2010年5月23日日曜日

株主価値が創出されない理由は新規事業のミスマネージメントを10年間続けてきたこと、それを取締役会が放任してきたことの機能不全です

HOYA株式会社の株価動向だけみると、今私がみたデータでは、直近の5年で基本的に日経平均を下回っています。過去の事業開発の貯金が大きく反映された2000年代前半のパフォーマンスを入れて直近の10年で見ても、極めて凡庸な株価パフォーマンスです。優れた企業統治の究極的な目標が、株主に配当増加とキャピタルゲインで報いることだとすれば、現経営陣はその期待を裏切ってきたと結論できると思います。

株主価値破壊の最大の問題は、買収や社内の新規事業への投資の判断が、ここ10年間でたらめであったということです。勿論素人の誰が見ても、ペンタックスの買収は、HOYA株主に多大な損害を与えた失敗です。ただこれだけでなく、直近の10年間で、いわいる新規事業が成功したためしがありません。確かに技術担当の責任者である丹治宏彰氏は去年6月の株主総会で取締役を退任、なぜか執行役には再任されていたものの、今年6月をもって企画担当なる執行役も退任することになりましたが、HOYA株式会社の経営を真摯に考えると、この経営課題を何らかの形で変更しないと、株価が大きく上昇することはあり得ないし、現在の経営体制でもなんら問題点の放置という現状への変更はないと考えています。また詳細は別に述べますが、荻原太郎氏も技術担当の執行役として不適格だと判断しています。

例えば2009年の株主向けアニュアルレポートには、以下のような研究テーマが羅列されていましたが、ここ5年から10年で50億円とか100億円とかの利益を創出すると思われる事業は、ほとんどありません。資料によれば、①ナノインプリント、②3C-SiC、③光通信コネクター、④人工水晶体、⑤スキャニング・ファイバー内視鏡(SFE)、⑥超音波気管支鏡、⑦生体置換型有機無機複合人工骨の開発を行っています。これらの事業が5年後とか10年後に50億とか100億とかの売上なりを創出する事業にならなければ、1000億円の経常利益を創出する会社の潜在的な成長率を底上げすることにはならないはずですが、現状では⑥について情報がなく(ただしこれは既存の内視鏡事業の延長である)、また④⑦以外は、有望でなくほぼ確実にいずれ消えます。④については自社で材料開発を行っていないという決定的な問題がありますが、④と⑦については研究投資として継続することは(ペンタックスが高値掴みであったことを別にして、今となっては)推奨します。なお⑤⑥⑦については、負債を含めて1500億円のコストをかけたペンタックス買収によって得られた事業であるので、どんなに譲って少なくともEBITDA50億円以上に10年でならなければ、投資として成功したとは言えないのです。なお2008年のアニュアルレポートには、「ナノ粒子」なるプロジェクト(有機ELを開発しようとしていたものらしい)が記載されていましたが、2009年のアニュアルレポートではすでに消えています。

一つの分りやすい例として、②3C-SiC(立方晶炭化ケイ素)の開発の問題を記載します。2002年(平成14年)5月発表の、SiC其板の開発、製造子会社のHAST (HOYA Advanced Semiconductor Technology)という会社に関して、2007年(平成19年)での上場を目指すなどと公表され、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とあるが、上場予定の設立5年後の2007年とか、今年6月でいよいよ満8年たっても何の成果もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことから明らかだと思います。

このプロジェクトがスタートした当時は、SiCには、3Cと4Hの方式があり、HOYAは、当初から「3C」の方が基板の大面積化が可能で結果的にコスト競争力がある、との方針から進めてきた経緯があるが、ロームクリー(Cree)等の「4H」勢の躍進やローム自体が「3C」方式を見限ったことにより、世の中は、一気に「4H」に傾いた。基板が大きいことは、逆に結晶成長や不純物(コンタミ等)の影響を受け易いと言う致命的欠点を有している。又、社内的には既に「死に体」となりながら、ゾンビの如く生き延びている研究分野と言われている。半ば「終わった」プロジェクトと言って良い。一説には「父親が始めたPJ(プロジェクト)であるため、止められない」と言う親孝行な噂もあるぐらいであり、想定質問事項として、無計画のまま、ダラダラ投資して来た実態をえぐり出すことが必要がであろう。

<私が株主として行いたい(あるいはCardinal Warde博士が取締役になった時に執行役に説明要求させたい)質問事項>
① ロームやクリーの「4H」方式に対する技術的アドバンテージは何か。
② ロームが既に今年5月に自社SiC基板を用いた「ショットキーバリアダイオード」の量産を開始しているが、HOYAの量産計画と想定製品(ロームと同じ様にダイオードか、他の素子か、例えばMOSFET)の情報を説明せよ。
③ ロームは難しいが、クリー社には「3C」方式の売却は、可能ではないか?
④ ロームは、本田技研工業や日産自動車などと積極的に共同研究を行っているが、HOYAは、何処かの自動車メーカと共同研究を行っているか?例えば、社外取締役を排出している日産自動車との共同研究は、行わないのか?
⑤ 長期に渡り、開発を続けているが、今までの実績を開示いただきたい(費やした研究開発費用と売り上げ・今後の計画と想定顧客等)。2002年時点で5年後に上場とか言っていたプレスリリースは、いったい何なのか?

例えば以上のような問題があっても、鈴木洋氏(最高執行役)や丹治宏彰氏(現企画担当執行役で2010年6月退任予定、取締役は去年6月で退任するもなぜか1年間執行役で社内に留まる)は延々と技術経営のミスマネージメントを続け、そして兼任数の多い社外取締役が過半数からなる取締役会にはそれを是正する意思がまったく見られないため、もし本当に株主価値を真の意味で増加させるような新規事業や研究開発を行わせるためには、取締役の過半を入れ替えるしか方法がないので、今回の株主提案になりました。例えば研究開発を本気で成果あるものにする気があるのならば、指名委員会は、私の推薦するそれぞれの技術分野の専門家であるCardinal Warde博士(電子工学)、Paul Ashton博士(眼科薬物伝達)、Balamurali Ambati博士(眼科医薬、特に加齢黄班変性症の新薬研究)の3人を5月最後の取締役会で次期取締役候補として指名するべきです。以上の例はあくまで一例です。実際に過去9年間のアニュアルレポートを読めば、新規事業で羅列されている研究プロジェクトで、現在の会社のキャッシュフローに貢献している事業は一つもありません。(詳細についてはこの項でなるべく早く加筆しますので、またアクセスしてください)

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