2008年6月14日土曜日

東大の改革の行方をよく見守ろう(1)

私は一応、東京大学の出身者です。大学ではいろいろな方にお世話になりました。海外に出て、世界中からきた学生と大学院で切磋琢磨したり、仕事をして競争したりすると、日本の大学は、大学教育を通じて、国際的に競争しているんだと感じるところがあります。

例えば、インドの名門校インド工科大学(India Institute of Technology)は、インドにある7つの科学・工学系の大学の集合体(日本の戦前旧帝大のようなものです)ですが、学部卒業生の学力のレベルが、大体MITやスタンフォード大学の修士卒業生のレベルであり、ここからコンピューター・サイエンスを筆頭としたアメリカの工学大学院にフェローシップ付きで入学して、著名なサイエンチストになっていく競争力のある学生を多数生み出していることが、インドの工学における世界的な地位をあげているといってもよいと思います。30万人のうち、5000人程度しか入試に通らないのです。(このような競争力のある大学は、例えばイランのSharif University of Technologyもその一例です)。

インド工科大学の記事
http://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Institutes_of_Technology

Sharif University of technologyのホームページ
http://www.sharif.ir/en/
http://en.wikipedia.org/wiki/Sharif_University_of_Technology

はたして何人の東大教官が、自分たちはインド工科大学やイランのトップの大学と競争しているという意識を持っているのでしょうか。たとえば私が以前に見たコンピューター・サイエンスの分野での引用数では、トップ1000に入っている日本人の研究者はたった一人だったと記憶しています。

私は経済学やコンピュータ・サイエンスなどの分野での学部教育のレベルについて、コメントできる実経験を持っていますが、東大といえども、MITやスタンフォードのみならず、インドや途上国でのトップ大学との比較でも、レベルが少し低すぎるように感じています。

さてわが出身大学ですが、授業料600万円のリーダー養成講座をはじめるという記事。
http://www.j-cast.com/tv/2008/06/12021669.html

日本の大学は、東大をお手本として動いていくことは否定しきれないわけですから、東大の行方には日本の大学教育の将来がかかっていくといっても過言ではありません。私の外部から見た印象では、小宮山宏総長になってから、大分正しい改革の方向性へ舵が切られたように見えます。大学の独立行政法人化により、変わらざるをえないということなのかもしれませんが。

ハーバード大学やエール大学などでも、短期の講座で大学が収入をあげるということは普通に行われています。国際的に競争力のある大学としては、収入もあげなくてはならないのですから、方向性は正しいのでしょう。

東京大学のページ
http://www.u-tokyo.ac.jp

ハーバード大学のページ
http://www.harvard.edu

エール大学のページ
http://www.yale.edu