2010年3月15日月曜日

「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)」等の公表についてのパブリックコメント

株主提案などの経験も踏まえて、金融庁にパブリックコメントを行いました。
「『企業内容等の開示に関する内閣府令(案)』等の公表について」のパブリックコメント
 2010年3月15日 山中 裕

 日本の企業統治は、経営者が会社を自分の私物のように扱うことが多く、「会社は株主のもの」という日本以外の先進国での常識が全般的に理解されていない。取締役を株主の代理人という受託者責任の明確化は、労働者や地域雇用のために株主利益を犠牲にしてもいいという根拠を与えてしまうと、結果として会社内部の資源の配分を経営者の自己利益のために図ることを認めてしまうことになるから必要である(80年代の北米でも後半に見られた現象)。より多くの富を持つ者の方がより多くのリスクを取りより大きなリターンを得られるという現実があるが、所得分配の問題はベイシック・インカムの導入や、北欧などにある失業者の再教育システムを強化することで対応するべきであり、「会社が株主のもの」という商法上の原則を崩すことは、経営者の広大な裁量権を認めてしまい、今の日本経済がそうであるように、経済全体での非効率を広範に認める結果となる。
 役員報酬については、投資家が役員報酬の妥当性を検証できるようにするために、基本的には役員報酬は額にかかわらず、(社外取締役を含む)取締役と執行役の全額を開示するべきであると考えるが、より重要な論点は、役員報酬を株式の長期保有と経営陣のパフォーマンスに応じた業績連動型を組み合わせ、ストック・オプションは日経平均や産業別のインデックスを用いたインデックス型のオプションを用いるべきである。また開示される報酬以外に実質的に報酬を得ることが、年金やその他のベネフィットを得ることで可能なことにも注意が必要であるし、取締役や執行役の家族がプット・オプションを所有することも、情報開示や禁止をするべきである。株主持ち合いは、非効率な投資であることが多く、議決権行使をゆがめ、結果として株主軽視と経営陣の保護になるので、株式保有目的は明確に開示し、少数株主の責任追及が可能な情報を広くアクセス可能な状況にするべきであるし、議決権行使結果については、臨時報告書において、株主総会における議案ごとの議決権行使の結果(得票数等)を開示することは、投資家が投資を行う際に現状の投資家の投票行動が参考になるので、望ましいことだと考えられる。
 日本の企業統治を改善する方法は、①取締役選任において累積投票を義務化、②株主総会決議の秘密投票の2点が重要である。現在の取締役の選任方法は、ほとんどの上場企業で「取締役の選任は累積投票によらない」という定款上の定めがあるため、49%を保有する株主は、51%の株主が反対票を投じた場合には、一人の取締役を選出することもできない。結果として、少数株主の利益を無視した経営が公然とまかり通る。社外取締役や社外監査役の選任(たとえば民主党公開会社法の試案にある労働者代表の監査役就任の強制)を義務付けたとしても、現状では主に現在の経営陣や取締役側が選任権を実質的に持つのであれば、社外取締役や社外監査役の制度はあまり意味をなさないと思える。取引先や保険会社や株式持ち合いの株主が、現経営陣に反対の票を入れることは、取引中止の恐れなどから難しいので、株主総会決議を秘密投票にすることは、問題のある経営陣を解任する可能性を担保する意味で重要である。累積投票も秘密投票も、カリフォルニア公務員年金基金(CalPERS)などほとんどの機関投資家が推奨している企業統治原則である。
 今回の金融庁の企業内容開示府令案は、不十分な側面もあるが、基本的には投資家保護の観点から妥当な内容が多く、累積投票や秘密投票などの会社法の改正を立法化とセットになれば、日本の資本市場と年金の運用にとっても極めて有意義なものとなる可能性が高いと考えられる。

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