2010年6月16日水曜日

すでに目標の一部を達成している株主提案。だが丹治宏彰氏の退任では新規事業の問題点は改善されない

株主提案に少しずつとはいえ、関心が高まってきていることは、そもそも株主提案権の立法趣旨である、株主間のコミュニケーションをとる手段という意味を、正しく実現できていると考えています。椎名武雄氏の15年再任の問題、茂木友三郎氏の社外取締役や社外監査役の多数兼任の問題(なお公益法人の役員兼任問題もあり)、天下り官僚である児玉幸治氏の取締役就任の問題とか、旭硝子財団理事や旭化成の取締役との兼任の問題とかが注目されるようになって良かったと思います。そもそも9年を超える取締役には独立性を認めないというのが、ロンドン証券取引所の上場規則にあるので、ある意味でこれがグローバル・スタンダードなのです。新規事業が過去10年の間一回も成功していないことも着目され、話題になっているので、これはすばらしいことです。ちなみに私はこの株主運動に、信託銀行名義の個別株主通知の郵送料80円しか費用を使っていませんが、これでだけを持って丹治宏彰氏(前取締役、現企画担当執行役)を退社に追い込んだことは大きいと思います。

HOYA株式会社の株価は10年間で低落し、長期的に低迷しています。2000年6月末(30日)の株価は9500円(4分割修正後の値で2375円)、今日2010年6月16日の時点の株価は、2130円ぐらいです。このような経営陣に合格点はつけられないと思います。このような株価低迷の原因は、外部の企業買収、R&Dなどの新規事業に全く成果が上がっていないことです。なお会社は、私の要求に応じて丹治宏彰氏(当時最高技術責任者)を2009年6月に取締役から退任させ(なぜか執行役企画担当などとして再任される)、2010年6月付けで執行役からも退任させる人事を発表(「役員異動のお知らせ」2010年5月14日HOYA株式会社)しています。株主の要求に応じて役員を実質的に更迭できたことは、大きいと思います(詳しくは、「私の株主運動により丹治宏彰氏が執行役から退任したならば、それは一つの大きな成果だ。」小生ブログ2010年5月16日)が、これだけでは当社の抱える問題点は改善されないと考えます。

まず最大の問題は、後任の萩原太郎氏が技術担当執行役としては不適格だということです。萩原太郎氏はまず東京大学機械工学の出身であり、材料科学と眼科分野をコアコンピタンスとして持つ当社の技術責任者として相当の教育的バックグラウンドを持っていないといえます。第二に、萩原氏はもともと日産自動車の燃料電池部門の開発責任者でありますが、この分野は電気自動車の開発に経営資源を集中させる経営戦略の傍流となっており、また萩原氏自体が何か顕著な開発に成功した実績を持っているわけでもありません。私が丹治氏について言っていたように、萩原氏についても「過去の人生で一回でも技術開発に成功した実績があるか」といえば、私にはそれがあるといえる根拠を探すことができません。事業部の技術説明会で、技術の中身がまるでわからないから、居眠りしているという証言もあります。

そもそも、日産自動車(前取締役の塙義一氏、あるいは小枝至氏)と当社執行役の人間関係により、社外取締役の出身会社で不必要になった人材を、社外取締役に就任している会社に押し付けるような行為だと疑う余地すらあるわけで、とんでもない人事です。鈴木洋氏が行った投資はペンタックスだけではなく、90年代後半の駐米時代も含め、すべて失敗しているのが実情ですし、丹治宏彰氏も同様です。センスがない人間を指名委員会が指名していること自体が取締役の善管注意義務の観点からも大いに問題なのですが、また萩原太郎氏のような実績のない人間を指名してしまいました。

材料科学ではCardinal Warde博士(MIT)、眼科ではPaul Ashton博士(pSivida社社長兼最高経営責任者)やBalamurali Ambati博士(ユタ大学医学部)などの取締役会での監督を受けながら、新規事業を正しい方向に導いていくことこそが、株主価値を増加させるための、より正しい道だと思います。萩原太郎氏を再び技術担当執行役として選任するのならば、指名委員会メンバーの取締役は、善管注意義務違反です。私はどのような取締役の専任になったとしても、引き続いて萩原太郎氏の技術担当執行役からの退任を求めたいと思います。