2008年8月24日日曜日

東大の改革の行方(2):私からの駒場生へのメッセージ

私は今から考えると昔になりますが、東京大学の駒場キャンパス(一般的に1、2年生のキャンパス:教養学部)で学びました。今から考えると、日本国内においては卓越した、恵まれた環境を活用できていたわけではなかったので、先輩から適切なアドバイスをもらっていたらもっと有意義な生活があったのではないかと思っています。 そういった意味で、ささやかながら、私からのアドバイスをさせていただきたく思います。

(1)駒場は人脈作りに絶好の場である

例えば、経済評論家、経済学者の植草一秀氏と、通称村上ファンドの経営者であった村上世彰氏と滝沢建也氏(元警察官僚、スタンフォード大学MBA、フランス語の天才ともされた村上氏の参謀)が、駒場の語学の同じクラスであったことは、知られています。私も同じクラスの人から、実際にいろいろと助けてもらったりというようなことはあります。そのうちの何人かは有名になったり、若くして社会的に重要なポジションにつくこともあります。 もしあなたが地方から上京して入学された方であれば、東京圏の進学校から駒場キャンパスへ進学してきた同級生や先輩は、上級国家公務員や一部上場企業の幹部層のお坊ちゃん、お嬢ちゃんである比率が高く、彼ら彼女らの両親たちは、県立高校の同級生の親御さんと異なった、様々な情報や考え方を持っていますので、せっかくなので、お父さんやお母さんとも仲良くなって、彼らの情報や考え方(人生観も含めてです!)を学んでみましょう。

(2)先生と仲良くなろう

もしあなたが将来、大学院に進学したり、海外に留学をしたいと考えているならば、受験に推薦状が必要です。 あなたを良く知っていて、良い推薦状を書いてくれる教授を確保することは、海外大学院を受験する場合は、非常に重要になってきます。こういった観点からも、いかに推薦者を確保するかは重要です(ビジネスなどで成功するための、対人交渉能力を養うひとつのステップと考えても良いと思います)。先生方(特に非常勤講師の先生方)の中には、その分野や文壇で非常に有名か、将来有名になるような人がいることがあります。

私の学生時代も、佐藤優氏(起訴休職外務事務官)や、宮台真司氏(首都大学東京教授)などが、さりげなく教えていましたし、岩田一政氏(前日銀副総裁)や、十倉好紀氏(東京大学工学系研究科教授、ノーベル物理学賞に近い)なども、分担の講義をもっていたと思います。ちなみに私は、南條竹則氏(翻訳家、中華料理の批評等で有名)に英語を、工藤庸子氏(フランス文学者)にフランス語を習いました。桝添要一厚労省大臣も、かつて東大教養学部の教官(助教授)でした。

佐藤優氏などは本当の意味でのエリート、その道を極めた人なのです。利害関係を気にせずに、こういった人とめぐり合えるチャンスはなかなかありません。

ちなみに学者が政権にアドバイザー等で参加するという形態の先駆は、故佐藤誠三郎氏(東京大学名誉教授)以来の教養学部の社会科学系の実績であり、現在も伝統とされています。桝添氏や北岡伸一氏らは佐藤氏の弟子筋に当たるのです。

なお、もしあなたが、あなたの専門分野での留学を考えている場合は、その分野で世界的に知られている研究者を推薦者にすることが重要です。北米の大学院の選考は、日本の大学院と違う(どの推薦者の推薦状が非常に重要)ことを留意しておくと良いと思います。 例えば、博士課程の合格者決定についての参考になる文章は、以下の林文夫氏(東京大学)と青谷正妥氏(京都大学)のページに書いてあります。

http://fhayashi.fc2web.com/recommendation_policy.htm

http://aoitani.net/aotani/Studying_Abroad/US_for_Science_and_Engineering_Majors.html

例えばもしあなたが将来、投資会社で製薬会社のプロジェクトについて評価しなくてはならないときに、知識がなければ、仲良くしておけば、駒場時代の生命科学の先生が助けてくれるでしょう。

(3)今しか履修できない授業を履修しよう

東京大学に中野キャンパス(海洋研究所)や白金キャンパス(医科学研究所)などの施設があることをご存知ですか。ほかにも、種子島や北海道の原生林とか、小石川植物園(理学部研究用)とか東海村キャンパスとかあるんです。原子力発電所の見学ツアーとか、牛の受精の実習とか、わけの分からない授業を結構やっているんです。今考えれば、そういった授業に、今からでも参加してみたいと考えるわけですが。

(4)英語の勉強をしよう

国際的に活躍するには、英語は非常に重要となっています。研究者でも、ビジネスマンでも。とにかく一生懸命英語を勉強してみましょう。留学専門の予備校へ行くと、あなたよりおそらく5歳から10歳くらい年上の社会人が、TOEFLとかGMATとかの勉強をしています。そういったところの模擬試験はただですので、受けてみることをお勧めします。 あとアルクという会社から、「1000時間ヒアリングマラソン」とかいう広告が出ていますが、これはいい教材なので、時間のある学生時代にトライしてみてはいかがかと思います。 また日経新聞ではなくて、Wall Street JournalやFinancial Timesなどの英語圏の新聞や、Economistなどの雑誌を読むことも、いいことだと思います。はっきり言って、日本のマスメディアのレベルは必ずしも高くないし、偏っていますので、それがわかるだけでもすばらしいことです。

(5)ハーバード大学やMITに編入しよう

北米では大学の編入等はごく当たりまえです。ハーバード大学やMITのような世界の名門校も、世界中の学生に対して、3年次からの編入に門戸を開いています。合格するためには、いい成績をとる、いい推薦状を書いてもらう、TOEFLで高得点を取る、何かひとつのことに秀でるなどの必要があると思いますが。そういった制度を利用して、海外の大学に移っていくのも手です。むしろ東京大学としても、ハーバードやMITに積極的にいい学生(学業や課外活動に秀でた、いわいる松坂大輔選手のような人材)を編入させ、そちらで卒業した学生には、東京大学の卒業資格も同時にあげるようにしてもいいのではないかと思うのですが。

(6)1年でいいから休学してみよう

北米での私の経験では、休学というのは良くあることなのです。例えばお母さんの上院議員選挙のためにスタンフォード大学を1年休学したチェルシー・クリントンさん(オックスフォード大学を経て、マッキンゼーに入社し、今はヘッジファンド勤務です)。ケリー上院議員の娘であるバネッサ・ケリーさんも、お父さんの大統領選のため、ハーバード大学医学部を休学していました。自分のやりたい研究をするために、北米の大学の研究室で1年間助手をするとか、ヘッジファンドでインターンとして働いてみるとか、論理的、物理的には、いろいろとできるはずです。自分の可能性を狭める必要は、どこにもありません。

(7)世の中のために自分が何ができるか考えよう

いうまでもないことですが、環境が恵まれているのならば、きちんとその恩恵をいつかは世の中に返すつもりでいましょう。 ノーブルレス・オブリッジです。

2008年8月11日月曜日

HOYA(旧保谷硝子)の経営(1):ベンチャー投資でまた失敗したこんな無能な経営陣では、先行きが暗い

HOYAの買収、出資先であるQstreams Networks, Inc (メリーランド州)の清算(要するに、事業がうまくいかずに破産したという意味)が発表されています(2008年8月7日発表資料)。

http://www.hoya.co.jp/japanese/news/latest/d0h4dj00000016uy-att/d0h4dj00000016v9.pdf

以前から私が主張しているように、技術担当者の丹治宏彰氏はまるっきり投資やMOTに関して才能がなく、むしろ何か理由があって積極的に企業価値を壊しているのではないかとさえ思えます。 丹治氏の解任こそが、新生HOYAの第一歩です。

現在の主力事業は、ほぼすべて1980年代までに作られたものであり、90年代後半以降は何の成果もないため、ここ2年で株価の55%下落という結末を迎えました。1500億円コストをかけた投資の結果が、たった1年たって赤字に転落(ペンタックス:Pentax)というのが、はたして容認されるのでしょうか。

このような現状を、普段はおとなしい機関投資家でさえも、決して放置するべきではありません。 なお私は、これらの経営問題に関して、取締役会議長宛及び代表執行役への公開質問状を準備しています。よろしければ、知恵をお貸しください。もし浜田宏氏が現状維持の態度で甘んじるのならば、それも問題でしょう。

2008年8月6日水曜日

アメリカ大統領選について思う(2):マケイン夫人の実家にみる経営と所有の分離の合理性

マケイン上院議員(共和党)とオバマ上院議員(民主党)の争いになっている2008年のアメリカ大統領選ですが、日本のマスコミ報道では、よほど注意深く見ていないと、本当に興味深い点を見過ごすことになります。私が注目し、日本の皆さんに知ってもらいたいのは、マケイン上院議員の配偶者である、シンディー・ヘンスリー・マケイン夫人と、その実家に関してです。

シンディー・ヘンスリー・マケイン氏について(ウィキペディア記事)
http://en.wikipedia.org/wiki/Cindy_McCain

シンディーさんは、ヘンスリーというアリゾナでは有数なビールの小売りと卸売りの会社の相続人(一人っ子、男兄弟なし)なのです。売り上げ400億円近い会社のいわいるオーナーなのです。

ヘンスリー社について(ウィキペディア記事)
http://en.wikipedia.org/wiki/Hensley_%26_Co.

ヘンスリー社ホームページ
http://www.hensley.com/

シンディーさんは、南カリフォルニア大学を卒業した才女ではあるが、いわいる会社の取締役会会長であって、日々の経営執行には関与していません。CEOには専門経営者を雇用しているのです。シンディーさんは、教育学の修士号をもっているわけで、知的教養を持ち合わせているのであろうけれども、経営者というのは専門性の高い職業ですから、シンディーさんが毎日会社へ行って経営するより、社長に当たる人物は適任者を雇用し、オーナーは取締役会会長として、重要な意思決定にのみ関与するという、この形態は、株式所有者としても、きわめてよろしいわけです(経済合理性を掲げながら、実績と能力の伴わない会長の息子が社長になり、意味不明な経営統合で多大な損失が発生して、経営がうまくいかずに、近年55%株価が下落した会社を見れば、比較してもその合理性は明らかです)。

これが、北米流「経営と所有の分離」の本当の意味なのです。