2011年5月12日木曜日

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する)総括的な提案内容(3)

 また提案者による企業経営の抜本的な改革案を示します。第一に、もっとも資本効率の高い眼科事業に資源を集中的に投下するべきです。特に眼科医薬に対する参入を行い、同業のAlcon社やAbbott Laboratories社が目指しているような、眼内レンズと眼科医薬をクロスセリングするような戦略を取るべきです。なおすでに内視鏡事業は赤字に転落していますので、競争優位は持っていませんので、撤退も視野に入れるべきです。医療分野の中では眼科に関する部門以外には基本的には投資せず、主要なコア事業として眼科領域に特化するべきです。日本のアナリストなどにはあまり認識されていませんが、先進国では高齢化が進み、高齢者に多い緑内障や白内障、加齢黄斑変性症の患者数が年率15%程度で急増していますので、世界の投資家には眼科領域は急成長かつ利益率の高い事業分野だとみなされています。この分野の最大手であるスイスのネスレとノバルティスを主要株主とするAlcon社の時価総額は日本円で約5兆円です。また製薬診断大手であるアボット・ラボラトリー社は主要な眼内レンズメーカーであるAdvanced Medical Optics社を買収することにより、眼内レンズを自らの製品ラインに加えることに成功しています。その他でも、ボシュロム社をPE投資会社のウォーバーグ・ピンカス社が買収するなど、世界的に眼科領域では幅広い再編が起きているにもかかわらず、日本の眼内レンズメーカーである当社だけが、その流れから取り残されているのが実情であります。眼科分野は、すでに眼内レンズメーカーであり、眼科医との強いネットワークと販売力を持つ当社が、眼科医薬を同時に販売するようにあれば、高い事業効率が期待できます。実際に、北米等でAlcon社が圧倒的な収益を誇っているのが、世界で眼科医が必要とする商品である眼科医薬と眼内レンズを同時に供給できる実質唯一の会社であることがあります。そこにすでに製薬会社である大手のAbbott Laboratories社が、第二のアルコンの地位を狙って眼内レンズメーカーを買収して参入してくる結果になってくるわけです。このような世界的な眼科領域での再編にただ1社遅れているのが当社であり、ペンタックス社のような収益性にきわめて劣る会社を1500億円近いコストで買収するならば、加齢黄斑変性症の有望な新薬候補を複数買収するなり、Advanced Medical Optics社を買収していればよい(もし買収していれば資本力のある大手のAbbott社の眼科領域への参入を阻止できたのである)のであり、経営陣と取締役会、及びこの程度の判断をしている取締役選任に賛成推奨している議決権行使助言会社や機関投資家の議決権行使担当者たちの無能は、極まりというべきである。この点に関しての詳細は、17歳で医学博士となった天才的眼科医で、加齢黄斑変性症の研究分野での第一人者でもあるBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学准教授)による別途資料を参考にされたいが、現在加齢黄斑変性症は有望な新薬がないが、症状の進行を止めるという程度の効果しかない、抗がん剤の転用であるLucentis(Genentech社が開発)は、1000億円近い売り上げ(製薬事業の売上比の利益率は30%程度だと予想される)をすでに誇っており、また緑内障向けのXalatan(ファイザー社)もいわいる1000億円以上の売り上げを誇るBlockbuster drugであります。加齢黄斑変性症は、より効果的な新薬が開発されれば、市場を席巻できる大いなる可能性を持っているし、緑内障向け新薬は特許切れによりジェネリック医薬品でも販売できるようになります。カメラ事業のような資本効率の悪い分野に再投資を行うのではなく、このような急成長かつ有望な分野に、積極的に投資先を変更して振り分けるべきです。なおこのような業界の詳細について知らなくても、普通に経営学の授業を受けた人間ならば、常識的に眼科部門に再投資するべきだという結論になるとは思いますが。

 第二に、当社の事業開発は、眼科以外では材料科学に特化するべきです。当社の優位性のある経営資源は、ガラス加工及び研磨等の材料科学と眼科領域であり、ペンタックスから引き継いだ光学技術は、キャッシュフローを生むような経営優位性を持っていません。またペンタックス社から引き継いだカメラ事業等は、早期に分社化等を行うべきです。材料科学の領域においては、日本企業はまだまだ世界的にも優位性を持っている事業が他社の例でも数多くあり、当社の80年代までのような事業開発に戻って、真剣に研究開発を行うべきです(以下を参照)。いずれの事業も、ペンタックスのカメラ事業などと比較して、極めて高い営業利益率、資本効率を誇っていることは確実であり、材料科学メーカーの原則に戻るべきであります。もちろん以下の企業の事例は、個々の企業の基盤技術に基づいているのであり、このような基板技術を育成し獲得していくことが経営戦略上、明らかに必要となりますが、このような中長期での材料開発はまさに日本企業が従来から得意としていた経営分野なのであります。

 第三に、クリスタルグラスなどで高い価値を有するブランド価値を最大限活用するための経営戦略をとるべきで、執行役としてChief Brand Officerを置くなどの手段をとるべきです。具体的には、HOYAブランドによる化粧品の販売や、プライベート・エクイティー投資会社との共同によるホテル経営などの運用なども検討するべきだと思います。例えばフランスのクリスタル・メーカーであるバカラ社は、Starwood Capital Groupにより、ハワイのホテル事業を投資家グループと経営するなどの新展開をみせているのであり、世界的にも女性や年配の消費者に高級ブランドイメージとして認知されている当社のブランドとしての経営資源(例えばこのような)を利用して、イタリアやフランス企業のブランドマネージメントにより、多額の付加価値をつけているように、株主利益をさらに増加させる経営展開を行うべきである。
そして以上のような企業戦略を実行するためには、ペンタックス部門のカメラ事業は売却、分社化などの手段により早期に事業をやめるべきで、伝統的な事業領域であるメガネレンズのほか、材料科学と眼科という2つの領域に資本を投入する先を限定するべきです。なお医療用内視鏡事業は、洗浄機を製品として持っていないという致命的な欠陥を有しているうえ、日本国内でほとんどシェアを有しておらず、欧州などに少しだけシェアを持っているだけです。ペンタックス買収は当社の株主価値の増加にとって全く持って意味不明であり、もしペンタックスの医療分野がほしいのであればそれだけ買えばいいのであり、長年赤字を垂れ流しているカメラ事業のような事業を1500億円もの大金を出して買収する経営上の合理性は当時より論理的に考えて全く存在せず、このような判断は論外と言えます。また当社は、ガラス磁気ディスク基板に関するメディア事業をウェスタン・デジタル社に売却していますが、この判断により、事業の見通しの表において評価したように、コニカミノルタなどの競合相手から当社から垂直磁気方式等の差別化しうる技術が失われました。しかし関係者の意見としては、メディア売却の選択は、正しいとのことです。なお関係者が何故正しいと言っているかと言うと、「他社と比較し当社は、R&D部門を事業部に持たないため、開発に必要なリソースと開発費・時間を確保できない。メディアの開発には、金と時間が必要であるが、今の当社の体制では、その供給は、期待できないので、開発の先が見えないのであれば、売却して現金化できる時に売却した判断は、まだましということで、正しい選択だ」ということだそうです。また有価証券報告書におけるセグメントわけについて、実質赤字になっている内視鏡部門をライフケア分野に入れて、内視鏡部門が赤字になっている実情を隠蔽する脱法行為もやめるべきです。

 また提案者が従来から退任を要求してきた丹治宏彰氏が、最高技術責任者から退任した後も、これら問題は全く改善されていないか、むしろ実態は悪化しています。提案者は昨年の株主総会で萩原太郎氏の技術担当執行役からの退任を要求していますが、萩原氏には材料科学と眼科領域をコア優位とする当社の技術担当役員として必要な教育的訓練あるいは実務的背景を有していないばかりか、前職の日産自動車での燃料電池開発部門は、カルロス・ゴーン最高経営責任者就任以後の日産自動車の電気自動車に集中するとした戦略から外れて不要になった部門であり、また燃料電池の開発自体も特に成功していません。それ以前に従事していたのは車のボディー開発等であり、研究部門の経験や新規事業の創出実績も持っていないにもかかわらず、このような人物を技術担当役員にすること自体が、指名委員会の機能不全を意味していると思います。例えば3C SiC事業については、10年近く開発を行っているにも関わらず、何ら成果が出ていませんので、すでに終わった事業計画と言われています。またXponent社への資本参加も失敗していますし、ナノインプリントも成果を上げる見通しはなく、生体適合性材料、外径0.8mmの微細ファイバースコープなども、大きな成果を上げる見通しはまったくなく、ナノ粒子、高密度実装基板、Radiant Images社など、すべてが場当たり的な技術開発の結果として失敗しています。これらは、萩原太郎氏が技術担当執行役になって以降、何ら問題点が改善されていないばかりか、むしろ悪化しているとさえ言えます。以上のような問題があるので、研究開発部門を再構築し、M&Aによる企業価値の創出の実務が全く分かっていない鈴木洋氏らによる企業価値を毀損し続ける企業買収や売却を早期にやめさせなければ、株主価値が継続的に破壊され続けますが、現在の社外取締役にはそれを是正する機会が今まであったにもかかわらず、なんら放置しているのが実情なのです。実績のある技術担当執行役候補は残念ながら社内にはほとんどいないのですが、何としてでも研究開発体制を改めて立て直し、事業部の予算としても中長期の競争力維持のための研究予算を配分し、中長期的に材料科学の分野と眼科領域で優位性を持つ事業体に変えなければ、当社の株主に高い利益を配分することはできないと確信します。
これらの問題ある企業統治の現状や、鈴木洋氏らがでたらめな技術経営を行って株主資本を無駄遣いしつづけていることを停止し、さらに企業価値を毀損する企業買収や事業部の売却判断を実行することを阻止するために、現状を改善するにはまず、現在の取締役会と指名委員会から独立した取締役候補である会社法の専門家である溝渕彰氏(香川大学法科大学院准教授)と、眼科分野の専門家であるBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学医学部准教授)の2名を取締役会に送り込み、そして企業統治改善に貢献する定款変更議案に賛成するように、株主各位には推奨したい。なお提案者は、取締役会の構成が急速に変わることを懸念する株主がいることを一応は考慮し、解任議案を提出している椎名武雄氏、茂木友三郎氏、児玉幸治氏以外の再任の取締役候補に対して賛成することは特に妨げません。また執行役の中では、鈴木洋氏と萩原太郎氏が特に問題であるためこの2名を執行役から外すべきであり、江間賢二氏と浜田宏氏は当面の間は、問題があるにせよ、当社のまともな後継計画のなさを考慮すると、執行役としては再任されるべきだと考えています。

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