2010年5月5日水曜日

間違ってはじまってしまった社外取締役制度:椎名武雄と佐伯尚考の両氏には社外取締役の独立性がない

すでに一部報道がされているように、平成22年6月の株主総会へ向けて、HOYA株式会社へ株主提案を行いました。だいぶん株主提案の数が多くなると思います。題目の議論に移りたいと思いますが、私の理解では、やはり社外取締役制度の歴史がまちがってはじまってしまったことが大きいかと。HOYA株式会社のはじめ2人の社外取締役(椎名武雄氏、佐伯尚孝氏)の人選から垣間見れます。理由をまず簡潔に述べます。

まず社外取締役の独立性の「独立」の意味ですが、分りやすく言えば、社外取締役であること以外に会社との関係がないことを言います。詳しくはリスクメトリクス社の石田猛行さんの論文を読んでください。基本線では石田さんの見解に私も同意しています。そういった観点から考えるに以下の事実が指摘できます。なお私は椎名武雄氏や佐伯尚孝氏の社外取締役としての実績には問題があると考えていますが、仮に彼らが大変素晴らしい方だとしても、独立性という意味では問題になるのです。よりよいガバナンスは投資家にとっては保険のようなものであり、業績がいいことが問題のある企業統治が放置されてもいいという発想にはならないのです(どうも日本人には分りにくい発想のようですが)。

①椎名武雄氏はもともとの主要取引先(日本IBM社)の経営幹部なので、そもそも独立性が疑わしい。
②少なくとも開示情報で明らかなように、椎名武雄氏は、少なくとも2003年まで取締役報酬とは別に、自分の個人会社でHOYA株式会社とコンサルティング契約を結び、多額の報酬を受け取っていたことがあります。
③椎名武雄氏の社外取締役としての在任期間が15年となっていますが、少なくとも10年をこえた在任期間を持つ取締役に、「独立性」を認めていいかという問題があります。たとえば日本プロクシーガバナンス研究所という議決権行使助言会社は、8年を越える在任期間を持つ社外取締役の選任議案には、機械的に反対票を投じることを推奨するとしています。
④佐伯尚考氏は三和銀行の前頭取でしたから、いわいるメインバンクの出身者です。債権者と株主の利益は相反するので、融資を行っている銀行の出身者には独立性を認めないというのが、現代の企業統治論の標準的な考え方です。
⑤また三和銀行出身の佐伯尚考氏がHOYA株式会社の取締役となり、HOYA株式会社名誉会長の鈴木哲夫氏が三和銀行の取締役となっていましたが、取締役を交換している主体出身の取締役(「交換取締役:Interlocking Director」)に独立性を認めないのも、標準的な考え方です。

なお平成22年6月の株主総会向けには、交換取締役を禁止する定款規定を導入する定款変更議案の株主提案を行いました。
以上の意見へのコメントを募集します。今後の株主提案の方法などに反映させていきたいと考えています。以下のメールアドレスまで宜しくお願いします。
yy2248[@]columbia.edu([@]を@に変えてください)。

参考
「取締役の独立性の要件―Riskmetricsの見解」(溝渕彰先生のブログ投稿:2010年4月3日)
http://jcorporate-governance-forum.blogspot.com/2010_04_01_archive.html

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

全くもって正論だと思います。今の社外取締役は経営者を守るための仲良しクラブが多いような気がします。今の財界は老人の延命装置で、社外取締役制度はそういう財界老人たちにとって、寿命を伸ばす新たな薬ではないでしょうか。
ただ米国でも同じように、社外役員制度が経営者を守る仲良しクラブに堕している会社も多いように思います。間違って始まったと解釈するよりも、あえて違う目的で意図的に取り込んでいるとも考えられますが。