2008年7月24日に発表されている「全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞」の研究成果でもある無機ELに関する研究開発を、2010年春ごろに突如中止していたことが判明しました。この研究グループは、大阪大学の松尾先生の研究室と、科学技術振興機構(略称JST)とのあいだで共同研究していたものであり、非常に高い評価を得ていたのに、突如としてその研究成果である機械等を寄贈してしまうなどの前代未聞の行為を行っています。小生が去年の株主総会で主張したように、萩原太郎氏は早急に退任するべきです。
なお当社においては、執行役候補の取締役会への上程権限が指名委員会にあることから、特に責任のある指名委員長椎名武雄氏と、塙義一氏についても、提訴対象としました。
株主代表訴訟に係る提訴請求書
〒161-8525
東京都新宿区中落合2丁目7番5号
H O Y A 株式会社 監査委員会 御中
H O Y A 株式会社 監査委員会委員長 児玉幸治様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 椎名武雄様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 茂木友三郎様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 小枝至様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 河野栄子様
平成23年5月16日
H O Y A 株式会社 株主 山中 裕
前略 私こと山中裕は、六ヶ月前より引き続き貴社株式を保有する株主である(会社法八百四十七条一項参照)。
貴社は、2008年度のアニュアルレポートにて、研究開発活動の一つとして、「ナノ粒子」の項目を設け、「ナノ粒子とは、粒径が数ナノメートルの超微小な粒子のことです。金属やセラミクスなどの材料をナノサイズまで小さくすると、その材料の性質が変化し、発光など新しい機能がうまれたりします。HOYAは、さまざまなナノ粒子の分散・表面改質技術の研究に取り組んでおり、これらをうまく組み合わせることで新しい物性をもった複合材料の開発に挑戦しています。今季は高屈折率工学部品や磁気媒体関連分野での応用を目指します」(27ページ)と記載するなど、3年前の時点でも目玉プロジェクトの一つとして宣伝していた無機ELに係る研究開発プロジェクトを、2010年春ごろに一方的に脈絡ない技術経営判断の結果、中止した。
当該研究開発は、2008年7月24日の当社プレスリリースでも、「全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞」などとして、「この度、HOYA株式会社 R&Dセンター QD-EL研究グループ(小林哲 主任研究員、谷由紀研究員)は、川副博司 東京工業大学名誉教授と共著の全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子に関する論文が認められ、(社)応用物理学会より第30回(2008年度)応用物理学会論文賞(JJAP論文賞)を受賞することとなりました」と、重要な研究開発活動の成果であるとして、3年弱前の時点でも、投資家に広く公表されている。
さらには係る研究開発の蓄積として社内独自に長年改良を行っていた機械を、大阪大学松尾研究室に、ほぼ無償で寄贈するという暴挙に至っている。当該製造技術等の構成は、二十メートル四方のクリーンルームとカスタムメイドの備品からなり、これらを再び初めから構築しようとすると少なくとも二十億円程度の費用が発生することは明らかである。
また人材の育成が企業としての主要な競争力の源泉であるにもかかわらず、このような顕著な研究開発の能力を持つ小林哲研究員を、社外(本ケースではサムソン電子)へ転職させ、引き留める積極的な行動も行わなかった。
以上のような多額の費用を費やしたはずの当該プロジェクトを一方的に中止する等の意思決定については、最低限の分析を行えば、これら意思決定は技術経営の観点から不適切であることは、簡単に理解できたことである。技術開発に何ら成果がないことは、株価を長期低迷させる主因の一つとなっている。このような会社に多大なる損害を与えた執行役(技術担当)の萩原太郎氏の業務執行行為は任務懈怠を始めとする善管注意義務(ないしは忠実義務)に違反する行為と言わざるを得ない。
加えて、萩原太郎氏が技術担当執行役に就任した平成二十一年六月以降、新規事業に関する技術開発には何ら成果がなく、萩原太郎氏の業務執行行為により発生したこれら投資に関する損害についても、萩原太郎氏は善管注意義務(ないしは忠実義務)違反として損害賠償責任を負うべきである。
前記、萩原太郎氏の善管注意義務(ないしは忠実義務)違反の結果、発生した貴社に対する損害額は、第一に長年にわたった研究開発の成果であるところの機械を大阪大学にほぼ無償で寄贈した二十億円程度の損害額、第二に当該プロジェクトを継続あるいは少なくとも社外に売却した場合には、機械を除いても、最低でも三十億円程度の金銭的価値を生み出していたと予想されることに係る機会費用であり、合算して総額約五十億円の損害が貴社に対し発生したと認められる。これら算出額は、仮に当該研究開発プロジェクトに少数持分投資した場合には、投資前価値が五十億円程度になることは容易に予想されるうえ、逆に当社が同研究開発活動を買収した場合には百億円以上の費用が発生することを考えれば損害額の下限と言ってもよい。
さらには、萩原太郎氏が技術担当執行役に就任して以来、光通信部品、3CSiC、微細加工の主要プロジェクトについて何一つ進捗についての成果が見られず、一つも新規技術開発に係る起案がなく、本来新規プロジェクトを起案し新たな事業を起こす事がR%Dセンターのミッションである事を考慮すると職務怠慢とも言える行為であるが、そもそも萩原太郎氏は東京大学の機械工学科(学士)を卒業しており、日産自動車入社後も車のボディーの開発などに主たる時間を費やしていた人物であり、硝子研磨や加工などの材料科学や眼科領域、光学あるいは医療機器(旧ペンタックス内視鏡分野は赤字に転落しているが売り上げはまだ大きい)を主たる事業分野とする当社の技術担当執行役として適格性がないことはもともと明らかである。一般に他社の例を見ても、企業の研究会開発部門の長に任命される者は、①博士の称号(最低でも修士)を有する、②学界や特定の研究機関で顕著な活躍がある、③海外留学経験がある等の条件を満たす必要があるが、萩原太郎氏には、それに匹敵する研究機関での実績や外部研究機関からの賞賛の実績が全く無い。萩原太郎氏が前職で従事していた燃料電池のプロジェクトも、日産自動車で不要となった部門であり、なんら成果もなかった。従って以上のような背景の人物が技術担当執行役として不適切であることは、元社外取締役で日産自動車名誉会長(当時)の塙義一氏であれば容易に理解していたことである。自社で不要となった人材を、自らが社外取締役となる会社に押し付けた背任的行為ともみなすことができる。
従って、かかる実績の存在しない人物を技術担当執行役として取締役会への推薦を行ったことについて、塙義一氏ならびに指名委員長である椎名武雄氏については、善管注意義務違反、あるいは忠実義務違反が認められることは明らかであり、萩原太郎氏の指名に特に責任のある2名については、最低でも二年分の研究開発費の六十億円の十分の一である六億円程度の賠償責任を負うと解するべきである。
従って、会社法八百四十七条一項に基づき、貴社の技術担当の執行役である萩原太郎氏を被告として約五十億円、塙義一氏と椎名武雄氏については約六億円の損害賠償を請求する訴えを提起することを貴社に対し、請求する。早々
参考
全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞
2008年7月24日 HOYA株式会社 R&Dセンター
この度、HOYA株式会社 R&Dセンター QD-EL研究グループ(小林 哲 主任研究員、谷 由紀 研究員)は、川副 博司 東京工業大学名誉教授と共著の全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子に関する論文1)が認められ、(社)応用物理学会より第30回(2008年度)応用物理学会論文賞(JJAP論文賞)を受賞することとなりました。
受賞対象の論文に著された素子は、その構成部材を全て無機材料とした面状自発光素子(エレクトロルミネッセンス素子: EL素子)です。化学合成手法によるコロイダル量子ドットを発光層の原材料に用いることにより、CRTに比肩する純色の自己発光を実現できることが特徴です。
コロイダル量子ドット: QDは、液相にて化学合成され、表面を界面活性剤有機分子で覆われた、数ナノメートルの直径を有する半導体ナノ結晶であり、極めて色純度の良い高効率の蛍光を発する優れた発光材料として知られています。しかし、その表面に存在する界面活性剤や、QDを分散させる為に用いられる有機溶剤に由来する有機物の存在が、無機材料で構成される発光素子への応用を拒んできました。
QD-EL研究グループは、コロイダルQDから有機物を除去しつつも、QD構造を保存し、高効率純色発光特性を有する半導体発光活性薄膜を比較的低温で形成できる成膜技術を既に開発しています 。この度、二重絶縁層型薄膜EL素子の発光活性層の形成に新成膜技術を応用し、初めて量子ドットからの高純色自発光(電子・正孔の量子閉じ込め準位間発光)に成功いたしました。過酷な環境下でも、全無機構造が高い信頼性をもたらすことが期待できます。また、プラスティック基板を使用することが可能で、さらに全ての電極に透明導電材料を用いることで、フルカラーのフレキシブル透明ディスプレーも構成可能です。今後は、各構成部材の調製を行い、高輝度化のための開発を行っていきます。
本件に関するお問い合わせ:
196-8510 東京都昭島市武蔵野3-3-1
HOYA(株) R&Dセンター
企画部 探索評価 QD-EL担当
liquid@sngw.rdc.hoya.co.jp
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*1 “Quantum Dot Activated All-inorganic Electroluminescent Device Fabricated Using Solution-Synthesized CdSe/ZnS Nanocrystals” Jpn. J. Appl. Phys. 46, L966 (2007)
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