現任)

追伸(2010年7月19日)
丹治宏彰氏が会社の言うように株主価値をつけられるほど優秀ならば、高い給与を提示してでも引き留めるべきだし、それをしていないのはそもそも指名委員会の職務怠慢だと言わざるを得ません。

2010年5月14日金曜日

退任した取締役の報酬を開示させることの企業統治での意味

すでに一部で報道されているように、「退任した取締役の過去10年間の報酬を開示させる定款改正議案」を含む複数の株主提案を、平成22年6月18日に予定されているHOYA株式会社の株主総会に行いました。

なぜ退任した取締役の報酬開示が必要か、それは企業統治のきもは、①まず誰を取締役として選任するか、②そうやって選ばれた取締役にどのようなインセンティブをあたえるか、ということになります。

金融庁主導の内閣府令により、今年4月から1億円以上の報酬を得る取締役の報酬開示が義務付けられます。これは政権交代により、経団連から献金をほとんど貰っていない民主党政権が誕生したことの成果(金融庁は国民新党亀井静香大臣)です。しかしながら私から見れば、極めて不十分であり、取締役の家族に報酬を支払ったり、報酬でない手段で実質的にお金を渡す(例えば取締役の兄弟が国会議員だったら、そこに政治献金やコンサルタント報酬として渡すとか)などの方法が、今後ますます活発になると思います。経営者や取締役と株主の間でのプリンシパル・エージェント関係から生じる最大の問題は、業績努力とは無関係な報酬を、経営者や取締役が受け取ることです。本人らの能力や努力から発生した業績向上以外の理由で、彼らの報酬が上がるのは、社会的厚生の観点からはロスになるのです。基本的に、取締役と執行役の報酬は、基本的には全額株主に開示すべき、どんなに譲っても上位4名は開示するべきです。

今後この会社のみならず、退職してから顧問料やコンサルティング収入などの形で以前の取締役に報酬を渡すという形式がはびこってくると思いますので、この件については、今後より詳細な議論していこうと思います。例えば富士通秋草直之氏が取締役を退任しても、報酬を受け取っていたら、株主としては本当は困るわけです。現に秋草氏らが退任させようとした野副州旦氏(前富士通社長)に、辞める際の口止め料として二億円だかを渡すとか言っていたのをよく覚えておきましょう。私は以前より丹治宏彰氏の取締役と執行役からの退任を求めてきましたが、もし2010年6月の執行役退任後(注:取締役は2009年にすでに退任)も報酬をもらう扱いになっていたら、HOYA株式会社も似たようなものと言わざるをえません。このような状況の放置は、年金の運用先としての資本市場の瀕死を意味すると思います。第一生命さん、日本生命さんの議決権行使担当者の方も、ぜひご考慮のほど宜しくお願いします。

というか、鈴木哲夫名誉会長と山中衛相談役の2名の元取締役の退任後の報酬については、最高執行役鈴木洋氏と彼らは親族であるので、当然開示が求められるべきでしょう。鈴木洋氏の自宅の名義が鈴木哲夫氏であること、すなわち父親の家に住んでいるわけだから、当然です。報酬について関心のある人は、Lucian Bebchuk教授の共著を読んでください。なお私は、経営者の報酬が大きい自体を問題にはしていません。もし今後当社の株価が10年で10倍になれば、最高執行役の報酬が年間100億円でもかまわないと思っています(株主価値を増大させる優秀な経営者には能力相応の報酬を払ってもいいというのが、欧米の機関投資家の標準的な考え方です)。真の意味での問題は、経営者の努力とは無関係な報酬を、取締役や執行役が受け取ること、これを監視するために報酬の個別開示も必要だし、取締役退任後に報酬を受け取っている場合に非公開となっているのは問題なのです。

2010年5月5日水曜日

間違ってはじまってしまった社外取締役制度:椎名武雄と佐伯尚考の両氏には社外取締役の独立性がない

すでに一部報道がされているように、平成22年6月の株主総会へ向けて、HOYA株式会社へ株主提案を行いました。だいぶん株主提案の数が多くなると思います。題目の議論に移りたいと思いますが、私の理解では、やはり社外取締役制度の歴史がまちがってはじまってしまったことが大きいかと。HOYA株式会社のはじめ2人の社外取締役(椎名武雄氏、佐伯尚孝氏)の人選から垣間見れます。理由をまず簡潔に述べます。

まず社外取締役の独立性の「独立」の意味ですが、分りやすく言えば、社外取締役であること以外に会社との関係がないことを言います。詳しくはリスクメトリクス社の石田猛行さんの論文を読んでください。基本線では石田さんの見解に私も同意しています。そういった観点から考えるに以下の事実が指摘できます。なお私は椎名武雄氏や佐伯尚孝氏の社外取締役としての実績には問題があると考えていますが、仮に彼らが大変素晴らしい方だとしても、独立性という意味では問題になるのです。よりよいガバナンスは投資家にとっては保険のようなものであり、業績がいいことが問題のある企業統治が放置されてもいいという発想にはならないのです(どうも日本人には分りにくい発想のようですが)。

①椎名武雄氏はもともとの主要取引先(日本IBM社)の経営幹部なので、そもそも独立性が疑わしい。
②少なくとも開示情報で明らかなように、椎名武雄氏は、少なくとも2003年まで取締役報酬とは別に、自分の個人会社でHOYA株式会社とコンサルティング契約を結び、多額の報酬を受け取っていたことがあります。
③椎名武雄氏の社外取締役としての在任期間が15年となっていますが、少なくとも10年をこえた在任期間を持つ取締役に、「独立性」を認めていいかという問題があります。たとえば日本プロクシーガバナンス研究所という議決権行使助言会社は、8年を越える在任期間を持つ社外取締役の選任議案には、機械的に反対票を投じることを推奨するとしています。
④佐伯尚考氏は三和銀行の前頭取でしたから、いわいるメインバンクの出身者です。債権者と株主の利益は相反するので、融資を行っている銀行の出身者には独立性を認めないというのが、現代の企業統治論の標準的な考え方です。
⑤また三和銀行出身の佐伯尚考氏がHOYA株式会社の取締役となり、HOYA株式会社名誉会長の鈴木哲夫氏が三和銀行の取締役となっていましたが、取締役を交換している主体出身の取締役(「交換取締役:Interlocking Director」)に独立性を認めないのも、標準的な考え方です。

なお平成22年6月の株主総会向けには、交換取締役を禁止する定款規定を導入する定款変更議案の株主提案を行いました。
以上の意見へのコメントを募集します。今後の株主提案の方法などに反映させていきたいと考えています。以下のメールアドレスまで宜しくお願いします。
yy2248[@]columbia.edu([@]を@に変えてください)。

参考
「取締役の独立性の要件―Riskmetricsの見解」(溝渕彰先生のブログ投稿:2010年4月3日)
http://jcorporate-governance-forum.blogspot.com/2010_04_01_archive.html