2010年1月30日土曜日

日本の資本市場を活性化させる累積投票制度

私の一番の暫定的な提案は、取締役を選ぶための累積投票制度を定款で排除することを、会社法上で禁止するようにしていただきたいということです。実は累積投票を定款で完全排除できるようになったのは昭和49年からの話であり、それ以前は少なくとも大きな株主の請求があれば、株主総会での取締役の選任は累積投票にすることができたのです。 累積投票は少数株主の権利を守ることが可能になりやすい制度ですし、CFA協会(主にファンド・マネージャーの資格を認定している)や、カルパース(CalPERS)などの欧米の大手機関投資家もよいガバナンスの例として推奨している企業投資のための制度です。

「日経平均の株価を上げるのは簡単です、会社法でカルパースが推奨している企業統治の原則を強制してしまえばいいのです。外国人機関投資家が投資をする基準と合わせれば、日本株の人気が上がるので、日本株の値段が上がり、年金の運用の問題も大きく解決しますよ」とお伝えしたら、ほとんどの議員の先生方は理解していただけるのではないかと思いました。

ほかにも多くの問題があります。秘密投票や、執行役を兼ねる役員は1名以内として、その他取締役は社外取締役とすると考えているなど、いくつかの論点があるのですが、今後運動をやっていこうと思います。

取締役会の多様性を確保することが極めて重要なので、経営陣側が選んだ取締役しか取締役会にいないというのは極めて問題があります。HOYAソニーのような取締役会を見ても、社外取締役制度を導入した後に、株価が顕著に伸びたとかいう形跡がありますか?取締役会の多様性を確保するために、累積投票制度を株主の側が選択できる制度にすることが、日本の上場企業の企業統治の向上につながりますし、株価が上がることで、年金の運用も改善できます。

民主党の政策インデックスには、「新公開会社法の制定」というのが入っていますが、これを国民益にかなう形にお願いしたいと考えています。 ①親子上場の禁止、②監査役会に一人の労働組合の代表を入れるというものですが、特に②については、問題があるすぎるのではないか、それよりも累積投票で、取締役会の多様性を確保していくことが望ましいと考えています。 というか、監査役には執行役の選解任権がないので意味がない、労働者の代表の取締役を送り込みたいのならば、労働者持株会で一定の割合の株数を持って、民主的な方法で取締役の選出を目指していけばいいはずだ。 というか、CalPERSは、日本でいえば「日教組年金組合」なんだけれども。

(以下続く)

参考
溝渕彰先生(下関市立大学/ハーバード大学法科大学院)のブログ
「累積投票のススメ」(2010年1月30日)

累積投票の株主向けの価値を実証した論文
Sanjai Bhagat and James A. Brickley 'Cumlative Voting: The Value of Minority Shareholder Voting Rights' Journal of Law and Economics. 339 (1984)