2011年5月5日木曜日

サンテック株主提案

サンテック株式216,000株を保有する株主2名が、同社に対して、以下の株主提案を行った模様あり、世襲の場合の情報開示の議案も提出されました。

1 株主提案の内容(議案の要領)

(1) 第64期利益処分案承認の件

第64期の利益処分案として、1株につき20円の配当を行う。

(2) 自己株式消却及びそれに伴うその他の剰余金の処分の件

保有する自己株式のうち、200万株を消却する。これに伴い、別途積立金を1,000百万円減少させ、繰越利益剰余金を1,000百万円増加させるその他の剰余金の処分を行う。

(3) 取締役2名解任の件

取締役八幡欣也及び取締役八幡信孝を解任する。

(4) 定款一部変更の件(取締役社長の世襲に関する情報の開示義務)

「取締役会が、過去2代に翻って取締役社長を務めた人物の2親等内の親族を取締役社長に選任する場合には、世襲の潜在的批判があるにも拘らず、特にその人物が取締役社長に最適であると判断した理由を株主に開示しなければならない。」という条項を、定款に規定する。

(5) 定款一部変更の件(株主提案権行使の適時開示義務)

「株主総会に向けて株主提案権が行使された場合は、行使されてから1週間以内に株主提案権行使の事実を株主に開示しなければならない。」という条項を、定款に規定する。

(6) 定款一部変更の件(白票を会社側提案については賛成、株主提案については反対とすることの禁止)

「株主総会の議決権行使書面において賛成とも反対とも記載されていない白票については、会社側提案と株主提案で不公平な取り扱いをしてはならない。」という条項を、定款に規定する。



2 提案理由

議案(1)について

当社は、長年に渡り(第53期以降)1株当りの配当額を毎年10円に据え置き続けてきました。第60期・第61期には、各々12円・13円に増配したものの、そのうちの各々2円・3円分は特別配当・記念配当の扱いで、第62期には再度10円に減配しています。普通配当を10円にする事に拘っているとしか思えませんが、この10円という配当金額には、合理的な根拠は皆無であり、「安定配当」の名の下に、長年続けているから、という理由だけでこの配当金額が継続されてきたものと言えます。実際に、株主総会の場でも、あるいは前期までの株主総会参考書類に記載された株主提案に対する取締役会の反対意見に於いても、ただの一度も10円配当に拘泥する定量的な理由が説明された事はありません。
一方、当社の連結ベース(以下、数値は全て連結ベースです。)の1株当り株主資本(評価・換算差額等を含む、以下同じ)は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で1,319.58円あるのに対して、市場に於ける株価はこの水準の約1/4という驚くべき低水準にあります。
1株当りの株主資本は、会社の「解散価値」と言えるものです。最悪期は脱したとは言え長引く株式市場の低迷により、1株当りの株主資本を株価が下回っている企業自体は多数あるものの、株価がこの水準の約1/4程度まで低迷している当社のようなケースは、信用不安のある企業、バランスシートに多額の含み損を抱えていると思われる企業(一部の不動産関連企業など)を除けば稀であり、極めて異常な状態です。
当社が、バランスシートに含み損を抱えていたり信用不安がある訳でもないのに、このような異常な低株価に喘いでいる原因としては、当社が、株主から運用を付託された株主資本を有効に活用し、期待される利益を計上する事が出来ていない状態が長年に渡り続いているにもかかわらず、経営陣にこの状態を改善する意思と能力が無いことを市場が察知しているためであると思われます。
一般的な前提に基づき当社の株主資本コストを試算すると、約6%程度であると思われます。3年前の第61回定時株主総会において、当社社長も同内容の答弁を行っています。株主資本コストとは、会社が株主資本を最低この利回りで運用しないと、株主資本の拠出者である株主が損害を被っている、と看做される利回りと言えます。長年に渡り、当社の当期利益の水準は、この株主資本コストを満たす水準(17.5億円程度)を大きく下回り続けており、第64期(平成23年3月期)の会社予想においても同様です。これは、株主資本が過剰であることが原因です。
一方、当社は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点において、現預金だけでも112億81百万円保有しています。現預金に有価証券9億99百万円、投資有価証券31億45百万円を加えた広義の現金等価物は154億25百万円にも上り、これは株主資本の約55%に相当します。これに加えて、本業とは無関係な投資用の不動産も36億73百万円保有しています。それに対して有利子負債は、短期借入金が3億64百万円存在するのみであり、極めて安定的な財務状況にあると言えます。また、配当原資である利益剰余金も、258億68百万円と膨大です。
当社の業態は、多額の設備投資を必要としない電気工事業であり、現金性の資産を過剰に保有する必然性は極めて低いものと考えられます。
当社取締役会は、第60期の株主提案に対する反対意見の中で、「設備工事業界は(略)工事施工に際して瑕疵担保責任も有しており(略)自己資本の厚さや不測の出費をまかなうだけの手許資金の余裕が極めて重要」であることを増配に反対する理由の1つにあげていますが、単体ベースの完成工事補償引当金は僅か2,100万円に過ぎません(単体ベースの最新のデータである平成22年3月末時点)。広義の現金等価物を154億円も溜め込みながら増配を拒む理由としては、あまりにも荒唐無稽です。しかも、手許に保持すべき資金の具体的な金額についての説明は、株主総会において何度説明を求めても、全くなされていません。また、手元資金の余裕が重要だと言いながら、直ぐには現金化できない投資不動産に多額の投資を行っているのも、矛盾していますし、わざわざ手数料を払って57億円ものコミットメントライン契約を毎年更新し続けている(最新更新日平成23年2月22日)意味がありません。
とは言え、我々提案者は、一部のいわゆる「ハゲタカファンド」のように、保有する現預金を全て株主に還元すべきである、などという極端な主張をするつもりは毛頭ありません。
当社の第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点に於ける自己株式を除いた発行済株式数は2,142万3,000株ですから、1株当り20円の配当を行っても、配当金総額は僅か4億2,846万円に過ぎません。当社が第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で保有する現預金だけでも、この26倍強ありますし、同じく広義の現金等価物は、この36倍あります。利益剰余金は、この60倍強あります。1株当り20円の配当を行っても当社の財務状況には何らの問題も生じ得ないことは明らかですし、この配当金額は、毎年継続して配当可能な金額であることも明らかです。
株主資本配当率という指標が近年大きな注目を集めており、大手企業などを中心に、株主資本配当率に基づき、配当金額の下限を定める企業が増えてきています。
これは、株主から運用を付託された株主資本に対して、最低でも、ある一定の利回りで配当を行う、という考え方です。会社が高成長の段階にあり、資金需要が豊富な企業には、この考え方は必ずしも最適とは言えませんが、当社は、売上も安定的であり、そのような企業に分類されるとは考えられません。業績の高成長を望めない企業は、株主資本配当率で最低の配当金額を決めるのが妥当だと思われます。
1株あたり20円の配当は、株主資本配当率僅か1.49%の水準に過ぎません。株主は、株価下落リスクを引き受けて投資を行っている訳であり、少なくともリスクの無い国債・社債等の利回りよりも高い株主資本配当率があって然るべきです。会社側の配当予想の10円では、株主資本配当率は僅か0.74%に過ぎず、あまりにも低過ぎます。
なお、従来、株主総会に於いて、社長の八幡氏は、配当金額を上げない理由として、「当期利益を上回る配当はしない主義だ」という趣旨の事を繰り返し述べていましたが、我々提案者は、上述の理由から、この考え方自体が、当社の様に、既に成長段階にはなく、過剰に株主資本を貯め込んでいる上場企業には適切では無いと考えております。また、現実には、1株当たり当期利益が1.60円だった第61期に13円の配当を行い、同じく15.07円だった第62期に10円の配当しか行わないなど、会社自身がこの意味不明な「当期利益ルール」に縛られていない事は明らかです。
また、取締役会が、当株主提案に対する反対理由として、以前リーマンショックを口実にした様に、今回の東北大震災を引き合いに出してくる可能性があるので、事前に釘を差しておくと、前述の様に、当社は多額の設備投資を必要としない電気工事業です。実際、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点に於ける土地を除く固定資産の残高は17億59百万円に過ぎず、前述した当社の株主資本、現預金等に比べ僅かな金額に過ぎません。これらの設備は一箇所に集中して所在する訳でもなく、当社にとって大震災のリスクは僅少です。実際に、当社の株価は、震災前の3月9日終値が287円だったのに対して、復興需要期待もあってか、4月26日時点では334円と上昇しているくらいです。これらの事実からは、大震災リスクは僅かな金額の増配を拒む事由には成り得ません。
以上の理由から、1株当たり20円の配当を提案いたします。

議案(2)について

当社は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点において、発行済株式の10.0%に相当する238万2000株の自己株式を所有しています。当社は、「第64期利益処分案承認の件」(株主提案)の提案理由で詳細に説明したように、財務状況は磐石であり、過大な現預金、現金等価物を保有しています。また、当社の業態は、多額の設備投資を必要としない電気工事業です。従って、株式市場から資金を調達する必要性は、予見できる将来において極めて乏しいと思われます。
自己株式を保有していると、取締役会の決議だけで自己株式を処分される恐れがあります。現状のように、当社の株価が1株当り株主資本を大きく下回る状況下で、時価で自己株式を処分されると、割当先がどこであれ、処分方法が公募であれ第三者割当であれ、1株当り株主資本が減少し、また1株当り利益が希薄化し、株主共通の利益が大きく毀損されます。
当社取締役会は、第62期の株主提案に対する反対理由の中で、「現行法上自己株式の処分は、会社成立後の株式の発行と基本的に同様の規制に服しており、仮に自己株式を消却しても、自己株式の処分と基本的に同じ手続を通じて、株式を発行することができる」から、自己株式の消却をしても意味がないと主張していますが、では、何故多くの企業が自己株式の消却を発表すると市場に好感され、株価が大幅に上昇するのでしょうか?我々提案者は、自己株式を消却する行為を、株式の希薄化を防ごうとする会社側のコミットメントと市場が受け止めるので、このような現象が起きるのだと理解しています。確かに、自己株式の処分も新株の発行も取締役会決議で可能ではありますが、新株発行の方が自己株式の処分に比べてより「大義名分」を求められ、実行のハードルが高い、というコンセンサスがある訳であり、自己株式を消却する事に実際上意義がある事は明らかです。
また、自己株式の処分と基本的に同じ手続を通じて株式を発行出来るのであれば、何故、会社側は自己株式の消却に反対するのでしょうか?万が一、どうしてもエクイティ・ファイナンスを行わなければいけないような危機的な状況が生じた場合は、それこそ新株発行をすればいいのであり、発行済株式の1割もの大量の自己株式を所有し続け、消却に反対する論理的な理由は皆無です。
会社側は、M&Aに必要であるといった反論をするかもしれませんが、M&Aを行う際には過大に保有している現預金・有価証券を用いればよいのであり、自己株式を用いる必然性は全くありません。現実的に使い道がない自己株式を消却し、将来的な株式価値の希薄化の可能性を減らすことは、既存株主全ての利益に適うことであり、238万株余の自己株式のうち、200万株の消却を提案いたします。
なお、自己株式の消却に伴い、会計上、繰越利益剰余金が減少することになります。第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で自己株式の帳簿上の価格は9億49百万円ですので、必要な会計上の手当てとして、245億円ある別途積立金を10億円減少させ、繰越利益剰余金を10億円増加させる、その他の剰余金の処分を行うことを併せて提案いたします。

議案(3)について

八幡欣也氏の解任について

現在、社長の八幡欣也氏は、昭和38年以来47年の長きに渡って当社の取締役を務めており、また、昭和61年に当社社長に就任以来24年の長きに渡って当社社長を続けています。どちらも、上場企業としては極めて異例です。
取締役に定年を設けるべきという昨年の株主提案に対する取締役会の反対理由の中に、「取締役候補者は、経歴、経験、人柄、能力、年齢等を総合的に判断してその都度決定し、株主総会に推薦しております」という記述がありましたが、この異例の長期在任や、長男の八幡信孝氏への世襲を企図していることから分かるように、客観的に見ればそのような事は行われておらず、八幡家が当社を私物化していることは明らかでしょう。
また、会社と利害関係の無い立場から、株主に代わって会社の運営を監督する役割が求められる社外取締役が、未だに当社には1名もおりません。当社は上場企業であるにも拘らず、資本コストや株主利益を考慮した経営が行われているとは言い難く、こうした経営の結果、株価も「解散価値」である1株当り株主資本の約1/4という極度の低迷を続けており、株主共同の利益の観点からも、また、上場企業としてのコーポレートガバナンスの観点からも問題が山積しております。これは、八幡欣也氏が、サンテックが八幡家のものである、といった誤った認識を持っている事にも原因があると思われます。
更に、株主総会に於ける答弁や、株主総会招集通知に於ける取締役会の意見の中では、八幡欣也氏の行為には問題がないという強弁が度々なされていますが、以下の客観的な事実が存在します。
まず、第61期中の関連当事者との取引として、株式会社共立ハウジング(以下、共立ハウジング)への資金の貸付が行われました。共立ハウジングは、八幡欣也氏が代表取締役を務める八幡家のファミリー企業ですが、当社の関連会社ではありません。つまり、この会社に対して、当社が好条件の取引を行う必然性も利益を供与する必然性も全くありませんでした。
共立ハウジングの財務情報は入手できませんが、(株主提案者は)経営状態は芳しくないと仄聞しています。そのような会社に、当社が1億5,000万を貸付ける必然性は全くありませんでした。仮に、経営状態に問題が無い企業なのであれば、金融機関から資金を借り入れればよいだけの話です。3年前の第61回定時株主総会に於ける八幡欣也氏の答弁で判明したのは、この共立ハウジングに対する貸付けの際の利率が、短期プライムレートだったという事実でした。
上場企業である当社にとって、当社の関連会社でもない会社で、かつ、代表取締役である八幡氏のファミリー企業に対して貸付けを行うようなことは、利益相反取引であり、行うべきではなかった事は言うまでもありません。また、短期プライムレートのような低金利での借り入れができるような企業ではない共立ハウジングに対して、短期プライムレートで貸付を行うことは、利子の差額分を利益供与したのと同じです。最終的に貸付金が返済されたから問題は無かった、という話では全くありません。
第61回定時株主総会に於いて、八幡欣也氏は、担保を取っていたこと、取引が取締役会で了承されたことを理由に問題が無い旨を述べました。また、貸付けた理由としては、取引先だから、と説明しました。しかし、共立ハウジングは、その担保を当社ではなく金融機関に差し出して貸付を受ければ良かった筈で、それが出来なかったために当社を頼ったのであれば、担保に問題があった可能性があります。また、このような利益相反取引を取締役会が了承した事は、当社のコーポレートガバナンスが機能していないことの証ではあっても、八幡氏の責任を減じるものではありません。
既に、第58回定時株主総会に於いて、株主(株主提案者ではない)から、共立ハウジングの業績が良くないようだが、サンテックから資金援助を行う恐れは無いのか?という質問がなされていました。この質問に対して八幡欣也氏は、そのようなことは行うつもりは無い、と明確に否定していました。この2年以上後に行われた共立ハウジングへの貸付けは、第58回定時株主総会における八幡氏の答弁の内容と異なるものであり、同氏は、株主総会において虚偽答弁を行ったことは、否定しようがありません。
株主総会に於ける虚偽答弁という事に関して言えば、昨年の株主総会に於いても、八幡欣也氏は、平成22年度から開始する第9次中期経営計画の数値目標を早期に開示する旨の答弁をしていたのにも拘らず、平成23年4月現在、未だに何らの開示も行われていません。
また、株主提案者は、ここ数年の株主総会の度に、海外工事に付随するリスクを管理する体制を整備すべきだという提言を何度となく行って来ましたが、その度に、八幡欣也氏は、対策を行っている旨の答弁を繰り返してきました。しかし、当期(第64期)に於いても、第3四半期末時点で既に3億54百万円の為替差損を計上するに至っています。第63期には、海外工事の売上債権に関する貸倒引当金繰入で9億83百万円、海外子会社に関する債務保証損失引当金繰入で1億99百万円の損失を出しており、第62期には2億73百万円の為替差損を出しています。日本市場の縮小に鑑みれば、当社としても海外工事に活路を見出さなければならない情勢であると思われますが、八幡欣也氏が、経営トップとしてこういった情勢に全く対応出来ていない事は明らかです。
このように、長年の経営不振や、社外取締役をおかずに世襲を企図している事に象徴されるコーポレートガバナンスの欠如に加えて、ファミリー企業との利益相反取引や、株主総会に於ける虚偽答弁などを鑑みれば、八幡欣也氏には、上場企業である当社の取締役としての適格性が著しく欠けていると判断せざるを得ません。
よって、八幡欣也氏の取締役解任を提案いたします。
なお、会社側は、昨年の株主総会で八幡欣也氏が選任されていることをもって、解任すべきではないと主張するかもしれませんが、上記の通り、昨年の株主総会以降にも解任に相当する事由は存在している訳であり、改めて同氏の取締役としての適格性を株主総会に諮るべきであると考えます。

・ 八幡信孝氏の解任について

八幡信孝氏は、上記の通り社長の八幡欣也氏の長男です。平成9年10月に当社に入社後、僅か6年半後の平成16年6月に29歳の若さで当社の取締役に就任しており、明らかに特別扱いの人事が行われております。同氏が特別の業績を残している形跡は全くありません。世襲を目論んだ人事であることは明らかです。
仮に世襲を企図しているとしても、同氏が若くしてその重責をこなしているのであれば、同氏に関する人事を株主が許容する余地が無いとは言えません。しかし、現実は異なります。
平成16年6月に、当社は、学校法人東北文化学園・学校法人友愛学園に対する総額4億82百万円(学校債3億円、リース債権1億82百万円)の債権が貸し倒れになる被害に遭いました。この件について、会社は同学園の会計監査人を訴えておりましたが、平成20年に当社の敗訴が決定し、損害賠償を得ることは出来ませんでした。つまり、この4億82百万円の損害の責任は、当社の当時の責任者にある訳です。
八幡信孝氏は、平成14年6月に執行役員に就任して後、管理本部を担当しており、この東北文化学園・友愛学園に対する貸し倒れ事件の責任者といえます。同氏は、この巨額貸し倒れ事件の経営責任を全く取っていません。
また、当社は第63期に於いて、海外工事に関する貸倒引当金の繰入として9億83百万円及び海外子会社に関する債務保証損失引当金の繰入として1億99百万円の合計11億82百万円を、特別損失に計上しました。巨額の貸倒れ損失が発生した訳ですから、昨年の株主総会に於いて株主提案者は、損失の詳細についての情報開示を求めましたが、会社側は、資材価格の高騰が招いた出来事だと言うばかりで、事件が未解決であることを理由に一切の情報開示を拒みました。事件の解決後には情報を開示するとの答弁がありましたが、未だに何の情報開示も為されていません。
上場企業として早期の情報開示が待たれますが、いずれにしても、当社の規模に比べて貸倒れ損失の額があまりにも巨額であり、常識的に考えて、担当役員は、管理能力不足或いは、社内体制の整備を怠ったといった事を含む広い意味での過失(刑事、民事上の業務上過失の意味ではありません)に対する経営責任は免れないと言えます。海外工事に関する債権管理のまずさから起因した巨額損失ですから、担当取締役は管理本部長の八幡信孝氏、海外本部長の槇岡敍治氏が該当すると考えるのが自然でしょう。
会社側は、原因は資材価格の高騰だと昨年の株主総会でも強弁しましたが、海外工事を行っている全ての電気工事会社が巨額の貸倒れ損失を計上した訳ではなく、当社の内部管理体制に問題があった事は明らかです。
 この件では、昨年4月28日付の会社側発表によれば、取締役の責任の取り方としては、全取締役が2ヶ月間月額報酬を僅か20%返上するだけ、という驚くべきものでした。
経常利益額の2倍以上の巨額の損失を出したのにも拘らず、担当役員の個別の経営責任は一切問わず、全取締役が僅かばかりの報酬を返上する事で問題を済ませてしまおうとする当社の姿勢は、上場企業としてのコーポレートガバナンスが欠如しています。
最近の当社の歴史の中で、2大巨額損失事件と言える東北文化学園・友愛学園に対する貸し倒れ事件、及び海外工事に関する貸倒れ事件のいずれに於いても、八幡信孝氏が担当役員であった事は紛れもない事実です。その損失総額は、16億64百万円です。東北文化学園・友愛学園に対する貸倒れ事件から、八幡信孝氏が何も学んでいなかったのではないかと思わざるを得ません。
これら一連の出来事は、社長の八幡欣也氏が長男の八幡信孝氏への世襲を企図して、管理能力・経験不足なのにも拘わらず同氏を重用し続けている為に起こった(株主にとっての)悲劇だと考えざるを得ません。
また、同氏はIR担当役員でもありますが、株主総会で何度要請しても決算説明会を開催しようとはしていません。また、当社の極度の株価の低迷は、市場関係者に対するIR不足もその要因の一部であると思われることから、IR担当役員として、機関投資家や証券会社のアナリスト等とのミーティングに立ち会った回数を株主総会で質問しても、同氏は、答えることが出来ませんでした。複数回の株主総会に於いて何度質問しても答えようとしないのですから、その意味不明な態度は理解の範疇を超えています。これは、自らの重要な職務の状況についての記憶さえ曖昧であるのか、一度もその様な事は行っていないのかのどちらかしか考えられず、いずれにしても上場企業の取締役の資質に欠けているとしか思えません。
このように、実績、資質の両面において、八幡信孝氏は、当社の取締役として適格性に欠けることは明らかです。仮に、当社の大株主でもある八幡一族が同氏への世襲を企図しているとしても、一度取締役を辞して、一社員として研鑽を積み、実績・資質の両面で取締役としての適格性を得てから、再度株主に対して同氏の取締役への選任を諮るのが、上場企業としての当社のあるべき姿でしょう。
よって、八幡信孝氏の取締役解任を提案いたします。
なお、会社側は、昨年の株主総会で八幡信孝氏が選任されていることをもって、解任すべきではないと主張するかもしれませんが、上記の通り、昨年の株主総会に出席していない株主にとっては、昨年の株主総会当日に於ける海外工事に関する巨額損失事件に関する会社側の説明等を知る立場にない訳であり、それも踏まえて、改めて同氏の取締役としての適格性を株主が判断する機会を持つべきであると考えます。

議案(4)について

現在、取締役社長の八幡欣也氏は、昭和61年に当社社長に就任以来23年の長きに渡って当社社長を続けています。これ程長期の社長在任は、上場企業としては極めて異例で、他に同様の事例は数える程しかないものと思われます。
また、その前任者は八幡欣也氏の実父の八幡貞一氏でした。
さらに、何らの実績もなく、当社に巨額の損害を与えた事件(事故)の際の責任者を歴任しているにも拘らず、異例の若さでの抜擢人事が行われている事実等に鑑みれば、八幡欣也氏は、同氏の子息である八幡信孝氏への取締役社長職の世襲を企図している事は明らかです。
この様に、当社は上場企業であるにも拘らず、世襲ありきの人事が断行され、コーポレート・ガバナンスが全く機能していません。その結果として、資本コストを無視し、株主利益を一顧だにしない企業経営が続けられ、超長期に渡る株価の低迷に象徴される株主価値の大幅な毀損が続いています。
このように、株主価値とは全く無縁の人事が執り行なわれ、取締役会も監査役会もそれを牽制する機能を全く果たしていないので、少なくとも取締役社長の世襲に関して、その合理性についての株主への説明責任を強化する条項を定款に設けることには、一定の合理性があると思われます。

議案(5)について

提案者は、ここ数年、毎年株主提案権の行使を行っていますが、会社は株主提案権が行使された事に関して一切の適時開示をせず、その結果、株主は、株主総会招集通知が送られて来て初めて、株主提案権が行使されている事、及びその内容を知るという事態になっています。多くの会社(例えば、本年株主提案権が行使されているシャルレやサンシティー)では、株主提案権の行使が行われた時点で、適時開示を行っています。株主提案権の行使は、株主間のコミュニケーションや、株主と取締役のコミュニケーションを行うという意味で有用であるという立法趣旨が従来から存在し、上場企業の情報開示を強化する傾向からしても、今までの当社の対応は問題があったと言わざるを得ず、取締役会にとって都合の悪い事実を隠蔽しようとする当社の体質には、懸念を抱かざるを得ません。株主提案権行使の事実について適時開示をする事で、当社株主共同の利益を損なう事などは有り得ませんので、株主提案権行使が行われた場合、その事実の適時開示を行う様義務付けるべきです。

議案(6)について

当社の株主総会に於いては、賛成とも反対とも記載されていない議決権行使書面に関しては、株主提案について反対、会社提案について賛成とする取り扱いが行われていますが、これらは議案の決議方法として不公正だとする見解が存在します。実際に、提案者が議決権行使書面を閲覧したところ、毎年かなりの白票が現実に存在します。殊に、一般の株主にとって重要度の高い配当に関する議案に関しては、会社提案と株主提案が対立議案として扱われており、会社提案に関しては賛にも否にも○をつけずに、株主提案に関しては賛に○をつけている議決権行使書面の場合でも、会社提案に何も印をつけない事が会社提案に対する賛成として扱われ、会社提案にも、そしてその対立議案である株主提案についてもともに賛成をしているという事で、両議案に関して棄権扱いにされています。これは極めて不合理な扱いであると言えます。会社側は、「賛否の表示がない場合、会社提案については賛成、株主提案については反対の取り扱いをする」旨の注意書きが議決権行使書面に記載してあるのだから、構わないと言うかもしれませんが、現に、配当に関する株主提案には賛に○をつけ、会社提案には何も印をつけない人も多数存在しています。その様な株主の意図する所は明らか(株主提案の配当案に賛成)だと思いますが、会社側に著しく有利である不公正な取り扱いに関する注意書きを見落としてしまったが為に、棄権扱いになってしまっているのです。この様な、株主の本来の意図とは異なる取り扱いを避ける為にも、賛否どちらにも○がつけられていない議決権行使書面に関しては、会社提案、株主提案を問わず、その議案に関しては棄権扱いとする事が正当であろうと考えられます。

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