2008年5月20日火曜日

鈴木哲夫氏による経営改革は結局のところ失敗

鈴木哲夫氏による経営改革は結局のところ失敗
2008年5月20日 山中 裕

私の伯父である鈴木哲夫氏は、私の祖父の山中茂氏が病気で倒れてから、40年以上HOYA(旧保谷硝子)の経営に携わってきました。会社が世の中に受け入れられて発展できたのは、鈴木哲夫氏とその世代の経営者の経営手腕に負うことが大きかったのは事実ですが、様々な事柄に関して、客観的に見なければ、発展的な議論を行うことはできません。

2007年度第三四半期、第四四半期の大幅減益の決算内容と、年初来の株価の急落により、HOYAの経営陣は2000年以降に企業価値の増大に完全に失敗してしまったことが明らかになりました。残念なことですが、取締役半減や社外取締役制度の導入は、他の日本の会社にも同様の形態が導入されるきっかけになった貢献はあながち否定できませんが、HOYAの企業価値を増やすことには、結局のところ、まるで役に立ってこなかったというのが真実です。

すでに述べたように、2008年3月31日のHOYAの株価の終値は、2,340円でした。鈴木洋氏らが経営陣に就任内定した2000年5月末の株価が9990円(4分割修正後の値で2497円)、2000年6月末(30日)の株価は9500円(4分割修正後の値で2375円)ですので、株価は実際には8年間で下がっていますので、結局のところ、8年間でまったく企業価値を増やすことができなかったということです。一部マスコミの提灯報道があろうとも、株価は経営者にとっては通信簿のようなもので、企業価値を中長期的には反映する指標であり、決して誤魔化しが効かない。

同様にいくつかの場所で私が述べたように、すでに観察能力の欠如したマスコミ報道により、世間では完全に誤解されているわけですが、私が言いたいことを簡潔にまとめておきます。私の問題提起が、今後の株主利益の増加にとって、少しでもプラスに働けばと思っています。

①HOYAが高収益企業になったのは、70年代初頭に獲得したガラス研磨技術のおかげ。ガラス研磨技術の応用商品は、技術的な参入障壁が高いため、高収益となった。80年代に地道に事業として育て上げ、90年代に急成長の原動力となるべく、花を咲かせたことによる。材料科学メーカーの技術開発のタイムスパンのあるべき姿をあらわしている。マスクブランクス、フォトマスク、ガラス磁気ディスク基盤、光学レンズの四天王は、いずれも80年代後半までに開発された商品である。真に賞賛されるべきは、鈴木哲夫氏らによる70年代から80年代の経営姿勢であって、ガラス研磨技術の圧倒的な優位性と、そこから出てくる潤沢なキャッシュ・フローにより、90年代後半以降のお粗末な経営が、外から見えにくかったと言うのが真相。

②90年代後半以降15年近くにわたって、HOYAには新規事業の創出実績がない。鈴木洋氏が現地法人責任者時代にシリコンバレーで行った投資は、ほとんどすべて破産に終わり、企業価値に多大な損害を与えた。優良案件の獲得の仕方、投資銀行の使い方、技術開発型企業の評価の仕方、ベンチャー投資界での人脈の作り方など、すべてにおいて合格点を与えられないような惨めな内容。

③2000年代前半より、大手機関投資家からも、余剰資金の使い方についてクレームがつけられていたが、成長率鈍化が明らかになった2005年ころからも、経営陣は何も手を打てなかった。代替品であるフラッシュ・メモリーの台頭などにより、既存事業の将来性が危ういことは、2004年にはすでに内部関係者にも認識されていた。そこでようやく行ったのが、1500億円での戦略なき高値掴み的なペンタックス社の買収。経営陣は株主価値に多大な損害を与えた。

④社外取締役は取締役会を仲良しクラブ化しており、執行にあたる役員の監督機能を果たしているとは到底いえない。私は②や③にある問題について、以前より気がついていたが、結局のところ、株価が2年で45%急落する以前に、何も手を打てなかったということ。株価が急落して気がついてからでは遅すぎる。北米の上場企業ならば、善管注意義務違反と指摘されてもおかしくない。

⑤社内R&Dも、実質すべて失敗に終わっている。2004年買収のRadiant Images社の競合他社への知的所有権売却は、株主総会で問題にすべき内容。3CSiC事業の子会社も2007年に上場予定と5年前に発表も、まったく成果がない。売り上げ初年度数億円を見込むとしたXponent Photonics社は、見事に破産に終わった模様。技術担当者を交代させなければ、何のために指名委員会があるのかわからない。

⑥まとめると、いかに鈴木哲夫氏が以下で述べていた「持ち株会社化で本社は投資家に、少数で戦略練り企業価値を図る」という考え方自体は決して誤りではないが、実態を伴っていなかったということが結論できる。「HOYA株主にとっての失われた8年」を、決して「15年」にしてはならない。

編集長インタビュー 
人物 鈴木 哲夫氏[HOYA会長]
持ち株会社化で本社は“投資家”に 少数で戦略練り企業価値向上図る
http://bizboard.nikkeibp.co.jp/kijiken/summary/19981130/NB0968H_408644a.html
問 この不況下で、HOYAの今年9月中間期の連結税引き後利益は92億円と半期として過去最高を記録しました。鈴木さんは40年近く経営トップの座にありますが、4年ほど前から取締役の数を半減させたり、事業分野を再編したりと、経営改革を進めています。今回の最高益はその成果という見方もあるわけですが、経営改革を決断したきっかけは何だったのですか。

以下は、参考のページです。

HOYA株式会社のホームページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/index.cfm

HOYA株式会社(ウィキペディア記事)
http://ja.wikipedia.org/wiki/HOYA

日経ビジネス記事(2007年5月28日):HOYA、TOB合意後の「試練」http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070524/125459/

Nikkei BP Net 記事(2007年8月8日):HOYA、TOB成立は単なる一里塚http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q3/541954/

HOYA株式会社の会社概要のページ
http://www.hoya.co.jp/HOYA_DYNAMIC/index.cfm?fuseaction=company.about

ペンタックスのページ
http://www.pentax.jp/japan/index.php

HOYAの経営に関する私の文章(2008年1月3日)http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoya_08.html

HOYAのCOOに浜田宏氏就任
http://yutakayamanaka.blogspot.com/2008/04/hoyacoo.html

HOYA株式会社最高執行役に浜田宏氏就任のニュースリリースhttp://www.hoya.co.jp/data/current/newsobj-578-pdf.pdf

HOYA株式会社R&Dのページ
http://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_06.cfm

HOYA株式会社の経営理念のページhttp://www.hoya.co.jp/japanese/company/company_03.cfm

キャピタル・グループのホームページ
http://www.capgroup.com/

フィデリティのホームページ
https://www.fidelity.com/

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