2008年5月6日火曜日

日本のサイエンスがアメリカに勝てない理由

以下の文章は未完成ですが、議論をするために、不完全な原稿を公開していきます。

件名の問題については、まず日本において、ノーベル賞を受賞するような研究者の数が少ないこと、技術系のベンチャー企業で大きく成功した会社がほとんどないことなどについて、本質的な問題に関しての理解をしなければ、解決策となる政策を立案することはできません。

私の提案は、

①ライフサイエンス分野における日本型NIH(National Institute of Health)の創設
②複線型教育システムの創設
③グラントシステムのアメリカ化

などを念頭にしています。

これら問題は、今後の日本社会のありかたという意味で極めて重要だと思いますので、近いうちに、このブログ上で説明したいと考えています

例えば、NIHについては、私が調べた範囲で、以下の文献くらいしか参考文献がありません。
『アメリカNIHの生命科学戦略 全世界の研究の方向を左右する頭脳集団の素顔』
掛札堅著(講談社)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2574411
アメリカのライフサイエンスが、基礎研究においても応用研究や産業化においても圧倒的に優れているのに、ほとんど啓蒙書的な文献がないのは、関心が今のところあまりもたれていないことと関係しているように思えます。

なお、ヴァネヴァー・ブッシュという科学者(元MIT工学部長)が、戦時中の大学と軍の科学の関係の構築に、重要な貢献をしています。 軍産複合体といわれる関係や、軍による科学技術の資金援助について、大きな役割を果たした人物です。 戦後は、NSF(National Science Foundation)の創設にも、大きな役割を果たしています。

ヴァネヴァー・ブッシュについて(日本語版ウィキペディア記事)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァネヴァー・ブッシュ

(英語版ウィキペディア記事)
http://en.wikipedia.org/wiki/Vannevar_Bush

日本人が遺伝的にサイエンスに劣っているわけではありません。いくつかの例を挙げると、生物学では利根川進(MIT教授)、増井禎夫(トロント大学名誉教授)、柳沢正史(テキサス大学)、西塚泰美(元神戸大学学長)、岸本忠三(元大阪大学学長)、物理学では中村修二(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)、飯島澄男(NEC特別主席研究員)、外村 彰(日立製作所フェロー)、十倉好紀(東京大学教授)、化学では野依良治(名古屋大学教授)、新海征治(九州大学工学部教授)、数学では広中平祐(元ハーバード大学教授)、伊藤清(京都大学名誉教授)、経済学でも雨宮健(スタンフォード大学)、宇沢弘文(元シカゴ大学・東京大学教授)など、国際的に高い評価を得た研究者は日本人でもいるわけです。

ただ北米と比べて量が少ないし、応用研究を産業化する仕組みについても、問題が多いのですが、政策担当者で正しい概観図的な理解をしている人材は、残念ながらほとんどいないのです。

またバイ・ドール法(Bayh-Dole Act、正式名称はUniversity and Small Business Patent Procedures Act )についても、誤解があります。ちなみに、法律のなかにあるドールというのは、クリントンに1996年に大統領選挙で敗れたドール上院院内総務のことです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Bayh-Dole_Act

まずなぜ、北米では優れたサイエンティストが数多く誕生するのかということです。一つにはそもそもサイエンティストの絶対数が多いということがありますが、日本では教育システムに問題があります。客観的に言って、アメリカの初等中等教育のレベルは先進国で最低と言われていますし、特に数学の教育水準が低いと言えます。アメリカの一般的な大学1年生の数学の水準は、控えめに言って日本の中学2年生くらいです。しかしながら、大学院教育は世界で一番優れていることは、これも控えめに言っても、明らかです。

まず大学院博士課程(注:日本と異なり、博士課程の入学に修士号を保持している必要なし)の1年目では、どの分野でも、専門科目について徹底的に叩き込まれます。そして1年目の終わりから2年目にかけて、それら専門科目の試験があり、ある程度の点数を取らなければ、博士課程から追い出されます。これを強いインセンティブとして、学生は怠けることができなくないシステムになっています。

また博士号を取得後、分野によってはポスドクという就業期間を経ると、助教授として大学等で採用されますが、助教授は任期制(たとえば7年)であり、その間に優れた業績を上げて認められなければ、準教授や教授が所有する、ティニュア(Tenure)といわれる終身教授権を得ることはできません。だから若いときは必死になって働かざるを得ないので、優れた業績を上げるサイエンティストが出やすいわけです。

さらに留意点としては、科学技術の優位と軍事的な優位性は表裏一体の関係にあるということも、ひとつの事実として認識することが肝心です。生命科学や材料科学の基礎研究にしても、生物兵器やステルスに関係する電波吸収材料と関係があったりするわけで、軍事優位を維持することはアメリカの派遣戦略上重要な要素ですあり、だからこそアメリカ連邦政府は基礎研究に力を入れる必要があるわけです。 また日本の科学技術や関連する製造技術も決して捨てたものではないので、かつて石原慎太郎氏が『Noと言える日本』で主張していたように、日本企業なしでは、アメリカも武器調達業績上、一定の制限が発生するのは一面の事実かと思えます(もちろん、このことは、日本だけでなく、ドイツやフランス等の国や企業でも同じことです)。

現在のようなシステムが、アメリカでいつ形成されたかということについては、いくつかの議論があり、定かにわかっているわけではありませんが、第二次世界大戦後に重要な転機があったように思えます。

なお軍事技術と産業用の技術に関する点として、例えば近年は、上場企業で行われる研究は、株主の利益要求に押されるため、アメリカの軍事関連の基礎技術に関する研究母体として好ましくないのではないかという議論が出始めています。

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